人材不足が深刻化する日本では、多様な人材を確保するために外国人労働者を雇用する企業が増えています。しかし、外国人の受け入れには、日本人雇用にはないサポートや受け入れ準備が必要です。
この記事では、外国人労働者の受け入れを検討している経営者・担当者に向け、2025年1月に厚生労働省から発表された最新データをもとに、外国人雇用状況を解説します。
1. 外国人雇用状況の最新統計データ(2025年1月公表)
厚生労働省が2025年1月に公表したデータによると、2024年10月時点で日本における外国人労働者数は230万人を突破し、過去最高を記録しました。
前年より12.4%も外国人労働者が増加したことになります。人手不足が深刻化する日本において、外国人労働者の重要性はますます高まっているといえるでしょう。
(1) 在留資格別の内訳・状況|特定技能が急増
在留資格別の内訳を見ると「専門的・技術的分野」の在留資格を持つ外国人労働者が71万8,812人(前年比20.6%増)と大幅に増加しています。
特に「技術・人文知識・国際業務」の資格保持者は41万1,261人(前年比12.3%増)と多く、高度人材の受け入れが進んでいるといえるでしょう。
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者に付与される「身分に基づく在留資格」は、所有者が62万9,117人(前年比2.1%増)となっています。
また「特定技能」の資格保持者は20万6,995人(前年比49.4%増)と急増。「技能実習」も47万725人(前年比14.1%増)と増加傾向にあります。
「資格外活動」も39万8,167人(前年比12.9%増)と増えており、新型コロナウイルスの入国制限緩和に伴い、留学生数が回復した影響と考えてよいでしょう。
在留資格 | 2024年10月 | 対前年増加率 | |
専門的・技術的分野の在留資格 | 718,812人 | 20.6% | |
うち技術・人文知識・国際業務 | 411,261人 | 12.3% | |
うち特定技能 | 206,995人 | 49.4% | |
特定活動 | 85,686人 | 19.5% | |
技能実習 | 470,725人 | 14.1% | |
資格外活動 | 398,167人 | 12.9% | |
うち留学 | 311,99人6 | 14.0% | |
身分に基づく在留資格(永住者・日本人配偶者・永住者配偶者・定住者) | 629,117人 | 2.1% | |
不明 | 80人 | 1.3% | |
外国人労働者総数 | 2,302,587人 | 12.4% |
(2) 国籍別の内訳・状況|多国籍化が進む
国籍別に見ると、ベトナム人労働者が57万708人(前年比10.1%増)で最多となっています。次いで中国が40万8,805人(前年比2.7%増)、フィリピンが24万5,565人(前年比8.3%増)と続きます。
特に注目すべきは、インドネシアとミャンマー国籍の労働者が急増している点です。これは特定技能や技能実習での受け入れ拡大の影響と考えられます。
国籍 | 2024年10月 | 対前年増加率 |
ベトナム | 570,708人 | 10.1% |
中国(香港、マカオを含む) | 408,805人 | 2.7% |
フィリピン | 245,565人 | 8.3% |
ネパール | 187,657人 | 28.9% |
インドネシア | 169,539人 | 39.5% |
ブラジル | 136,173人 | -0.7% |
ミャンマー | 114,618人 | 61.0% |
韓国 | 75,003人 | 5.0% |
タイ | 39,806人 | 8.9% |
スリランカ | 39,136人 | 33.7% |
ペルー | 31,574人 | 0.0% |
G7等 | 84,173人 | 0.3% |
その他 | 199,830人 | 12.6% |
外国人労働者総数 | 2,302,587人 | 12.4% |
2. 外国人労働者数の推移|全体・在留資格別
日本の労働力不足を補うための政策や、企業の多様化戦略の影響もあり、外国人労働者数は年々増加しています。
ここでは、過去5年間についての外国人労働者数の推移について、全体と在留資格別に紹介します。
(1) 全体の推移|前年より12%以上増加
過去5年間の外国人労働者数の推移を見ると、2020年〜2022年の新型コロナウイルスの影響による一時的な停滞を除き、着実に増加していることがわかります。
外国人労働者総数 | 前年比 | |
2020年 | 1,724,328人 | 4.0% |
2021年 | 1,727,221人 | 0.2% |
2022年 | 1,822,725人 | 5.5% |
2023年 | 2,048,675人 | 12.4% |
2024年10月 | 2,302,587人 | 12.4% |
2020年〜2024年10月までのおよそ5年間で約58万人も増加しており、日本の労働市場における外国人の存在感が急速に高まっているといえるでしょう。
(2) 在留資格別の推移|専門的・技術的分野も増加
在留資格別の推移を見ると、各資格によって増減に違いがあります。
特に注目すべきは「特定技能」の増加率で、制度開始から6年弱で20万人を超える規模に成長しました。
外国人労働者の主要な受け入れ枠組みである「技能実習」も、増加傾向です。
「専門的・技術的分野」である「技術・人文知識・国際業務」は一貫して増加傾向にあります。
即戦力となる在留資格を持つ外国人が増加傾向にあるのは、日本企業の国際競争力強化と、高度人材獲得の動きを反映しているといえるでしょう。
3. 地域別の外国人雇用状況|都市部だけでなく地方でも拡大
外国人労働者の地域別分布を見ると、依然として大都市圏に集中していますが、近年は地方での雇用も増加傾向です。
2024年10月時点のデータを見ると、依然として東京都(58万5,791人)、愛知県(22万9,627人)、大阪府(17万4,699人)が三大集積地となっています。
しかし、前年比の伸び率を見ると、長崎県(+28.1%)、北海道(+23.8%)、福井県(+22.5%)など、農業や製造業、造船業が盛んな地方での増加率も高水準です。
人手不足が特に深刻な地方では、外国人労働者への依存度が高まりつつあると考えてよいでしょう。
地域 | 外国人労働者数 | 全国シェア率 |
北海道 | 43,881人 | 1.91% |
東北 | 57,517人 | 2.5% |
関東 | 1,086,886人 | 47.2% |
北陸・甲信越 | 98,270人 | 4.3% |
中部 | 392,011人 | 17.0% |
近畿 | 316,280人 | 13.7% |
中国 | 97,368人 | 4.2% |
四国 | 40,723人 | 1.8% |
九州・沖縄 | 169,651人 | 7.4% |
合計 | 2,302,587人 | 100% |
4. 産業別の外国人雇用状況|医療・福祉分野の伸び率が顕著
産業別の外国人雇用状況を見ると「製造業」(59万8,314人、全体の26%)が最も多く、次いで「サービス業」(35万4,418人、全体の15.4%)、「卸売業・小売業」(29万8,348人、13.0%)となっています。
注目すべき点は、深刻な人手不足に直面している「医療・福祉」の分野の伸び率です。
前年より28.1%増の11万6,350人となっており、顕著な増加率は介護分野での積極的な受け入れが背景にあると考えてよいでしょう。
産業別 | 外国人労働者数 | 対前年増加率 | シェア率 |
建設業 | 177,902人 | 22.7% | 7.7% |
製造業 | 598,314人 | 8.3% | 26.0% |
情報通信業 | 90,546人 | 6.0% | 3.9% |
卸売業、小売業 | 298,348人 | 13.2% | 13.0% |
宿泊業、飲食サービス業 | 273,333人 | 16.9% | 11.9% |
教育、学習支援業 | 82,902人 | 3.6% | 3.6% |
医療、福祉 | 116,350人 | 28.1% | 5.1% |
サービス業(他に分類されないもの) | 354,418人 | 10.5% | 15.4% |
その他 | 310,474人 | 12.2% | 13.5% |
総数 | 2,302,587人 | 12.4% | 100.0% |
5. まとめ
今回は、厚生労働省が2025年1月に公表した外国人雇用状況の最新データについて、在留資格や国籍、産業別のデータや推移を紹介しました。
- 外国人労働者は過去最高の230万人超え
- 在留資格「特定技能」の急増
- ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、ネパールなど国籍が多様化
- 地方でも外国人雇用が拡大傾向
- 医療・福祉分野で高い増加率
少子高齢化による労働力人口の減少が続く中、外国人労働者は日本経済を支える重要な存在となっています。
今後も適切な受け入れ環境の整備と、共生社会の実現に向けた取り組みが求められるでしょう。