モンゴル人採用の基礎知識

日本国内の人材不足を補うために、地理的に近いモンゴル人の採用を検討する企業も多いのではないでしょうか。

モンゴルは高い経済成長率を誇る国のひとつ。遊牧民族である背景からチームワークを重視する国民性のため、モンゴル人雇用が注目されはじめています。

しかし、モンゴル人に対して馴染みが薄い人も多いため、事前に国民性や価値観などを理解しておかないと、雇用後のトラブルにつながるので注意が必要です。

今回は、モンゴル人を雇用する際に必要な基礎知識や注意点を紹介します。

1. モンゴルの基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格

モンゴルは、広大な草原と遊牧文化が特徴的な国です。近年は経済成長も著しく、2023年には実質GDP成長率7.0%を記録しました。

ここでは、さまざまな産業分野で発展を遂げているモンゴルの基本情報として、平均賃金・主要産業・日本で働くモンゴル人の在留資格・就労ビザについて紹介します。

(1) モンゴルの平均賃金

国土交通省の公式データによると、モンゴルの平均賃金は日本と比較すると低い水準にあります。

モンゴル社会保険総局の2023年第4四半期社会保険料支払報告書によると、モンゴルの平均月収は223万5,400トゥグルグ(日本円でおよそ10万円)です。

2022年から27.7%も増加しており、モンゴルは現在大きく成長中であることがわかります。

ただし、都市部と地方、職種によって収入に差がある点に注意が必要です。

首都ウランバートルの平均月収が230万トゥグルグ(日本円でおよそ13万円)であるのに対し、国の平均よりも50万トゥグルグ以上(日本円でおよそ2.2万円)低い地域もあります。

モンゴルの経済発展の効果は、地方まで十分に広がっていない状況といえるでしょう。

(2) モンゴルの主要産業

モンゴルの主要産業は、伝統的な遊牧業に加え鉱業も急速に発展しています。

モンゴルは広大な草原地帯を有し、伝統的に農牧業が重要な産業です。石炭や銅、金など豊富な地下資源の開発も進められています。

近年、都市部ではサービス業やIT関連のベンチャー企業も増加。新たな雇用を生み出している状況です。

(3) モンゴル人が持つ主な在留資格・就労ビザ

下表は、2024年6月の日本政府統計データによるモンゴル人の在留資格・就労ビザの人数です。

在留資格人数
教授50
芸術8
宗教4
報道1
高度専門職合計83
経営・管理221
医療25
研究9
教育4
技術・人文知識・国際業務3,898
企業内転勤20
介護93
興行22
技能26
特定技能合計1,104
技能実習合計2,671
文化活動19
留学4,729
研修6
家族滞在4,240
特定活動541
永住者・定住者・配偶者等2,642
総数20,416

永住者・定住者・配偶者等および家族滞在を除けば、留学の在留資格を所有するモンゴル人が最も多く、就労ビザでは「技術・人文知識・国際業務」が最も多いことがわかります。

すでにITエンジニアや翻訳者、通訳などの専門的な知識やスキルを持つ多くのモンゴル人が、日本で即戦力として活躍しているといえるでしょう。

また、日本に技術を学びに来ている「技能実習生」も多い数値となっています。技能実習生を受け入れる企業側は、モンゴル人材が十分に学びながら働けるよう、受け入れ体制を整える必要があるでしょう。

2. モンゴル人の特徴|国民性・価値観・性格

モンゴル人採用を成功させるためには、国民性や価値観、性格を理解する必要があります。

文化や価値観の違いによるトラブルを避けるためにも、受け入れ前にモンゴル人の国民性や価値観を把握しておきましょう。

(1) 負けず嫌いだが気性は穏やか

モンゴル人は歴史的背景から「勇猛果敢」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

特にモンゴル相撲やレスリングなどをはじめとするスポーツ分野では、強い競争心を示す人も珍しくありません。しかし、日常生活ではおおらかで穏やかな気性を持つ人が多い傾向にあります。

競争意識と、一度決めた目標に向かって粘り強く努力する姿勢を両立できる人材も多く、安定感のある働きが期待できるでしょう。

(2) 時間や約束に対する意識が日本とは異なる

モンゴルでは、時間や約束に対する意識が日本とは異なる場合があります。

モンゴル人は本来、時間に縛られない遊牧民族であることや、厳しい自然のなかで生活してきた背景もあり、時間や約束通りに行動する意識が薄い人も少なくありません。

雇用する際には、時間管理やスケジュール通りに遂行する意識を、丁寧に伝える必要があるでしょう。

事前にスケジュールを周知したり、遅刻やドタキャン防止のためのリマインドをしたりする工夫もおすすめです。

(3) 協調性が高く助け合える

遊牧民族であるモンゴル人はお互いに協力しなければ生き残れなかった歴史的背景から、助け合いの精神が根付いています。

家族や仲間との共同作業をして生きていく性質を持っており、高い協調性はチームでの仕事にも向いているでしょう。

責任感も強いため、任せた仕事に対しても真摯に取り組んでくれる性質も強みです。

日本語を学ぶモンゴル人も多いため、チームで仕事をする際にも円滑にコミュニケーションを取りながら進められるでしょう。

3. モンゴル人を雇用する際の注意点

モンゴル人を雇用する際には、文化や習慣の違いを理解し、適切な配慮をすることが重要です。以下、特に注意すべき点を解説します

(1) 文化・価値観の違いに配慮する

モンゴルは広大な草原地帯を背景とした遊牧文化が根強く、家族や仲間同士の絆を非常に大切にする風土があります。

家庭の事情や行事を重視するため、柔軟な働き方を提案したほうが優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。

一方で、時間や約束に対する感覚や自己主張の強さなど、日本人と異なる点にも注意が必要です。

特に自分の意見をはっきりと主張する姿勢は、誤解によるトラブルを招く可能性があります。ビジネスシーンでのコミュニケーションにも配慮するようにしましょう。

(2) 雇用時期を考慮する

日本では4月を年度の始まりとする企業が一般的ですが、モンゴルは9月が年度のスタートとなるため、大学などの卒業時期も日本とずれが生じる点に注意が必要です。

たとえば、モンゴル人の学生が母国の大学を卒業してから日本で就職を考える場合、日本の企業が求める4月入社に間に合わない場合もあるでしょう。

現地の学年暦にあわせると、ちょうど企業の採用活動が終盤に差しかかったタイミングでようやく卒業・渡航準備が整う、という事態になるケースも考えられます。

年度の違いは新卒採用だけでなく、技能実習や特定技能の在留資格にも影響を及ぼすため注意が必要です。

日本の一般的な4月入社にこだわりすぎず、9月以降に入社枠を用意したり、入社後の研修開始時期を調整したりなどの工夫を検討しましょう。

(3) 適切な目標を設ける

モンゴル人は、目標に向かって努力する意欲が高い傾向にあります。

しかし、目標が曖昧だったり、達成不可能な目標を設定したりすると、モチベーションを下げてしまう可能性があるので注意が必要です。

また、時間や約束を守る重要度も日本人とは異なるため、スケジュールを含めて明確な目標を伝えるとよいでしょう。

モンゴル人材の多くは、メンバーと協力し業務を成功に導ける性質を持っています。

本人のモチベーションを維持するためにも、具体的で達成可能な目標を設定し、定期的に進捗を確認するようなサポートをしましょう。

具体的で達成可能な目標を設定し、定期的に進捗を確認することが重要です。

4. まとめ

今回は、モンゴル人採用の基礎知識として、モンゴルの平均賃金や主要産業、国民性、雇用時の注意点を解説しました。

モンゴル人は、負けず嫌いでありながら穏やかで、チームワークを重視する国民性から、日本企業にとって有望な人材となる可能性を秘めています。

一方で、遊牧民族ならではの特性から、時間や約束を守る意識が低い点に注意が必要です。

モンゴル人採用を成功させるためにも、モンゴル人・日本人ともに文化や習慣の違いを理解し合い、強みを活かせるような職場環境を整えましょう。

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