深刻な人材不足を解消するために、外国人採用を検討している経営者・担当者も多いのではないでしょうか。
特に世界最大の経済大国であるアメリカ人材の雇用は、斬新なアイデアの創出や海外での事業展開にもつながるため、魅力的な選択肢のひとつです。
ただし、アメリカ人材の雇用を成功させるためには、メリットだけでなく注意点についても把握しておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、アメリカ人材を採用する前に知っておきたいアメリカの基本情報と雇用のメリット・注意点を紹介します。
1. アメリカの基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格
アメリカ合衆国は、北アメリカ大陸に位置する多民族国家であり、世界最大の経済大国です。
ここではアメリカの基本情報として、平均賃金や主要産業、アメリカ人が持つ主な在留資格・就労ビザについて紹介します。
(1) アメリカの平均賃金
アメリカは州ごとに経済状況や物価が異なりますが、一般的には大都市部や専門職の給与水準は高く、地方やサービス業の給与水準は比較的低い傾向にあります。
アメリカ労働統計局のデータによると、2023年第4四半期の全米平均年収は約59,384ドル(およそ920万円)、月収に換算すると約4,948ドル(およそ77万円)です。
しかし、最も平均賃金がやすいミシシッピ州では年間収入が48,048ドル(およそ750万円)と、平均よりも約170万円も低い水準であることがわかります。
一方のマサチューセッツ州では86,840ドル (およそ1,340万円)と、平均よりも420万円も高い数値です。
地域による賃金格差が大きい点は、アメリカの特徴といえるでしょう。
(2) アメリカの主要産業
アメリカでは多様な産業が発展していますが、次の5つは特に大きな発展を遂げている分野です。世界的にも技術やサービスのイノベーションを牽引する存在といえるでしょう。
- 自動車産業(自動車製造、部品製造、自動車販売など)
- テクノロジー産業(ソフトウェア開発、ハードウェア製造など)
- 医療産業(医療機器製造、医薬品開発など)
- 金融・保険業(銀行業、保険業、証券業 など)
- エネルギー業(石油・ガス採掘、再生可能エネルギー など)
多分野でトップクラスの企業が集結しているアメリカでは、専門的で多様性がある人材が豊富に存在します。
自社が進出を狙う分野と親和性の高いアメリカ人材を採用できれば、事業の拡大にも役立つでしょう。
(3) アメリカ人が持つ主な在留資格・就労ビザ|IT人材を含む即戦力が多い
下表は、2024年6月の日本政府統計データによる アメリカ人の在留資格・就労ビザの人数です。
在留資格 | 人数 |
教授 | 790 |
芸術 | 82 |
宗教 | 1,423 |
報道 | 21 |
高度専門職合計 | 880 |
経営・管理 | 620 |
法律・会計業務 | 52 |
医療 | 5 |
研究 | 55 |
教育 | 5,813 |
技術・人文知識・国際業務 | 8,506 |
企業内転勤 | 427 |
興行 | 459 |
技能 | 62 |
特定技能1号 | 13 |
文化活動 | 163 |
留学 | 4,734 |
研修 | 4 |
家族滞在 | 4,593 |
特定活動 | 262 |
永住者・定住者・配偶者等 | 35,878 |
総数 | 64,842 |
日本で働くアメリカ人のうち、最も多い就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」です。エンジニアやマーケティング、語学指導など、専門的な知識や技能を持つ人材が取得できる在留資格のため、IT人材も多く日本で活躍していることがわかります。
また、教育や高度専門職の就労ビザを所有している人もおり、多くのアメリカ人材が即戦力として働いているといえるでしょう。
2. アメリカ人を採用するメリット
アメリカ人を採用する代表的なメリットとして、次の3点が挙げられます。
- 多様な視点とアイデアによる創造性の向上
- 英語スキルの向上
- 国際的なネットワークの構築
(1) 多様な視点とアイデアによる創造性の向上
アメリカは、多種多様な人種や民族が集まる多民族国家です。日常的に異なる価値観や文化が混在する環境のため、多文化への柔軟性やユニークなアイデアを持ちあわせているアメリカ人材が多い傾向にあります。
自社にアメリカ人材が加わると、日本人のみの環境では得られなかった斬新なアイデアや提案が生まる効果が期待できます。新しい視点がビジネスに加わると、創造性が刺激されるのでイノベーションの創出にもつながるでしょう。
(2) 英語スキルの向上
アメリカ人を採用すると、英語のネイティブスピーカーが社内にいる状態となります。
日本人社員が日常的に英語でコミュニケーションを取る機会が増えるため、英語スキルの向上が期待できるでしょう。
国際会議や海外企業との交渉、海外進出を狙うプロジェクトなどでは、英語力が大きな武器になります。
アメリカ人材が存在すると社内の英語学習意欲も高めやすくなるので、事業展開の幅を広げられるでしょう。
(3) 国際的なネットワークの構築
アメリカ人材は、海外の企業や大学、研究機関など多岐にわたる人脈を持っている場合があります。
国際的な視点や海外とのパイプを活用できれば、新たなビジネスチャンスを得る機会を広げられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
また、海外展開を視野に入れる企業であれば、現地の情報収集やマーケット調査におけるハードルを大きく下げられます。
海外市場の動向やトレンドをいち早くキャッチできるため、ビジネスチャンスの拡大にもつながるでしょう。
3. アメリカ人を雇用する際の注意点|気を付けるべきポイント
アメリカ人採用には多くのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。文化や価値観の違いを理解しアメリカ人材と円滑に仕事をするためにも、次の3点に気をつけましょう。
- 文化・言語の違いによる誤解を防ぐ
- 労働条件や福利厚生などへの考え方の違いを把握する
- 個人主義的な考え方を理解する
(1) 文化・言語の違いによる誤解を防ぐ
アメリカと日本では文化や習慣、コミュニケーションスタイルに大きな違いがあるので注意が必要です。
例えば、日本では言葉を濁したり、婉曲的な表現が好まれる場面がありますが、アメリカでは明確な主張や意見表明が好まれる傾向があります。
仕事の進め方やビジネスマナー、コミュニケーションの取り方も異なるため、コミュニケーションの誤解やトラブルにつながるケースも珍しくありません。
相互理解を深めるための工夫や、コミュニケーション研修を実施して、円滑に仕事が進むよう社内環境を整備しましょう。
(2) 労働条件や福利厚生などへの考え方の違いを把握する
アメリカ人は、労働時間や休暇、福利厚生に対する考え方が日本人とは異なる場合があります。
成果主義の考え方が強く、労働時間よりも成果を重視する人が多い傾向です。
アメリカでは「ジョブ型雇用」が一般的であり、仕事内容と成果に応じて報酬や待遇が決まるケースが多いことも把握しておくべきポイントといえるでしょう。
また、有給休暇や福利厚生の利用について「権利」として捉える意識が日本人より強く、積極的に取得する傾向があります。
アメリカ人を雇用する際は、労働条件や福利厚生について、アメリカ人材の価値観や考え方に配慮しつつ、適切な条件を提示する必要があるでしょう。
(3) 個人主義的な考え方を理解する
アメリカ人は、個人主義的な考え方が日本人より強い傾向にあります。自分の意見や考えをはっきりと主張するため、チームワークを重視する日本の企業文化とは異なる点に注意が必要です。
価値観の違いを把握できなければ、アメリカ人は「自発的に行動しない理由がわからない」と感じ、日本人からは「アメリカ人は他の人の意見を尊重してくれない」と双方に不満が生まれます。
アメリカ人採用を成功させるためにも、個人主義とチームワークそれぞれの長所と短所を理解し、違いを活かせる環境を整備しましょう。
4. まとめ
今回は、アメリカ人を雇用する際に知っておくべきアメリカの平均賃金や主要産業、雇用時の注意点を紹介しました。
アメリカ人の採用はアイデアの創出や英語力の向上、国際的な人脈を得られるメリットがある一方で、文化的背景や労働観、コミュニケーションスタイルの違いに注意が必要です。
アメリカ人採用を成功させるためには、メリットと注意点を理解しつつ採用前に社内環境を整えておく必要があるでしょう。