現在、外国人雇用においてネパール人が注目されているのをご存じですか?
本記事では日本で働くネパール人が増えている理由、ネパール人雇用のメリットや注意点などを解説します。
1. ネパールについて
ネパール人採用を考える上で大切なネパールという国について紹介します。
(1) 平均賃金
ネパールの平均賃金は3万前後です。
日本の平均月収(2023年)は約31万8,300円です。
ネパールの物価は日本の物価の半分〜3分の1と言われているため、単純な比較はできませんが、ネパール人の賃金水準は日本よりもかなり低いと言えます。
(2) 主要産業
ネパールの主要産業は以下の通りです。
- 農林業
- 貿易・卸売り業
- 不動産
参考:外務省
ネパールはヒマラヤ山脈に囲まれており、就労人口の6〜7割が農村部に居住しています。ネパールは発展途上国の中でも特に経済発展が遅れていることで有名です。
2. 日本で働くネパール人が増えている
現在、日本で働くネパール人が増えています。
「外国人雇用状況」の提出状況まとめ(令和6年10月末時点)によると、日本で働くネパール人は187,657人で全体の8.1%を占めています。
ベトナム、中国、フィリピンに続いて4位です。
ネパール人が日本で働く理由は以下の3つです。
- 給料が高い
- 治安が良い
- 労働・教育環境が整っている
まず、ネパールは日本に比べて賃金水準が低くなっています。
ネパールは農業が中心ということもあり経済成長が見込めず、賃金水準が日本と比べて低くなっています。また、特定技能で働けば、資格やスキルなどが必要ない単純労働が可能です。単純労働であっても、ネパールで働くよりも稼げるのです。特に飲食、介護などで働くネパール人が多いようです。
次に日本はネパールに比べて治安が良い点も関係しています。
ネパールも比較的治安が安定していると言われていますが、デモが発生したり、夜間はスリ・置き引きが行われたりしています。ネパール人はより安定した治安を求めて来日します。
さらに、日本の労働環境や教育環境の良さも大きな理由と言えるでしょう。
日本は最低賃金が設定されていたり、福利厚生が整っていたり、労働環境が比較的良いと言われています。外国人に対する差別もほとんどありません。日本は教育環境が整っているため、子どもを高いレベルの教育環境で育てたいというネパール人も多いようです。
3. ネパール人雇用のメリット
ネパール人雇用のメリットは以下の通りです。
- 若い労働力を確保できる
- 価値観が日本と近い
- 日本語の習得が早い
- チームで動くことが得意
(1) 若い労働力を確保できる
ネパールには若い人が沢山います。
また、彼らは自国の賃金水準の低さから、出稼ぎに行きたいと考えています。
少子高齢化社会の日本で若い労働力を確保できるのは大きなメリットです。
若いネパール人は体力が必要な仕事や高齢化が進む業界で活躍してくれるでしょう。
(2) 価値観が日本と近い
ネパール人は日本人と同じ価値観・文化を持つ人が沢山います。
例えば以下のような価値観が共通しています。
- 年上を敬う
- 真面目によく働く
- 挨拶をする
ネパールには性別にかかわらず年上を敬う文化があるため、年功序列のような考え方がある日本と相性が良いです。特に介護や飲食などで力を発揮してくれるでしょう。
また、ネパール人は真面目に働くため、真面目に働く姿勢が評価される日本に受け入れられやすいと言えます。自国に住む家族への仕送りのために来日しているネパール人も多いため、一生懸命働いてくれるでしょう。
さらに、ネパール人は日本人と同じようによく挨拶を交わします。他の社員などからも良い印象を持たれるでしょう。
(3) 日本語の習得が早い
ネパールの公用語であるネパール語は、日本語と文法が似ているため、習得しやすいと言われています。また、ネパールには様々な民族が共存しており複数の言語が使用されるため、言語を学ぶことに抵抗がありません。外国人採用の懸念点でもある言語の壁ですが、ネパール人を採用できれば、すぐに日本語を習得して活躍してくれるでしょう。
(4) チームで動くことが得意
ネパール人は助け合いの精神が強く、チームで働くことが得意です。
親しみやすい雰囲気を作ったり、すぐに仲間と打ち解けたりできるので、円滑なコミュニケーションが可能です。ネパール人は日本の環境に適応しやすく、関係構築も得意であるため、長期的な雇用も期待できるでしょう。
4. ネパール人雇用の注意点
ネパール人雇用には以下のような注意点もあります。
- 宗教上の配慮が必要
- 時間にルーズ
- 海外労働保険への加入が必要
- 海外労働許可証が必要
- 海外労働者社会福祉基金への支払が必要
(1) 宗教上の配慮が必要
ネパール人の多くが信仰するヒンドゥー教には以下のようなルールや文化があります。
- 牛肉を食べない
- 食事で左手を使わない
- 他人が口にしたものは食べない
- 「ダサイン」と呼ばれる祭りがある
ダサインは15日間かけておこなわれる国民の休日で、ダサインの時期になると帰国するネパール人がほとんどです。また、ネパール人はヒンドゥー教以外の宗教を信仰したり、地域ごとにルールがあったりするため、個別での配慮が必要です。事前のヒアリングや面接等で配慮するべき点を確認しておくことで、トラブルを未然に防ぎましょう。
(2) 時間にルーズ
ネパール人にはネパリタイムというネパール人特有の時間の感覚があり、時間にルーズな人が多いです。仕事ではスピードではなく質を重視する傾向にあるため、納期や期限がある仕事では、支障をきたす可能性があります。時間を含めた日本でのビジネスルールを教育する機会を設けましょう。
(3) 海外労働保険への加入が必要
海外労働保険とは労働者の健康と安全を保護し、万が一の病気や事故に対応するための保険です。海外労働保険への加入はネパール人本人がネパール国内で行います。雇用契約締結時に説明と確認が必要です。
(4) 海外労働許可証が必要
海外労働許可証とはネパール人が海外(日本)で働くために必要な許可証で、ネパール政府が発行します。ネパール人労働者が適切な労働環境で働くことを保証したり、不法就労を防いだりする役割があります。海外労働許可証の取得はネパール人本人がネパール国内で行います。海外労働許可証の申請には雇用契約書等が必要になるため、雇用契約締結後に行ってもらいましょう。
(5) 海外労働者社会福祉基金への支払が必要
海外労働者社会福祉基金とは、ネパール人労働者が加入する社会保険制度です。
支払い等はネパール人本人が行います。
※受入企業と折半する場合もあります
支払いの滞納や不正行為があると、法的なトラブルに繋がる可能性があるため、細心の注意が必要です。
5. ネパール人雇用は特定技能がおすすめ
ネパール人雇用には特定技能がおすすめです。
特定技能であれば他の資格と異なり幅広い業務を任せることができ、また、単純労働も可能です。厚生労働省の「特定技能制度運用状況等について」によると、令和5年12月末時点で特定技能で働くネパール人は4,430人です。
年々数が増加しており、業務範囲が広いことから、技能実習に変わる在留資格として注目されています。
6. 特定技能によるネパール人雇用の流れ
特定技能によるネパール人雇用の流れを現地にいるネパール人雇用の流れと日本にいるネパール人雇用の流れに分けて解説します。
参考:法務省
(1) 現地にいるネパール人雇用の流れ
現地にいるネパール人雇用の流れは以下の通りです。
- 募集
- 書類選考・面接
- 雇用契約の締結
- 在留資格認定証明証の申請
- 査証発給申請
- 健康診断・出国前オリエンテーション
- 海外労働保険への加入・海外労働者社会福祉基金への支払い
- 海外労働許可証の取得
- 入国
- 就労開始
(2) 日本にいるネパール人雇用の流れ
日本にいるネパール人雇用の流れは以下の通りです。