台湾は日本と地理的に近く、親日派の人も多く存在する国です。半導体分野の発展も目覚ましく、高度なスキル・知識を持つ台湾人材の採用を検討している企業も多いのではないでしょうか。
日本と親和性が高いものの、仕事観の違いによるトラブルには注意が必要です。
今回は、台湾人材を採用する前に知っておきたい基礎知識として、台湾の平均賃金や主要産業、在留資格などを紹介します。
台湾人を雇用するメリットや注意点も解説するので、外国人採用の候補として台湾人を検討しているなら、ぜひ参考にしてください。
1. 台湾の基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格
台湾は日本の南西に位置する、九州よりやや小さい国です。人口は約2,342万人(2024年1月時点)で、地理的に日本と近く、半導体産業の発展や高い技術力で注目を集めています。
ここでは、日本と経済的・文化的なつながりも深い台湾人材を採用する上で、知っておきたい基本情報として平均賃金や主要産業、在留資格を紹介します。
(1) 台湾の平均賃金
台湾の大手人材バンク「1111人力銀行」が発表したデータによると、2023年の台湾の平均月収は31,452台湾元(およそ148,000円)です。
日本の平均月収はおよそ380,000円であることを考えると、台湾の平均賃金は低めの水準といえます。
ただし、台湾の平均賃金は上昇傾向にあり、特に高収入の業種・職種では日本と同水準か、それ以上の月収を得ている人も珍しくありません。
例えば台湾で近年発展してきた「半導体業界」では、平均月収が80,000台湾元ほど(およそ375,000円)と、日本の平均月収に迫る勢いです。
(2) 台湾の主要産業
外務省のデータでは、台湾の主要産業として主に次の4つが挙げられています。
- 電子部品
- 化学品
- 鉄鋼金属
- 機械
台湾の主要産業といえば、半導体・電子部品の製造が有名です。
世界トップクラスのシェアを誇る企業が多く、IT分野におけるエンジニアや研究開発職が豊富に存在します。
製造業全般が活発であり、パソコンやスマートフォン、工作機械や産業用ロボットなどの分野においても、高い技術を有しています。
高度なスキルや知識を持つ台湾人材も多いといえるでしょう。
(3) 台湾人が持つ主な在留資格・就労ビザ
下表は、2024年6月の日本政府統計データによる台湾人の在留資格・就労ビザの人数です。
在留資格 | 人数 |
教授 | 206 |
芸術 | 18 |
宗教 | 100 |
報道 | 5 |
高度専門職合計 | 1,181 |
経営・管理 | 1,144 |
医療 | 159 |
研究 | 53 |
教育 | 54 |
技術・人文知識・国際業務 | 14,747 |
企業内転勤 | 937 |
介護 | 49 |
興行 | 41 |
技能 | 62 |
特定技能合計 | 258 |
技能実習合計 | 8 |
文化活動 | 113 |
留学 | 8,119 |
研修 | 9 |
家族滞在 | 3,028 |
特定活動 | 3,933 |
永住者・定住者・配偶者等 | 33,053 |
総数 | 67,277 |
日本で働く台湾人が所有する在留資格のうち、最も多いのは「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザです。
一方で、技能実習や特定技能の就労ビザで働く台湾人材は少ない傾向にあります。
台湾は半導体分野・機会産業分野が活発な国のため、専門的なスキルや知識を持つ即戦力が日本で働いていると判断できるでしょう。
2. 台湾人を採用するメリット
台湾人の採用が生むメリットとして、主に次の3点が挙げられます。
- 真面目で勤勉な人が多い
- 日本と親和性がある
- 日本語を習得している人も多い
(1) 真面目で勤勉な人が多い
台湾は、勤勉さを重視する文化が根付いています。教育熱心な家庭も多く、学歴や資格取得に熱意をもって取り組む人も少なくありません。
学ぶ姿勢は就職後も継続し、自己研鑽やスキルアップに意欲的な人が多い傾向にあります。日本語や専門技術をより磨こうと努力する台湾人が多い点は、台湾人材を採用する大きなメリットといえるでしょう。
自分に与えられた仕事を真面目にコツコツとこなすだけでなく、積極的に行動する人が多いのも、台湾人の特徴のひとつ。時には柔軟な判断で、プロジェクトを成功に導いてくれるでしょう。
(2) 日本と親和性がある
台湾は日本の統治時代の影響や、戦後における経済交流を通じて、日本文化への抵抗感が少ない国です。
公益財団法人日本台湾交流協会による2022年1月の調査によると、最も好きな国として「日本」と回答する台湾人が60%と最も多い結果となっています。
実際、日本に甚大な被害をもたらした東日本大震災では、台湾から多くの支援が寄せられました。
アニメやドラマ、音楽などの日本文化も浸透しており、日本人に対して親しみを持つ台湾人も多く存在します。
文化的なギャップが少ないため、日本の社会にも溶け込みやすいでしょう。
(3) 日本語を習得している人も多い
台湾は日本語学習者が非常に多い国です。外務省のデータによると、日本語を学習している台湾人は14万人以上と、世界でも8番目に多い水準となっています。
台湾の共通語は主に中国語と台湾語ですが、英語教育も盛んなため、英語でのコミュニケーションができる人材も珍しくありません。
中国語・日本語・英語でのコミュニケーションが可能な台湾人材は、海外進出への足掛かりとしても活躍できるでしょう。
3. 台湾人を雇用する際の注意点|気を付けるべきポイント
メリットの多い台湾人採用ですが、主に仕事観の違いには注意が必要です。
ここでは、特に注意が必要な3つのポイントを紹介します。
- 報連相の意識がない人が多い
- 範囲外の仕事を好まない傾向にある
- 転職に対するハードルが低い
(1) 報連相の意識がない人が多い
日本企業では「報告・連絡・相談」を徹底する文化が根付いています。
しかし、台湾では上司・チームメンバーに対して逐一報告する習慣がなく、進捗状況を把握しにくいケースがある点に注意が必要です。
自分の担当範囲を淡々とこなしたり、自発的に問題解決を図ったりする反面、プロセスの途中で共有を行わずに進めてしまう場合も少なくありません。
知らないうちにミスやトラブルが大きくなってしまうリスクがあるため、入社後の早い段階で「報連相」の重要性を伝える工夫が必要です。
具体的な手順や頻度をマニュアル化し、制度面でのサポートを行うとスムーズに定着しやすいでしょう。
(2) 範囲外の仕事を好まない傾向にある
台湾人は、自分に与えられた業務や責任範囲を明確に把握し、業務に集中する傾向が強いといわれています。
一方で、業務外の仕事に関しては興味が薄く、チームで仕事をする意識は薄い人も珍しくありません。
残業も好まないため、採用面接時や雇用契約を結ぶ際には、担当業務や期待する役割をできるだけ明確に伝える必要があります。
後から追加で仕事をお願いする場合は、依頼の意図と報酬面を明確に説明すると、受け入れられやすいでしょう。
(3) 転職に対するハードルが低い
台湾は日本ほど「終身雇用」や「年功序列」といった雇用慣行が強固ではありません。
より良い条件の職場が見つかれば積極的に転職する傾向が強く、キャリアアップやワークライフバランスの改善を目指す人が多いという特徴があります。
台湾人にとっては転職は一般的な選択肢であり「長く勤め続ける」という前提で採用すると、思わぬ人材流出につながる可能性があります。
長く働いてもらうために、評価制度やキャリアパスを明確に提示し、やりがいと報酬が見合った仕事環境を整えましょう。
台湾人に限らず、外国人材はグローバルな視野で条件を比較する傾向があります。外国人採用を検討しているなら、継続的にモチベーションを向上させる社内環境作りも必須です。
4. まとめ
本記事では、台湾人を採用する際に知っておきたい台湾の平均賃金や主要産業、在留資格を紹介しました。台湾は日本との文化的・地理的な距離が近く、日本語を学んでいる人材も多く存在します。
日本と親和性がある一方で、報連相への意識や仕事の範囲、転職に対する捉え方は日本とは異なるケースも少なくありません。
日本と台湾の違いを把握し、働きやすい環境を社内で整え、適切な待遇やキャリアアップの道筋を示すと、長く働いてもらいやすくなります。
台湾人は高度な知識・スキルを持ち、即戦力として活躍できる人材が多いため、積極的に採用すれば人材不足の悩みを解決に導けるでしょう。