人材不足が問題視される日本では今、アフリカで最も人口の多い国であるナイジェリアに注目している企業・経営者も増えています。
ナイジェリアは英語を公用語としており、IT産業をはじめとする成長分野も豊富。多様な専門スキルを持つ人材の宝庫ともいえる存在です。
そこで本記事では、ナイジェリア人採用を検討する企業の担当者の方に向けて、平均賃金や主要産業、在留資格などの基本情報を紹介します。雇用時に押さえておきたいメリットや注意点も解説するので、外国人採用を検討しているならぜひ参考にしてください。
1. ナイジェリアの基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格
ナイジェリアはアフリカ最大の人口と国内総生産(GDP)を誇る国です。石油や天然ガスなどの資源に恵まれており、近年は通信やIT分野の成長も著しいとされています。
ここではナイジェリアの基本情報として、平均賃金や主要産業、日本で働いているナイジェリア人が持つ在留資格について紹介します。
(1) ナイジェリアの平均賃金
ナイジェリアの平均賃金は、地域や職種によって大きく異なります。
都市部であるラゴスやアブジャなどでは、IT技術者や金融関連の専門職が比較的高い賃金を得ている一方、地方部やサービス業や製造業などの業種では低賃金の労働が中心です。
平均月収は340,000NGN(およそ34,000円)ですが、一部の高所得者が平均値を引き上げているため、中央値は302,000NGN(およそ30,000円)です。
日本の平均賃金と比べると平均賃金は低水準ですが、ITエンジニアや金融の専門家などの専門知識を要する分野では、都市部中心に年々給与水準が上昇しています。
特にIT関連の分野では、欧米や中東で働くナイジェリア人も少なくありません。
優秀な人材を確保するためには、日系企業もある程度の報酬を提示する必要があるでしょう。
なお、ナイジェリアの著名人として、アフリカ最大のセメント製造会社の創業者でありアフリカ随一の大富豪であるアリコ・ダンゴート氏が知られています。
建設業のGDPも増加傾向にあり、今後、建設業が主要産業として伸びていく可能性も十分にあるでしょう。
(2) ナイジェリアの主要産業
ナイジェリアは「アフリカの巨人」と呼ばれるほどアフリカでの経済規模が大きく、以下のような産業が栄えています。
- 石油・天然ガス
- 農業
- 通信業
ナイジェリアはアフリカ最大の産油国で、鉱物資源が豊富です。
農業も盛んで、タピオカの原料として知られるキャッサバをはじめ、カカオ豆やヤムイモなど、多くの農産物を輸出しています。
また、インターネットや携帯電話などの通信業も、ナイジェリアの主要産業のひとつ。AIやブロックチェーン、ロボット工学などのIT分野の人材育成も積極的にすすめています。
即戦力となる人材を求める日本企業にとって、ナイジェリアは非常に魅力的な国といえるでしょう。
(3) ナイジェリア人が持つ主な在留資格・就労ビザ
下表は、2024年6月の日本政府統計データによるナイジェリア人の在留資格・就労ビザの人数です。
在留資格 | 人数 |
教授 | 15 |
宗教 | 21 |
高度専門職合計 | 12 |
経営・管理 | 20 |
研究 | 2 |
教育 | 163 |
技術・人文知識・国際業務 | 263 |
興行 | 13 |
特定技能合計 | 2 |
技能実習合計 | 0 |
文化活動 | 12 |
留学 | 394 |
研修 | 2 |
家族滞在 | 408 |
特定活動 | 160 |
永住者・定住者・配偶者等 | 2,639 |
総数 | 4,126 |
2025年現在、日本の就労ビザを所有しているナイジェリア人は多いとはいえません。
ナイジェリア人が持つ就労ビザのなかで最も人数が多いのは「技術・人文知識・国際業務」で、専門的な知識を活かして働くナイジェリア人も多いことがわかります。
一方で、技能実習の在留資格は0人、特定技能は2人と非常に少ない数値です。
日本に住む多くのナイジェリア人は永住者・定住者とその配偶者や家族で、技術を学びに来日している人はほぼいないと考えてよいでしょう。
2. ナイジェリア人を採用するメリット
ナイジェリア人を採用するメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 優れた能力と高い技術力をもった人材が増えている
- 英語で円滑にコミュニケーションを取れる
- アフリカ市場進出の足掛かりになる
(1) 優れた能力と高い技術力をもった人材が増えている
現在のナイジェリアでは大学教育の拡充や海外留学の機会増加により、専門知識やITスキルを身につけた人材が増えています。
プログラミングやデータ分析などの高度なITスキルを持つ若者も多く、欧米企業やアジア企業など、国外へ活躍の場を広げるケースも珍しくありません。
ナイジェリア人は複数の民族が住んでいる国のため、柔軟な思考力と多様性への対応力に優れています。
日本語学習に興味を持つ人材を採用できれば、ナイジェリア人が持つコミュニケーション能力を存分に発揮できるでしょう。
(2) 英語で円滑にコミュニケーションを取れる
ナイジェリアの公用語は英語です。「社内公用語を英語に切り替えたい」「海外チームとのコミュニケーションが頻繁に発生する」といった企業にとって、ナイジェリア人の採用は大きな財産となります。
海外での事業展開を検討している企業にとっても、英語力の高いナイジェリア人の存在は大きな強みです。アフリカはもちろん、中東や欧米とのビジネスにおいても重要な人材となるでしょう。
(3) アフリカ市場進出の足掛かりになる
ナイジェリアはアフリカ最大の経済大国であり、世界的にも巨大な市場です。
今後、アフリカ市場への進出を検討する日本企業にとって、現地事情を熟知したナイジェリア人材は欠かせない存在になるでしょう。
ナイジェリア人の採用により、マーケットリサーチや現地ネットワークの構築など、日本人だけでは難しいタスクも円滑に進めやすくなります。
文化の違いや習慣の把握、現地の公用語以外の言語サポートなど、ナイジェリア人スタッフの知見を活かせれば、ビジネスリスクも低減可能です。アフリカ全域への事業展開を検討しているなら、ナイジェリア人の採用は重要なステップとなるでしょう。
3. ナイジェリア人を雇用する際の注意点|気を付けるべきポイント
ナイジェリア人を雇用する際には、次の3点に注意や配慮をしましょう。
- 宗教や歴史的背景に配慮する
- 対等な関係を意識する
- 時間にルーズな傾向がある
(1) 宗教や歴史的背景に配慮する
ナイジェリアは、北部にはイスラム教徒が多く、南部にはキリスト教徒が多いという宗教的・地理的な特徴があります。
一部では伝統的な信仰を保持する地域もあり、同じナイジェリア人でも宗教行事や祝祭日が地域によって異なる点に注意が必要です。
雇用契約を結ぶ際には、本人がどのような宗教的行事を重要視しているかも確認しておきましょう。
イスラム教徒の場合は、食べられない食物や祈りの時間など、特に配慮が必要です。
企業側が理解を示せば、ナイジェリア人だけでなく全ての従業員にとって働きやすい環境が整い、離職率の低下やモチベーションの向上にもつながります。
宗教や歴史に対する敬意を払いながら、長期的な信頼関係を築く職場環境を整えましょう。
(2) 対等な関係を意識する
ナイジェリアはかつて、イギリスの植民地でした。イギリスから持ち込まれた資本主義によって貧富の差が生まれたため、ステータスで上下関係を決めるといわれています。
アフリカの大国としてのプライドも高く、コミュニケーションにおいても対等な関係を好む傾向があることを認識しておく必要があるでしょう。
上から目線の指示や命令調のやり取りは避け、できるだけチームとして協力し合う姿勢を示すとトラブルや誤解を防ぎやすくなります。
また、日本では当たり前とされる礼儀作法やコミュニケーションスタイルに戸惑うナイジェリア人も、珍しくありません。
業務指示は明確・丁寧に伝え、フィードバックも定期的に行うと、互いの目標や課題を共有しやすくなります。
ナイジェリア人に限らず、すべての従業員がお互いの文化や考え方を尊重する姿勢を持てる環境であれば、より円滑に業務を遂行できるでしょう。
(3) 時間にルーズな傾向がある
ナイジェリアに限らず、日本のように厳密に時間を管理する国は少ない傾向です。
ナイジェリアでも「時間通りに到着しない」ことを問題視しない人も多くいます。
会議の開始時刻や納期設定を徹底しないと、遅延のリスクがあるので注意が必要です。
納期が絶対的に重要なプロジェクトの場合は、事前に具体的なスケジュールを共有し、進捗管理をこまめに行うような工夫をしましょう。
例えば、時間管理ソフトのようなツールの活用や、週ごとの短いチェックポイントの設定は有効な手段です。
ルールを明確にしつつ、時間が守られない場合の対処法も柔軟に検討できる体制を整えておけば、トラブルもスムーズに解決しやすくなるでしょう。
4. まとめ
今回は、ナイジェリア人を採用する際に知っておきたい基本情報や採用のメリット、雇用時の注意点を紹介しました。
ナイジェリアは公用語が英語でIT人材の育成にも力を入れているため、高い英語力やスキルを持った人材も多い国です。
アフリカでは最も人口が多い国のため、ナイジェリア人材の登用はアフリカ市場への有効な足掛かりにもなります。
ナイジェリア人の習慣や文化、国民性を理解し、企業のさらなる成長につなげていきましょう。