農業分野の特定技能について解説

農業分野での人手不足に悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では農業分野の人手不足の現状とその解決策として注目されている特定技能「農業分野」について解説します。

1. 農業分野の現状

現在、農業分野では人手不足が加速しています。

主な原因は以下の通りです。

  • 労働条件・労働環境
  • 人口減少・高齢化
  • 後継者不足による高齢化
  • 新規就農のハードルの高さ

農林水産省のデータによると、平成27年の基幹的農業従事者が175.7万人、令和6年の基幹的農業従事者が114.4万人と、8年で61.3万人が減少しています。

令和2年から令和6年の基幹的農業従事者の数を見ても、毎年減少しています。

※基幹的農業従事者:農業に主として従事した世帯員(農業就業人口)のうち、調査期日前1年間のふだんの主な状態が「仕事に従事していた者」のこと

※参考:農林水産省

このような人手不足の解決策として注目されているのが特定技能「農業分野」です。

特定技能「農業分野」について詳しく見ていきましょう。

2. 特定技能「農業分野」について

まず、特定技能とは国内で人手が不足する産業分野において、一定の専門性・技術を持つ外国人を受け入れることで、人手不足の解消を目指す制度です。特定技能に該当する産業分野は16種類あり、その中の1つが「農業分野」です。

特定技能には1号と2号があり、それぞれ在留期間や求められる技能水準が異なります。

農業分野は特定技能1号のみでしたが、令和5年6月の閣議決定により、特定技能2号の対象分野の追加に農業分野が追加されました。

(1) 受入可能業務

特定技能1号「農業分野」で従事する業務は以下の通りです。

  • 耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)
  • 畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)

耕種農業とは植物を栽培する業種の相称で、米、野菜、果樹などが該当します。

生茶や葉タバコなどの工芸農作物も栽培も可能です。

畜産農業とは家畜を飼育、肥育、ふ卵する業種の相称で、酪農(牛)、養豚(豚)、養鶏(鶏)などが該当します。養蚕や養蜂も可能です。

上記業務に加えて、農畜産物の製造・加工や販売など関連業務も行えます。

また、特定技能2号「農業分野」の場合は、上記業務に関する管理業務も可能です。

(2) 雇用形態

特定技能「農業分野」では直接雇用および派遣雇用が可能です。

派遣雇用が可能なのは農業と漁業のみです。

繁忙期と閉散期の差が明確に別れる農業分野では、派遣雇用で農作業スタッフを確保することで、繁忙期の人手不足を柔軟に補えます。

(3) 受入要件(外国人)

特定技能「農業分野」における外国人が満たすべき要件を特定技能1号と特定技能2号に分けて紹介します。

① 特定技能1号の要件

特定技能1号の要件は以下の通りです。

  • 1号農業技能測定試験に合格
  • 日本語能力試験(N4以上)or国際交流基金日本語基礎テストに合格

1号農業技能測定試験とは、特定技能の在留資格を持って日本で農業に従事するために、必要な技能を有しているかを測定するための試験です。「耕種農業」と「畜産農業」の2種類の試験が実施され、どちらにも学科、実技、聴き取り問題があります。

様々な言語、様々な国で受験できます。

日本語能力試験とは日本語を母語としない人の日本語能力を測定・認定する試験です。

日本語能力試験にはN1~N5までのレベルがあり、数字が少なくなるほどレベルが高くなります。特定技能2号に必要なN4は「基本的な日本語が理解することができる」レベルです。

また、国際交流基金日本語基礎テストとは、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するテストです。

日本語能力試験(国際交流基金日本語基礎テスト)に関しては、職種を問わず技能実習2号を良好に修了している場合は免除されます。

② 特定技能2号の要件

特定技能2号の要件は以下の通りです。

  • 2号農業技能測定試験に合格
  • 農業の現場において複数の従業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての実務経験or農業の現場における実務経験

2号農業技能測定試験とは、上記で紹介した1号農業技能測定試験よりも難易度が高く、日本語のみで受験可能です。農林水産省によると令和6年における1号試験の合格率は88.5%、2号試験の合格率は36.8%です。

参考:農林水産省

(4) 受入要件(企業)

特定技能「農業分野」における受入企業の条件は以下の通りです。

  1. 直接雇用形態の場合、特定技能所属機関となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験又はこれに準ずる経験があること
  2. 労働者派遣形態の場合、次の要件を満たすこと。
  • 特定技能所属機関となる労働者派遣事業者は、農業現場の実情を把握しており特定技能外国人の受入れを適正かつ確実に遂行するために必要な能力を有していること
  • 外国人材の派遣先となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験がある者又は派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者とする者であること
  1. 特定技能所属機関は、「農業特定技能協議会」(以下「協議会」という。)の構成員になること
  2. 特定技能所属機関及び派遣先事業者は、協議会に対し必要な協力を行うこと
  3. 特定技能所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会に対し必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
  4. 特定技能所属機関は、特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付すること

参考:法務省

上記にある「農業特定技能協議会」とは、特定技能外国人と受入機関を連携させる団体です。初めて農業分野ので外国人を受け入れる場合は、受け入れから4カ月以内に加入する必要があります。

3. 特定技能「農業分野」での外国人採用の流れ

特定技能「農業分野」での外国人採用の流れは以下の通りです。

  1. 募集を行うor採用プラットフォームを利用する
  2. 書類選考・面接を行う
  3. 外国人労働者と特定技能雇用契約を結ぶ
  4. 特定技能外国人支援計画を作成する(or委託する)
  5. 事前ガイダンスを実施する
  6. 在留資格申請を行う
  7. 在留資格認定書を外国人労働者に送る
  8. 外国人労働者が入国する
  9. 就労開始

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