人材不足問題を解決するために、中国人の採用を検討している企業・経営者も多いのではないでしょうか。
中国は地理的に近く、若く優秀な人材も多い一方、言語や仕事観の違いなど、雇用時には注意が必要です。
本記事では、中国人雇用を検討する上で知っておくべき基本情報、採用のメリットや注意点を解説します。
1. 中国の基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格
日本では現在、すでに多くの中国人が日本で活躍しています。
2023年10月末時点の厚生労働省の公表データによると、日本で働く中国人は外国人労働者全体のおよそ2割弱と、ベトナムに次いで2番目に多い数値です。
ここでは、中国人材を採用する際に知っておきたい基礎知識として「中国の平均賃金」「主要産業」「主な在留資格・就労ビザ」を紹介します。
(1) 中国の平均賃金
中国の求人サイト「智聯招聘」が公表した「2023中国女性職場現状調査報告」によると、中国の平均賃金は女性で8,689元、男性で9,942元となっています。
日本円に換算すると、女性は19万円、男性は21万円程度が平均月収となります。
ただし、中国の平均賃金は都市により開きがある点に注意が必要です。
国土交通省の公表データによると、北京では一般職の基本給が19万円程度であるのに対し、成都では12万円程度と月収でおよそ7万円の違いがあります。
中国の平均賃金はアジアの国々のなかでは高水準ですが、現時点では日本よりも低い状況といえるでしょう。
(2) 中国の主要産業
中国の主要産業は多岐にわたりますが、近年特に成長が著しいのは以下の分野です。
- 製造業:電子機器、自動車、機械製品など
- IT産業:AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなど
- サービス業:観光、金融、教育、医療など
中国は長らく「世界の工場」として、製造業をはじめとする第二次産業を中心に発展してきた国です。
しかし2012年以降は第三次産業が主要産業の中心となり、近年では情報通信・情報技術が大きな伸び率を示しています。
(3) 中国人が持つ主な在留資格・就労ビザ
下表は、2024年6月の日本政府統計データによる中国人が持つ在留資格・就労ビザと人数です。
在留資格 | 人数 |
教授 | 1,710 |
芸術 | 146 |
宗教 | 131 |
報道 | 39 |
高度専門職合計 | 17,912 |
経営・管理 | 20,551 |
法律・会計業務 | 38 |
医療 | 1,727 |
研究 | 271 |
教育 | 85 |
技術・人文知識・国際業務 | 99,659 |
企業内転勤 | 5,091 |
介護 | 918 |
興行 | 106 |
技能 | 14,087 |
特定技能合計 | 15,696 |
技能実習合計 | 26,780 |
文化活動 | 1,017 |
留学 | 134,239 |
研修 | 81 |
家族滞在 | 79,214 |
特定活動 | 10,596 |
永住者・定住者・配偶者等 | 414,093 |
総数 | 844,187 |
日本で働く中国人の多くが「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを所有しています。即戦力として日本で活躍している中国人が多いといえるでしょう。
一方で、技能実習の就労ビザで働く中国人は割合的には少ない数値となっています。ただし、人数として考えると2.6万人以上という数値は決して少ないとはいえないでしょう。
2. 中国人を採用するメリット
少子高齢化による人手不足が深刻化する日本において、中国人材の採用は企業の新たな活路を切り開くためにも有効な解決策です。
ここでは、中国人を採用する具体的なメリットとして、次の2点を紹介します。
- 中国市場への事業拡大を目指せる
- 若く優秀な労働力を得られる
(1) 中国市場への事業拡大を目指せる
中国は世界第2位の経済大国であり、巨大な市場を有しています。中国人の雇用により、中国市場に関する知識やネットワークを有効活用できれば、事業拡大の足掛かりとなるでしょう。
中国語での情報発信、中国市場向けの製品開発、中国企業との連携など、中国人ならではの視点やスキルを活かした戦略も展開しやすくなります。
また、中国のビジネス習慣や文化を理解した人材の存在は、現地での交渉やコミュニケーションを円滑に進めるための大きな助けとなるでしょう。
(2) 若く優秀な労働力を得られる
中国では大学進学率が上昇しており、高度な専門知識やスキルを持った若い人材が多く存在します。日本語学習者の多い国でもあるため、言語面での違和感を最小限に抑えて即戦力として活躍する人材を採用しやすいでしょう。
また、中国人はキャリアアップに対しても積極的で、新しい技術や知識を学ぶ姿勢が旺盛な傾向があります。
意欲ある姿勢と日本人とは異なる視点は組織内に新たな刺激を与えるため、イノベーションの創出や業務効率の向上にもつながるでしょう。
3. 中国人を雇用する際の注意点|気を付けるべきポイント
中国人を雇用する際には、文化や言語、法律面などで日本国内とは異なる部分があるため、注意が必要です。
ここでは中国人を雇用する際の注意点として、3つの気を付けるべきポイントを紹介します。
(1) 言語や文化の違いに対して配慮する
中国語と日本語は同じ漢字でも意味が大きく変わる場合があります。また、中国人は意見をはっきり口にする傾向がある一方で、日本では遠慮や察しの文化が根強いため、文化の違いがトラブルの一因となるケースも珍しくありません。
相互理解を深めるにも、採用担当者やチームメンバーは中国の文化や習慣について理解を深め、丁寧にコミュニケーションを取る必要があります。
必要に応じて通訳や翻訳ツールを活用したり、研修プログラムを実施したりするなど、多文化共生に向けた取り組みも検討しましょう。
(2) 雇用契約書は中国語版も用意する
中国人に限らず、外国人との雇用契約では契約内容を正確に伝える工夫が必要です。
日本語だけの契約書では、法律用語や賃金体系、労働時間などをよく理解していないまま署名してしまうリスクがあります。
後から「聞いていなかった」というトラブルを避けるためにも、中国語版の契約書を準備しましょう。書面だけでなく口頭でも契約内容を説明し、不明点についてはその場で説明するようにすると、誤解を生みにくくなります。
特に職務範囲や休暇制度など、働くうえで欠かせない情報については、お互いが納得するまで話し合いましょう。
(3) 仕事に対する考え方の違いを理解する
日本と中国では、仕事やキャリアに対する考え方が異なる場合があります。
特に中国では「成果」を重視する傾向があり、成果に影響がない場合には多少の形式や見た目の悪さは気にしない人も珍しくありません。
「キャリアアップできるか」を指標に働く人も多いため、中国人材に合ったキャリアパスや研修制度を整え、双方にとって納得感のある働き方を模索する必要があるでしょう。
また、日本人と比較すると個人主義的な考え方が強く、チームで仕事をすることに慣れていない可能性があります。報告や相談がないまま仕事を進めてしまう人も多いため、報告の必要性やタイミングを事前に説明しておく必要があるでしょう。
日本人よりもプライベートを重視する人が多い点も、配慮すべきポイントのひとつです。定時で帰宅したいという中国人材の希望を蔑ろにすると、モチベーションの低下につながる可能性があります。
日本の風土を押し付けるのではなく、多様性を重視して中国人材の強みを活かせるよう、柔軟な対応が求められるでしょう。
4. まとめ
今回は中国人の雇用について、中国の平均賃金や主要産業などの基本情報から、中国人を採用するメリット、雇用時の注意点を解説しました。
中国人の採用は日本の人材不足を解消するだけでなく、企業のグローバル化や事業拡大にも大きく貢献する可能性を秘めています。一方で、言語や文化の違いや仕事観の違いを考慮しないまま採用すると、トラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
中国人材と長期的に協力しあえるよう、採用前には中国人の価値観や風土に対して理解を深め、受け入れ体制を整えましょう。