製造業分野における特定技能の外国人採用を解説!

日本の製造業界では人手不足が深刻化しており、特定技能制度を活用した外国人材の採用を検討している企業も多いのではないでしょうか。

特定技能制度では、日本語能力や技術力の試験に合格した外国人を採用できるため、活用すれば製造スタッフ不足を解決できる可能性があります

しかし、制度を利用するには、受け入れ可能な業務や基準を満たす必要があるので、注意が必要です。

そこで本記事では、製造業分野で受け入れ可能な業務内容や基準、必要な準備を解説します。外国人採用により人手不足を解消したいなら、ぜひ参考にしてください。

1. 製造業分野で特定技能外国人を受け入れるための基礎知識

特定技能制度は2019年4月にスタートした外国人労働者の受け入れ制度です。製造業分野でも、すでに多くの特定技能外国人が働いています。

ここでは、製造業分野で特定技能外国人を受け入れる際に必要な基礎知識を紹介します。

(1) 3つの分野を統合後、名称を「工場製品製造業分野」に変更

特定技能制度の開始当初は、製造業分野は以下の3つに分かれていました。

  • 素形材産業分野
  • 産業機械製造業分野
  • 電気・電子情報関連産業分野

2024年3月の閣議決定により3分野が統合され、名称が「工場製品製造業分野」に変更されています。

複数の分野がまとまったことで制度が簡素化され、企業側も外国人材も分野選択がしやすくなったといえます。

(2) 製造業での外国人労働者の割合と動向

製造業は外国人労働者が特に多い業種です。厚生労働省の公表データによると、2024年10月時点の製造業で働く外国人は598,314人と、外国人労働者全体の26%を占めています。

また、出入国在留管理庁が設定している2024年4月から5年間の受け入れ見込み数は173,300人となっており、これは特定技能制度の全対象分野中、最も多い数です。

製造業は人手不足が深刻化している現場が多く、技能実習制度で来日した外国人が経験を積み、特定技能へ移行して長く働くケースが見られます。

また、技術伝承の担い手として外国人労働者への期待が高まっている点も、製造業で働く外国人が多い背景のひとつといえるでしょう。

2. 製造業分野の業務区分と受け入れ可能業種の一覧表

下表は、2024年3月に閣議決定された工場製品製造業分野の業務区分と含まれる技能をまとめたものです。

分類業務区分業種(技能)
既存3区分①機械金属加工・鋳造・機械加工・工場板金・機械検査・塗装・金属熱処理・鍛造・金属プレス加工・機械保全・電気機器組立て・溶接・強化プラスチック成形・ダイカスト・鉄工・仕上げ・プラスチック成形・工業包装
②電気電子機器組立て・機械加工・機械保全・プリント配線板製造・強化プラスチック成形仕上げ・電子機器組立て・プラスチック成形・機械検査・電気機器組立て・工業包装
③金属表面処理・めっき・アルミニウム陽極酸化処理
追加7区分④紙器・段ボール箱製造・紙器・段ボール箱製造
⑤コンクリート製品製造・コンクリート製品製造
⑥RPF製造・RPF製造
⑦陶磁器製品製造・陶磁器工業製品製造
⑧印刷・製本・印刷・製本
⑨紡織製品製造・紡績運転・染色・たて編ニット生地製造・織布運転・ニット製品製造・カーペット製造
⑩縫製・婦人子供服製造・下着類製造・帆布製品製造・座席シート縫製・紳士服製造・寝具製作・布はく縫製

2024年3月の閣議決定により、縫製や紡織製品製造、紙器・段ボール箱製造を含む7区分が追加されました。

また既存3区分に含まれる技能として、機械金属加工区分に「金属熱処理」「強化プラスチック成形」、電気電子機器組立て区分に「強化プラスチック成形」も追加されています。

特定技能外国人が、従来よりも工業製品製造業分野で働けるようになっています。

3. 製造業分野における特定技能外国人の受け入れ基準

特定技能外国人を採用するには、外国人動労者が次のいずれかの基準を満たしている必要があります。

  • 日本語試験や技能試験に合格しているか
  • 技能実習2号を修了しているか

(1) 日本語試験・技能評価試験に合格している

工場製品製造業分野で特定技能の在留資格を得るためには、日本語能力試験(一定レベル以上)と、製造分野特定技能評価試験のどちらにも合格している必要があります。

対象在留資格試験ルート合格要件 / 条件
特定技能1号製造分野特定技能1号評価試験ルート以下 ①② に合格すること① 製造分野特定技能1号評価試験② 日本語試験(以下いずれか)・国際交流基金日本語基礎テスト・日本語能力試験(N4以上)
※技能実習2号を良好に修了した者は、①②の試験が免除
特定技能2号製造分野特定技能2号評価試験ルート以下 ①② に合格し、③ を満たすこと

① ビジネス・キャリア検定3級(生産管理プランニングまたは生産管理オペレーションの合格が必要)② 製造分野特定技能2号評価試験③ 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場で3年以上の実務経験
技能検定ルート以下 ① に合格し、② を満たすこと

① 技能検定1級(下記いずれかの職種)鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、塗装、工業包装、金属熱処理② 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場で3年以上の実務経験

業務に必要な指示や作業内容を理解できるよう、日本語能力試験(N4)ではゆっくりとした日本語であれば、内容がほぼ理解できる日本語レベルが求められます。

製造分野特定技能試験は経済産業省が主催する、知識や技術力を測る試験です。特定技能1号では「相当程度の知識又経験を必要とする技能を有しているか」、2号では「熟練した技能を有しているか」が判断されます。

ただし、特定技能2号の在留資格を得るには、日本での3年以上の実務経験も必要です。

(2) 技能実習2号を修了している

技能実習2号を修了している場合も、特定技能1号を取得できます。良好に修了している場合には、日本語試験や製造分野特定技能1号評価試験の受験は不要です。

ただし、特定技能1号へ移行するには、技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められる必要があります。

技能実習の職種と関連が認められない職種への移行はできないので、注意しましょう。

4. 特定技能外国人の受け入れ企業側の要件と必要な準備

特定技能外国人を受け入れる企業側にも複数の要件があります。

ここでは主な要件として3項目をピックアップしますが、受け入れ準備に漏れがないよう、申請先や専門家に確認しましょう。

(1) 企業が対象の日本標準産業分類に該当していること

特定技能で外国人を受け入れるには、自社が日本標準産業分類で定める「工場製品製造業分野」に該当している必要があります。

受け入れ可能な日本標準産業分類は特定技能1号と2号でも異なるので、注意しましょう。

特定技能1号(49分類)・繊維工業・パルプ製造業・洋紙製造業・板紙製造業・機械すき和紙製造業・塗工紙製造業(印刷用紙を除く)・段ボール製造業・紙製品製造業・紙製容器製造業・その他のパルプ・紙・紙加工品製造業・印刷・同関連業・プラスチック製品製造業・コンクリート製品製造業・食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業・陶磁器製置物製造業・鋳型製造業(中子を含む)・高炉による製鉄業・高炉によらない製鉄業・製鋼・製鋼圧延業・熱間圧延業(鋼管、伸鉄を除く)・冷間圧延業(鋼管、伸鉄を除く)・鋼管製造業・鉄素形材製造業・鉄鋼シャースリット業・非鉄金属素形材製造業・機械刃物製造業・作業工具製造業・配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)・鉄骨製造業・金属製サッシ・ドア製造業・製缶板金業(ただし、高圧ガス用溶接容器・バルク貯槽製造業に限る)・金属素形材製品製造業・金属製品塗装業・溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)・電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)・金属熱処理業・その他の金属表面処理業(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る)・ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業・他に分類されない金属製品製造業(ただし、ドラム缶更生業に限る)・はん用機械器具製造業(ただし、2591消火器具・消火装置製造業を除く)・生産用機械器具製造業・業務用機械器具製造業(ただし、274医療用機械器具・医療用品製造業及び276武器製造業を除く)・電子部品・デバイス・電子回路製造業・電気機械器具製造業(ただし、2922内燃機関電装品製造業を除く)・情報通信機械器具製造業・工業用模型製造業・他に分類されないその他の製造業(ただし、RPF製造業に限る)・こん包業・他に分類されない鉄鋼業(ただし、鉄粉製造業に限る)
特定技能2号(19分類)・鋳型製造業(中子を含む)・鉄素形材製造業・非鉄金属素形材製造業・機械刃物製造業・作業工具製造業・配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)・金属素形材製品製造業・溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)・電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)・金属熱処理業・その他の金属表面処理業(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る)・ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業・はん用機械器具製造業(ただし、2591消火器具・消火装置製造業を除く)・生産用機械器具製造業・業務用機械器具製造業(ただし、274医療用機械器具・医療用品製造業及び276武器製造業を除く)・電子部品・デバイス・電子回路製造業・電気機械器具製造業(ただし、2922内燃機関電装品製造業を除く)・情報通信機械器具製造業・工業用模型製造業

事業所が製造業分野に該当するかの判断基準は、次のとおりです。

  • 直近1年間で、対象となる産業について製造品出荷額等が発生していること
  • その事業所の所有する原材料によって製造されたものであること

「製造品出荷」には、次のものも含まれます。自社が製造業分野に該当するか、製造品の定義も含めて確認しましょう。

  • 同一企業に属する他の事業所へ引渡したもの
  • 自家使用されたもの(その事業所において最終製品として使用されたもの)
  • 委託販売に出したもの(販売済みでないものを含み、直近1年間中に返品されたものは除外)

(2) 受入れ協議・連絡会に入会していること

特定技能制度の適切な運用を図るため、工業製品製造業分野では経済産業省が「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」を設置しています。

特定技能外国人を受け入れるには、受け入れ企業は「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」へ加入しなければなりません。

入会は、ポータルサイトにて手続き可能ですが、確認完了まで2か月ほど時間がかかる点に注意が必要です。

出入国在留管理庁への在留諸申請前に加入している必要があるため、早めに入会手続きを済ませましょう。

なお、入会に必要な証明書類については「証明書類作成テンプレート」を用いて作成・提出する必要があります。

(3) 法令を遵守して適切な雇用契約を結び、届出をすること

特定技能外国人を雇用する際、受け入れ企業は各種基準への適合した外国人と適切な特定技能雇用契約を結び、届出をする義務があります。

日本人と同等以上の報酬を保証し、残業時間や休日取得などの労働条件を適正に設定するなど、満たすべき基準は30項目程度あるため、注意が必要です。

受け入れ企業は随時または定期的に必要な届出をする必要があり、届出の不履行や虚偽の届出は罰則の対象となる点も確認しておきましょう。

また、特定技能1号の外国人が安定して円滑に活動できるよう、職業生活・日常生活・社会生活の支援の実施計画を作成し、支援することも受け入れ企業に求められています。

支援計画に必要な項目は、次の10項目です。特定技能外国人を受け入れる前に、社会環境も整えておきましょう。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国する際の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続き等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

なお、支援義務があるのは特定技能1号のみで、特定技能2号の外国人を受け入れる際の支援義務は特に定めがありません。

5. まとめ

今回は、製造業分野における特定技能外国人の受け入れについて、基礎知識や基準、企業側の受け入れ準備を中心に解説しました。

いわゆる製造業である「工場製品製造業分野」で外国人が特定技能の就労ビザで働くには、日本語能力と専門的技能が規定以上であると証明する必要があります。

また、受け入れ企業側にも産業分類の確認や受入れ協議会への加入、適切な雇用契約の締結などの要件があるため、事前の準備が必要です。

外国人材の活用は、人手不足解消だけでなく、技術力や生産性の向上にもつながります。この機会に受け入れ準備を整えて、外国人採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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