自動車運送業分野の人手不足の解決策として注目されているのが特定技能1号での外国人採用です。本記事では2024年3月に追加された特定技能「自動車運送業」について詳しく解説します。外国人ドライバーの採用を考えている担当者の方はぜひ参考にしてください。
1. そもそも特定技能1号とは
特定技能とは人手不足が深刻化する16の分野で外国人を受け入れるための在留資格です。
特定技能は他の在留資格に比べて就労範囲が広く、単純労働を含む業務にも対応できます。
特定技能には1号と2号があり、今回紹介する特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務に従事する外国人」向けの在留資格です。特定技能1号と2号には、在留期間や技能水準などの違いがあります。
自動車運送業分野では人手不足が深刻化しており、人手不足を解消するために自動車運送業分野が特定技能1号の対象分野に追加されました。
2. 自動車運送業分野のドライバー不足
現在、自動車運送業分野ではドライバー不足が深刻化しています。
主な原因は以下の通りです。
- ドライバーの高齢化
- 過酷な労働環境
- 宅配需要の急増
自動車運送業に限らず、日本では少子高齢化が進んでいます。
若年層の獲得が難しく、ベテランドライバーに頼らざるを得ない状況です。
このままでは将来的な労働力確保が難しいと懸念されています。
また、自動車運送業は他の分野に比べて労働時間が長く、収入も低い傾向にあります。
そこに人手不足が加わり、さらに現場の負担は大きくなっています。
さらに、インターネットショッピングなどの発展による宅配需要の急増により、ドライバーの供給が追い付いていないことも原因です。
厚生労働省のデータによると、令和4年9月における全職業平均の有効求人倍率が1.20なのに対して、トラック運転者の有効求人倍率は2.12です。
有効求人倍率とは求職者に対する求人数の割合です。つまり、求職者よりも求人数の方が多く、トラックドライバーが不足している状況です。
このような自動車運送業分野の人手不足を解消するために外国人ドライバーの採用が注目されています。
3. 特定技能1号「自動車運送業」について
特定技能1号「自動車運送業」について、以下の項目を解説します。
- 業務内容
- 受け入れ要件(外国人)
- 受け入れ要件(企業)
(1) 業務内容
業務内容は以下の通りです。
トラック運転者 | タクシー運転者 | バス運転者 | |
従事する主な業務 | ・運行業務(運行前後の車両点検、安全な旅客の輸送、乗務記録の作成等)・接遇業務(乗客対応等) | ・運行業務(運行前後の車両点検、安全な旅客の輸送、乗務記録の作成等)・接遇業務(乗客対応等) | ・運行業務(運行前後の車両点検、安全な旅客の輸送、乗務記録の作成等)・接遇業務(乗客対応等) |
想定される関連業務※専ら関連業務に従事することは認められない | ・車内清掃作業・営業所内清掃作業・運賃精算、管理・その他、主たる業務に付随して行う作業 | ・車内清掃作業・営業所内清掃作業・運賃精算、管理・その他、主たる業務に付随して行う作業 | ・車内清掃作業・営業所内清掃作業・運賃精算、管理・その他、主たる業務に付随して行う作業 |
引用:法務省
(2) 受け入れ要件(外国人)
外国人側の受け入れ要件は以下の通りです。
トラック運転者 | タクシー運転者 | バス運転者 | |
特定技能試験 | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック) | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー) | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(バス) |
運転免許 | 第一種運転免許 | 第二種運転免許 | 第二種運転免許 |
日本語試験 | 下記のいずれか・日本語能力試験N4以上・国際交流基金日本語基礎テスト・技能実習2号の良好修了 | 日本語能力試験N3以上 | 日本語能力試験N3以上 |
引用:全日本トラック協会
上記についてそれぞれ詳しく解説します。
① 特定技能試験
外国人ドライバーが日本で働くためには、特定技能1号評価試験に合格する必要があります。概要は以下の通りです。
受験資格 | 1.試験受験日において、満17歳以上であること2.試験受験日において、有効な日本又は外国で取得した自動車運転免許を保有していること3.国内で受験する場合は、在留資格を有していること4.退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限のある機関の発行した旅券を所持していない者でないこと |
試験形式 | 1.出張方式:申請者(法人)が希望する会場でペーパーテストを実施2.CBT方式:テストセンターにてコンピュータを使用して実施 |
受験料 | 国内:5,000円(税抜)海外:37米ドル |
証明書発行手数料 | 14,000円(税抜) |
※参考:ClassNK
② 運転免許
トラック運転者は第一種運転免許、タクシー運転者とバス運転者は第二種運転免許の取得が必要です。第二種運転免許は、第一種免許を取得してから通算3年以上経過している必要があります。
外国人ドライバーが運転免許を取得する方法は、日本の教習所で取得する方法と外免切替手続きを行う方法があります。外免切替とは、海外で取得した運転免許を日本の運転免許に切り替える手続きです。外免切替では知識確認と技能確認が行われますが、免除されるケースもあります。
③ 日本語試験
外国人ドライバーが日本で働くためには、日本語試験への合格が必要です。
日本語能力試験にはN1〜N5までのレベルがあり、数字が上がるにつれて難易度が上がります。トラック運転者に必要なN4は「基本的な日本語を理解することができる」レベル、タクシー運転者とバス運転者に必要なN3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルです。
また、トラック運転者は、国際交流基金日本語基礎テストでA2レベルに合格するか、技能実習2号を良好に修了することで、日本語能力試験が免除されます。
(3) 受け入れ要件(企業)
企業側の受け入れ要件は以下の通りです。
- 道路運送法に規定する自動車運送事業を経営する者であること
- 働きやすい職場認証の取得or安全性優良事業所(Gマーク)の保有
- 自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になり、必要な協力を行うこと
- 新任運転者研修を実施すること
上記について重要な単語を解説します。
① 働きやすい職場認証
働きやすい職場認証とは、自動車運送業事業者の取り組みを見える化することで
- 職場環境の改善
- 求職者の就職促進
- 各事業者の人材確保の後押し
の実現を目的とした制度です。
一つ星から三つ星まで3つの認証段階があり、星が増えるほど職場環境が良好であることを示します。法人単位での取得が基本です。
② 安全性優良事業所(Gマーク)
安全性優良事業所(Gマーク)とは、厳しい安全評価基準をクリアした事業所が取得できるシンボルマークです。Gマークを取得した事業所は、実取得事業所に比べて、事故の割合が半分以下というデータが出ています。
参考:国土交通省
③ 自動車運送業分野特定技能協議会
外国人を受け入れる企業は特定技能外国人の適正な受入れと保護を目的とした自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。
④ 新任運転者研修
自動車運送業分野では、新任運転者研修の実施が必要です。
新任運転者研修とは初任運転者がプロドライバーとしての自覚を持ち、安全運転の基礎を習得するための研修です。
4. 特定技能1号「自動車運送業」で外国人ドライバーを採用する流れ
特定技能1号「自動車運送業」で外国人ドライバーを採用する流れは以下の通りです。
- 募集or登録支援機関への登録
- 書類選考・面接
- 雇用契約の締結
- 自動車運送業分野特定技能協議会へ入会
- 入管(特定活動)手続き
- 外免切替による日本の運転免許取得
- 研修等
- 在留資格変更許可申請
- 就労開始
運転免許の有無や外国人の国籍によって細かい流れは異なるため注意が必要です。