外国人採用ガイド1:制度から手続き方法まで

昨今、2030年問題という言葉を耳にする機会が増えました。 

日本では、人口減少に伴い労働人口の減少が進み、2030年には労働力が約10%不足し人手不足が深刻な状態になると言われています。この課題の解決策の一つとして外国人材の活用が注目されています。

今後の健全な企業活動において、外国人材採用は避けて通れない課題となります。

また、外国人を採用する事で多様な視点や専門知識が企業にもたらされ、日本企業のグローバル化や競争力の向上にもつながるとも期待されています。

しかし、外国人を採用する前に、制度や在留資格に関する知識をしっかり理解することが必要です。本記事では、外国人採用に関する制度から手続きまでを説明していきます。

外国人採用には在留資格の理解が必須

在留資格は、職種や業務内容によって細かく分類されています。業務内容に最適な在留資格を選択することが重要です。現在、就労活動に対する制限に基づき、在留資格は以下の4種類に分けられます。

  1. 就労が認められる在留資格(活動制限あり):最も一般的な資格
  2. 身分に基づく在留資格(活動制限なし):永住者、日本人の配偶者など
  3. 就労の可否は指定された活動による在留資格:ワーキングホリデーなどの特定活動
  4. 就労が認められない在留資格:文化活動、留学、短期滞在など

そして、外国人を採用する際には、身分に基づく在留資格以外に、主に以下の在留資格が該当します。

  • 教授:大学教授など
  • 芸術:作家、作曲家、画家など
  • 高度専門職:いわゆる「高度人材」で、ポイント制による認証が行われる
  • 法律会計業務:弁護士、公認会計士など
  • 医療:看護師、医師、歯科医師など
  • 研究:企業や政府の研究者など
  • 教育:高校・中学校の語学教師など
  • 技術・人文知識・国際業務:通称「技人国」で、技術者、通訳、デザイナーなどの職種が含まれる
  • 介護:介護福祉士
  • 興行:俳優、歌手、プロスポーツ選手など
  • 技能:外国料理の調理師、スポーツ指導者など
  • 特定技能:特定産業分野の従事者
  • 育成就労:従来の「外国人技能実習制度」に代わる新制度

現在、在日外国人の在留資格別内訳

出入国在留管理庁の資料(令和6年9月30日更新)により、令和6年末まで在日外国人総数が約342万人、その中に人数が最も多いのは永住者、約89万人、続いては技能実習(現育成就労)の40万人と技人国の36万人です。

『外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組』(出入国在留管理庁による作成)

採用する際のポイント:在日外国人と海外在住外国人

在日外国人の採用と海外在住の外国人を採用する際では、異なる点に注意する必要があります。

在日外国人の採用

在日外国人の場合、資格によっては、前職と同じ職務内容でも在留資格の変更や再申請が必要になることがあります。特に高度専門職、特定活動、特定技能の資格を持つ人が転職する際は注意が必要です。

海外在住外国人の採用

海外在住の外国人を採用する場合、どの在留資格を申請するかが主な課題となります。業種や業務内容によっては、在留資格が認められなかったり、滞在期間が想定よりも短くなる場合があります。

在留資格申請の手続きー企業側

外国人を雇用する際、まずは外国人と労働契約を正式に締結し、雇用条件や職務内容を明確にしておきます。次に、雇用予定の職務が現在の在留資格に合致するかを確認しましょう。在日外国人であれば、資格が該当する場合、資格変更は不要ですが、転職先の情報は次回の在留期間更新時に必要になります。一方、海外在住の外国人には「就労ビザ」を取得する手続きを進める必要があります。

在留資格変更・再申請が必要な場合

外国人が転職し、新たな職場で現在の在留資格では従事できない職種に就く場合には、「在留資格変更許可申請」が必要です。

事例

例えば、「教育」の在留資格を持って中等学校で英語教師として働いていた外国人が、民間の貿易会社で通訳業務を担当する場合には、「技術・人文知識・国際業務」への資格変更手続きが必要です。

必要書類一覧

在留資格変更許可申請を行う際には、一般的では、次のような書類が必要になります:

  • パスポート原本および在留カード原本
  • 在留資格変更許可申請書
  • 源泉徴収票等の合計表
  • 会社の登記事項証明書
  • 会社の決算書や事業計画書
  • 雇用理由書
  • 職務内容を証明する書類
  • 労働者の課税・納税証明書
  • 前職の退職証明書
  • 申請理由書
  • 学歴・職歴を証明する書類
  • 雇用契約書
  • 収入印紙

※企業のカテゴリーにより、提出書類は異なる可能性があります。また、必要に応じて入管局から追加書類の提出を求められることもあります。

注意事項

在留資格変更の申請には、法務大臣の裁量が関わるため、書類をすべて揃えても必ず許可が下りるわけではありません。入管局では、外国人の職務内容や学歴・職歴、雇用主の企業の事業の適正性や継続性、安定性などを総合的に審査します。

転職予定の外国人の労働力をあてにして新規事業を計画する前に、在留資格変更が許可されるかどうか慎重に確認することが重要です。

在留資格変更・再申請が不要な場合

外国人が転職をする際、転職先の職種が現在の在留資格に合致している場合、原則として在留資格の変更手続きは不要です。同じ職種で新しい会社に転職する場合、次回の在留期間更新時に新たな勤務先に関する書類や職務内容を証明する書類を提出すれば十分です。

事例

1. 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持ってA社で通訳として勤務していたBさんが、C社で同じ通訳として採用された場合が該当します。

2. 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持ってD社でITエンジニアとして勤務していたEさんが、F社で通訳として採用された場合も該当します。

就労資格証明書の取得を推奨

ただし、転職後もスムーズに在留期間更新を行うためには、あらかじめ入管局で「就労資格証明書」を取得しておくと便利です。就労資格証明書は、外国人が転職した後も現在の在留資格と期間が引き続き有効であることを証明するもので、この証明書があると次回の在留期間更新手続きが簡易化される可能性があります。

就労資格証明書とは?

外国人が転職し、勤務先が変更になった場合に、転職後の職務内容が現在の在留資格で許可されているものであることを入管庁が証明する文書です。これを取得しておくことで、在留期間更新がスムーズに進みます。

就労ビザを申請する場合

在留資格認定証明書の申請

まず、日本で外国人を雇用するためには「在留資格認定証明書」が必要です。企業の人事担当者や行政書士が、外国人の予定勤務先を管轄する入管局に申請を行い、証明書の交付を受けます。この証明書は、外国人が日本で就労資格を得るために法務省による審査を通過したことを証明するものです。

  • 申請から発行までの期間:2週間〜3ヶ月(企業のカテゴリーによる)

海外でビザの取得

在留資格認定証明書が発行されたら、その原本を外国人に送り、外国人は自国の日本大使館や領事館でビザの申請を行います。ビザが発行されると、日本への入国が許可されます。

日本での入国・就労開始

外国人は日本に到着後、空港で正式な在留資格と在留カードを取得し、その後雇用先で就労を開始することができます。なお、在留資格認定証明書の有効期限は発行から3ヶ月以内で、この期間内に来日する必要があります。

注意点

期限内に来日しない場合、再度在留資格認定証明書を申請する必要があります。

まとめ

外国人材の採用は、益々身近になっていくと思われます。 そのためには採用プロセスには在留資格や法的手続きの理解が欠かせません。適切な在留資格を把握し、正確な手続きを行うことで、採用のスムーズな進行が可能になります。そして次のステップは企業にとっても、外国人材にとってもお互いが安心して働ける環境を整えることが、長期的な成長と成功の鍵となるでしょう。

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