留学生採用のメリット・デメリット

外国人留学生の現状と傾向も解説

少子高齢化に伴う労働人口の減少は、多くの日本企業にとって大きな課題です。国内での人材確保が難しくなる中、優秀な人材を求め、海外に目を向ける企業が増加しています。特に、日本で学ぶ意欲の高い「留学生」の採用は、有力な選択肢のひとつです。

しかし、外国人採用に対して言語や文化の壁、手続きの複雑さなど、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、日本における留学生の現状や採用のメリット・デメリット、具体的な採用方法について、わかりやすく解説します。

1. 日本に来ている外国人留学生の現状と傾向

日本にいる外国人留学生は、増加傾向にあります。

ここでは、出入国在留管理庁や日本学生支援機構が公表しているデータを元に、来日している留学生の現状と傾向について紹介します。

(1) 日本にいる留学生の人数

出入国在留管理庁-【令和6年6月末】公表資料より作成

上のグラフは、2019年から2024年6月の在留資格「留学」における在留外国人数の推移を示したものです。

日本に滞在する留学生の数は、2020年からのコロナ禍により一時的に減少したものの、その後は回復傾向です。2024年6月末時点の出入国在留管理庁のデータによると、368,589人の留学生が日本で学んでいるとされています。

在留資格「留学」で日本に滞在している外国人は、全体のおよそ10%ほど。

高等教育機関への留学だけでなく、日本語学校に通う学生も多数おり、多様な教育的背景を持つ留学生が日本に滞在しているのが現状です。

企業にとっては、幅広い選択肢から自社に適した人材を見つける可能性が広がっている状況といえるでしょう。

(2) 留学生の国籍

出入国在留管理庁-【令和6年6月末】公表資料より

上のグラフは、2024年6月の在留資格「留学」における国籍・地域別の在留外国人数と構成比を示したものです。

留学生の出身国は中国が最も多く、次いでネパール、ベトナム、ミャンマー、韓国などが続きます。アジア諸国から来日している留学生が非常に多い一方で、アメリカやイギリスなどの先進国からの留学生は少ない傾向です。

(3) 留学生の学科

2023年3月に日本学生支援機構が公表したデータによると、2022年度に外国人留学生が専攻していた学科は下表のとおりです。

専攻分野留学生数構成比
人文科学80,291人34.7%
社会科学63,096人27.3%
理学4,361人1.9%
工学37,487人16.2%
農学4,200人1.8%
保健5,829人2.5%
家政3,921人1.7%
教育2,854人1.2%
芸術10,855人4.7%
その他18,252人7.9%
231,146人100.0%

留学生が選択する学科は多岐にわたりますが、特に人文科学や社会科学が選ばれる傾向が強く見られます。日本独自の漫画やアニメなどのカルチャーに興味のある人も多く、芸術系も人気です。

また、日本の製造技術や工学に関心を持つ留学生も多く、割合も高くなっています。

専門性の高い留学生も多いため、留学生の採用は企業にとって即戦力となる人材を確保できる可能性を秘めているといえるでしょう。

2. 留学生を採用するメリット

企業が留学生を採用するメリットとして、主に3点が挙げられます。

  • 人材を確保できる
  • 日本語が話せる優秀な人材を採用できる
  • 海外進出の足がかりにできる

日本に学びに来ている外国人留学生はモチベーションも高い傾向にあるため、優秀な人材を確保したい企業にとってメリットが多いでしょう。

(1) 人材を確保できる

少子高齢化が進む日本では、多くの業界で人材不足が深刻化しています。特に若年層の労働力が不足する現状では、学習意欲が高く、専門知識を身につけた留学生は貴重な存在といえるでしょう。

また、外国人留学生はすでに日本で生活し、教育機関で学んでいるため、ビザの手続きや入社後の業務も比較的スムーズに進む点がメリットのひとつです。

グローバル化が進むなかで多様性を尊重する風潮も高まりをみせており、留学生の雇用は企業イメージの向上につながると期待されています。

(2) 日本語が話せる優秀な人材を採用できる

日本で学ぶ留学生は、一定レベル以上の日本語能力を有している人が多い傾向です。

特に大学や大学院で学ぶ留学生は、専門的な内容を日本語で理解し、議論できるレベルの日本語力を持っているケースもあります。

また、母国語と日本語以外にも、英語を含む第三言語を話せる人材も珍しくありません。高い学力を持ち、日本語を積極的に学んできた人材は、将来的に企業の中核を担う存在になる可能性も十分に考えられます。

グローバル化が進む現代のビジネス環境において、多言語対応可能な人材の価値は非常に高いといえるでしょう。

(3) 海外進出の足がかりにできる

外国人留学生は、自国の文化や経済事情に詳しく、ビジネスにおける商習慣の違いを理解しやすい点も魅力です。

海外支店の立ち上げや現地企業との交渉などを視野に入れる場合、留学生の採用により文化的・言語的なハードルを大幅に下げられます。

特にアジア諸国への展開を考えているなら、同地域出身の留学生の採用は、外進出の際の「橋渡し役」として戦略的な意義を持つでしょう。

3. 留学生を採用するデメリット

魅力的なメリットがある留学生の採用ですが、次のデメリットにも注意が必要です。

留学生採用に際して注意すべき点としては、主に次の2つが挙げられます。

  • 在留資格によっては働く時間に上限がある
  • 社内環境の整備を行う必要がある

(1) 在留資格によっては働く時間に上限がある

外国人留学生の在留資格は「留学」であるため、フルタイムでの就労は原則として認められていません。外国人留学生が働く場合は「資格外活動許可」を取得した上で、週28時間以内という制限があります。

制限を理解しないまま企業が業務を割り振ってしまうと、在留資格取り消しのリスクがあるため注意が必要です。

長期休暇中は例外的に1日8時間まで働くことが可能ですが、学業に支障が出ないよう配慮が求められます。

万が一違反が発生すると、企業側も処分を受けかねないため、雇用契約時に在留資格や労働条件をしっかり確認しましょう。

(2) 社内環境の整備を行う必要がある

留学生を受け入れるにあたっては、重要な書類の多言語化や、異文化理解のための研修実施など、言語や文化の違いに配慮した社内環境の整備が必要になります。

外国人留学生は日本語でのコミュニケーションに慣れている人も多いものの、文化・宗教・生活習慣などの違いからトラブルに発展する可能性も否定できません。

また、宗教的な習慣や価値観の違いについても理解を深め、必要に応じて周囲への周知やスタッフへの情報共有も大切です。

多様な文化・考え方の違いを尊重する社内環境の整備は、留学生だけでなく日本人社員にとっても働きやすい環境づくりにつながるでしょう。

4. 外国人留学生を採用する方法

外国人留学生を採用する方法として、主につぎの2つのケースが考えられます。

  • 留学生を新卒採用する
  • 留学生をアルバイトで採用する

採用方法により注意点が異なります。トラブルを回避するためにも、違いを確認しておきましょう。

(1) 留学生を新卒採用する

大学や大学院を卒業見込みの留学生を正社員として採用する場合、在留資格の変更が必要です。

留学生が卒業後、企業で働くには「留学」から「技術・人文知識・国際業務」のような、フルタイムで就労可能な職務内容に応じた在留資格へ変更をしなければなりません。

在留資格の変更手続きは、原則として留学生本人が地方出入国在留管理局に申請しますが、企業側も雇用契約書や事業内容の説明資料提出など、協力するケースが一般的です。

また、留学からの在留資格の変更には、以下の点も把握しておく必要があるでしょう。

  • 採用内定後、在留資格変更許可申請の手続きが必要
  • 変更を認められるには、業務内容と留学生の専攻分野の関連性が重視される
  • 申請から許可が下りるまでに時間がかかる場合がある

在留資格の認定要件を満たせなければ就労ビザが下りず、新卒採用ができない可能性もあります。あらかじめ外国人雇用に詳しい専門家や行政書士などに相談し、必要な書類や手続きを確認しておくことスムーズです。

また、在留資格には有効期間があるため、更新時期の確認も忘れずに行いましょう。

(2) 留学生をアルバイトで採用する

留学生をアルバイトとして採用する場合、前提として週28時間以内という就労時間の制限を守る必要があります。

アルバイトとして採用するには、留学生が「資格外活動許可」を取得しているかも確認しておかなければなりません。また、雇用契約書は日本語だけでなく、可能であれば英語や留学生の母国語でも用意しておきましょう。

留学生のアルバイト採用は、将来的な正社員採用のための「お試し期間」としても活用できます。学生のうちから企業文化に触れられれば、卒業後にもスムーズに正社員として活躍できるでしょう。

また、シフトの組み方に関しては、試験期間や授業スケジュールに配慮することが大切です。就労時間の制限や学業を最優先できる環境を整えれば、アルバイトとしての人材確保がしやすくなるでしょう。

5. bossjobには留学生も多数登録しています

留学生の採用を検討しているなら、適切な人材と出会える場の選択も重要です。bossjobでは、様々な国籍・バックグラウンドを持つ留学生が多数登録しており、企業のニーズに合った人材とのマッチングを支援しています。

日本語能力や専門スキルなど、求める条件に合わせた人材検索が可能なため、効率的な採用活動を行えます。

「外国人留学生」という新たな人材の可能性を探り、企業の成長につなげたいとお考えなら、ぜひbossjobをご活用ください。多様な価値観を持つ人材の採用は、企業に新たな視点と活力をもたらすでしょう。

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