スペイン人採用の基礎知識

人材不足を補うために、スペイン人の採用を検討している企業・経営者も多いのではないでしょうか。

スペインは観光業や製造業が発展している国であり、欧州連合(EU)の一員として国際的にも大きな役割を担っている国のひとつ。世界で5番目に多くの話者がいるスペイン語を話せるのも、スペイン人材の強みです。

スペイン人の採用を成功させるには、平均賃金や主要産業といった基本情報に加え、文化的な価値観の違いを理解することが重要です。

そこで本記事では、スペイン人採用に必要な基礎知識やメリット、雇用時の注意点について解説します。

1. スペインの基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格

スペインはヨーロッパの南西部に位置しており、地中海に面した温暖な気候が特徴の国。観光大国として多くの名所があり、世界中から旅行者が訪れています。

農業や製造業をはじめ、幅広い産業が発展しており、優秀な人材が多いのも魅力です。

ここでは、スペイン人を採用する前に知っておきたいスペインの平均賃金や主要産業、所有している在留資格について、紹介します。

(1) スペインの平均賃金

スペインの平均賃金は、日本とほぼ同じかやや低い水準にあります。2022年のデータで比較すると、スペインの平均月収は2,128.40ユーロ(およそ34万円)、日本はおよそ38万円でした。

ただし、職種や地域によって賃金に大きな差がある点には注意が必要です。

例えば、情報処理や金融保険の分野では3,000ユーロ前後(およそ48万円)と平均よりも高いものの、飲食業や農業では1,400ユーロ前後(およそ22万円)と格差があります。

また、首都マドリードの平均月収は2,381.30ユーロ(およそ38万円)と高い一方、アフリカに近いカナリアス諸島では1,869.30ユーロ(およそ29万円)と低水準です。

しかしながら、EU諸国の中で比較するとスペインの平均賃金は標準的であるため、世界全体でみると、豊かな国のひとつといえるでしょう。

(2) スペインの主要産業

スペインの主要産業として、次の5つが挙げられます。

  • 観光業
  • 自動車産業
  • 農業・食品産業
  • 化学産業
  • 再生可能エネルギー

特に観光業は、スペイン経済において非常に重要な役割を果たしており、多くの雇用を生み出しています。

コスタ・デル・ソルやカナリア諸島などのリゾート地だけでなく、文化的なイベントや美術館、歴史的な建造物も観光産業の一部です。

自動車産業も主要産業の一つで、スペインは欧州の自動車製造拠点でもあります。自動車メーカーの工場も多く、部品の輸出も活発です。

農業・食品産業も盛んで、オリーブオイル・ワイン・ハムなど、世界的に有名なスペイン食品も多く存在します。農薬をはじめとする化学産業も発展しています。

近年では太陽光発電のような再生可能エネルギーへの投資も増えており、スペインは非常に幅広い産業に支えられている国といえるでしょう。

(3) スペイン人が持つ主な在留資格・就労ビザ

下表は、2024年6月の日本政府統計データによるスペイン人の在留資格・就労ビザの人数です。

在留資格人数
教授76
芸術11
宗教45
報道5
高度専門職合計48
経営・管理33
研究26
教育24
技術・人文知識・国際業務668
企業内転勤57
興行62
技能41
特定技能合計12
文化活動35
留学522
家族滞在225
特定活動310
永住者・定住者・配偶者等1,753
総数3,953

2025年2月現在、日本で働くスペイン人は多いとはいえません。最も多い就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」で、専門的な知識を活かし、通訳やマーケティング、貿易などの分野で活躍しています。

2. スペイン人を採用するメリット

スペイン人を採用するメリットとして、次の3つが挙げられます。

  • 共感力・コミュニケーション能力が高い
  • スペイン語圏の顧客獲得の機会を得られる
  • ミスを冷静に分析できる

(1) 共感力・コミュニケーション能力が高い

スペイン人は感情表現が豊かで、相手と積極的なコミュニケーションを好む社交的な人が多い傾向です。

顧客対応やチーム内のコミュニケーションに優れているだけでなく、職場の雰囲気を明るくするムードメーカーとして活躍する人も少なくありません。

相手の感情に寄り添いながら物事を進めるため、顧客との交渉やチームでの業務においても潤滑剤のような存在になり、プロジェクトの成功にも大きく貢献するでしょう。

(2) スペイン語圏の顧客獲得の機会を得られる

スペイン語は世界で5番目に話者が多く、世界で約5億人が話せる言語です。スペインだけでなく、中南米諸国でも広く使用されています。

自社のサービスや商品をスペイン語圏に展開したい企業にとって、ネイティブのスペイン語話者の雇用は大きなチャンスにつながります。

現地の商習慣や文化的背景を把握するうえでも、スペイン人社員の視点が役立つでしょう。

(3) ミスを冷静に分析できる

スペイン人は情熱的な一面がある一方で、失敗やトラブルが起こった際には冷静にミスを分析する傾向があります。

ミスの原因を探り、同じ問題が起きないよう対策を立案できる建設的な人材は、企業の成長に欠かせない重要な存在です。

ミスを厳しく糾弾する文化よりも「次に活かす」ための前向きなアプローチを重視する企業であれば、スペイン人社員の特性をより活かせるでしょう。

3. スペイン人を雇用する際の注意点|気を付けるべきポイント

スペイン人を雇用する際には、次の3点に注意や配慮をしましょう。

  • 仕事に対する価値観・企業文化の違いに配慮する
  • 日本の公的医療保険について説明する
  • 能力・成果を客観的に評価するよう注意する

(1) 仕事に対する価値観・企業文化の違いに配慮する

スペイン人は、人生を楽しむことを重視しており、仕事は人生の一部と考えてプライベートの時間を大切にする傾向があります。

残業を嫌い、ワークライフバランスを重視する考え方を持つ人も珍しくありません。

会社に貢献するような考えをする日本の企業文化とは異なり、スペイン人は「仕事は手段」と考える傾向にあります。

働き方についてトラブルにならないよう、日本人・スペイン人双方が尊重できるよう社内環境を整える必要があるでしょう。

また、スペイン人はスピーディな意思決定を好む点も、国民性のひとつです。

複数人に意思決定権がありなかなかプロジェクトが進まない、という日本の企業文化に違和感を覚えるスペイン人には、理解を求める必要もあるでしょう。

(2) 公的医療保険について説明が必要

スペインは、日本と同じく国民皆保険制度を導入しており、公的医療制度が充実しています。

納税者と家族の医療費は基本的に無料ですが、かかりつけ医の指定が必要です。

一方の日本では、健康保険証があれば基本的に3割負担で、どの病院でも診察・治療を受けられます。

日本特有の健康保険証の扱い方や、扶養家族としての登録、医療費の自己負担割合など、複雑に感じるスペイン人も少なくありません。

スペイン人社員やその家族が日本で安心して暮らせるよう、公的医療保険制度についても説明しましょう。

(3) 能力・成果を客観的に評価するよう注意する

スペイン人は自己主張が強く、自分の能力を高く評価する人が多い傾向にあります。能力や成果を評価する際には、主観的な判断を避け、客観的なデータや基準を用いるようにしましょう。

評価基準が曖昧である場合「なぜ評価されないのか」「基準が分からない」などの不満が生じやすくなります。

客観的な評価指標を用いると、従業員間の公平感を保てるため、モチベーションを高める施策としても役立ちます。

目標設定や評価制度を明確にし、定期的なフィードバックを行うように社内環境を整えましょう。

4. まとめ

本記事では、スペイン人を雇用するうえで知っておきたい平均賃金や在留資格などの基本情報と、国民性から見えるメリット・注意点を紹介しました。

スペイン語は世界で5番目に話者が多い言語です。スペイン語圏へのビジネス展開もしやすくなり、社交的な性格から顧客やチーム間のコミュニケーションも円滑に行えるでしょう。

一方で、採用後には企業文化の相違や、自己主張が強い・スピーディな意思決定を好むなどの特性に注意が必要です。

日本人・スペイン人がともに働きやすく、成長できる企業にするには、客観的な評価制度の導入や、相互理解を促す社内環境の整備が必要でしょう。

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