外国人雇用を考える上で欠かせないのがミャンマー人雇用です。現在、ミャンマーで働く日本人が増えており、受け入れ体制を整えている企業も増えています。本記事ではミャンマー人雇用について、メリットや注意点、具体的な雇用の流れを紹介します。ミャンマー人雇用を成功させるためにも、参考にしてください。
1. ミャンマー人について
ミャンマー人について、以下の観点から解説します。
- 日本で働くミャンマー人が増えている
- ミャンマーの主要産業
- ミャンマー人の特徴
(1) 日本で働くミャンマー人が増えている
現在、日本で働くミャンマー人が増えています。
令和5年10月末時点で日本で働く外国人労働者の数は2,048,675人です。その中でミャンマー人は71,188人で8位、対前年増加率では49.9%で2位にランクインしています。
※参考:厚生労働省
日本で働くミャンマー人が増えている理由は主に経済面です。
日本の平均賃金が31万8,300円(2023年)※であるのに対して、ミャンマーの平均賃金は3〜4万円と、非常に低いことがわかります。
※参考:厚生労働省
また、2021年に起きたクーデターも影響しています。
クーデターの影響で市民の生活が圧迫されたり、外国資本企業の撤退が起こったり、ミャンマー人は国内での就労に希望を持てる状況ではありません。
このような理由から日本に出稼ぎにくるミャンマー人が増えています。
(2) ミャンマーの主要産業
ミャンマーの主要産業は、以下の通りです。
- 農業
- 天然ガス
- 製造業
ミャンマー人の多くが農村部に住んでおり、農業を基盤に生計を維持しています。
また、天然ガスをはじめとする原材料が豊富である点や製造業に強い点が経済的特徴です。
併せてミャンマー人に人気の職種も紹介します。
- 食品加工
- 製造業
- 介護
- 外食(特定技能)
- 宿泊(特定技能)
※参考:MYANMAR UNITY
主要産業と関係のある職種だけでなく、幅広い職種で活躍が期待できます。
(3) ミャンマー人の特徴
ミャンマー人のほとんどは仏教徒なので、性格や国民性にも仏教の考えが現れます。
ミャンマー人の特徴は以下の通りです。
- 家族や友人を大切にする
- 挨拶の習慣が無い
- 目上の人を敬う
- 控え目
日本人とは異なる部分もあるため、ミャンマー人の採用を考える場合は、相手の文化を理解するように努めましょう。
2. ミャンマー人雇用のメリット
ミャンマー人雇用のメリットを紹介します。
- 日本との親和性が高い
- 日本語習得が早い
- 働く意欲が高い
- 介護職での人材確保が見込める
(1) 日本との親和性が高い
ミャンマーと日本は親和性が高いと言われています。
親和性が高いと言われる主な理由は以下の3つです。
- 温厚で控えめな性格
- チームワーク重視
- 目上の人を敬う
ミャンマー人は温厚で控えめな性格の人が多く、怒ることがほとんどないため、トラブルが起きにくいと言えます。また、チームで働くことを好むため、仲間とすぐに馴染み、力を発揮してくれます。さらに、仏教徒であることから、目上の人を敬う文化が馴染んでいるので、上下関係の構築も容易です。
このような理由からミャンマーと日本は親和性が高く、採用後も力を発揮してくれるでしょう。
(2) 日本語の習得が早い
ミャンマー語の文法が日本と同じSOV型であるため、ミャンマー人は日本語の習得が早いと言われています。日本語が50音であるのに対し、ミャンマー語は280音あり、ミャンマー語と同じ発音の音を拾うことで、効率よく日本語を学んでくれます。
また、勤勉な人も多いこともあり、他国の人材よりも素早く日本語を習得してくれます。
外国人雇用の大きな課題である言語の壁を解決しやすいのは、大きなメリットと言えるでしょう。
(3) 働く意欲が高い
ミャンマー人は働く意欲が高いことで有名です。
「努力は報われる」という仏教の考えが根底にあるため、真面目さや時間厳守が評価される日本と相性が良いのです。また、先ほども紹介したように、ミャンマーは不安定な情勢が続いています。母国にいる家族をささえるために出稼ぎに来ているミャンマー人も多く、お金を稼ぐモチベーションがあります。
よく働くミャンマー人を採用することは、社内のモチベーションアップにつながるでしょう。
(4) 介護職での人材確保が見込める
「目上の人を敬う」「他人のために働くことで徳を積める」という仏教の考えから、介護職を希望するミャンマー人が沢山います。ミャンマー人にとって介護職は、人を助けながらお金を稼げる職種です。人手不足が進んでいる介護職において、ミャンマー人雇用は救いの手となるかもしれません。
3. ミャンマー人雇用の注意点
ミャンマー人雇用にはいくつか注意点もあります。
- ミャンマー政府から認定を受けた送出機関の利用が必要
- スマートカードが必要
- 国民性や文化の理解が必要
(1) ミャンマー政府から認定を受けた送出機関の利用が必要
特定技能でミャンマー人を雇用する場合、受入企業はミャンマー政府から認定を受けた送出機関の利用が必要です。送出機関に求人をお願いする場合、受入機関は求人票を送出機関に渡し、MOLIP(ミャンマー労働・入国管理・人口省)に提出してもらいます。MOLIPから許可・承認を受ければ準備完了です。
認定送出機関は以下より確認できます。
(2) スマートカードが必要
現地のミャンマー人を雇用するにはスマートカードが必要です。
スマートカードとは、海外労働許可証(OWIC)のことを指し、ミャンマー人が特定技能で働くために必要な許可証です。
スマートカードの発行はミャンマー人本人がMOLIPに申請します。
発行には数週間から数ヵ月かかるため、雇用日から逆算して、準備してもらうことが重要です。また、スマートカードの有効期限は5年で、5年ごとに更新が必要なので忘れないようにしましょう。
(3) 国民性や文化の理解が必要
日本とミャンマーには国民性や文化の違いがあります。
特に気をつけたいのは「注意」と「挨拶」です。
まず、ミャンマーでは他人に怒ったり他人から怒られたりする文化がありません。
叱るのは両親、教師、僧侶の役目です。いきなり人前で注意してしまうと、叱られたと勘違いして、驚いたりショックを受けたりしてしまう可能性があります。優しい口調で注意を行ったり、叱るのではなく解決策を提示したりして、対策しましょう。
また、挨拶についても注意が必要です。
ミャンマーには挨拶をする文化がありません。挨拶が無かったり、挨拶を返されなかったからと言って態度が悪いわけでは無いのです。日本での挨拶のマナーを教えたり、社内でミャンマーの文化を共有したりして、お互いが不快な気持ちにならないようにしましょう。
4. ミャンマー人雇用の流れ
ミャンマー人雇用の流れを現地のミャンマー人を雇用する流れと日本にいるミャンマー人を雇用する流れに分けて解説します。
(1) 現地のミャンマー人を雇用する流れ
現地のミャンマー人を特定技能で雇用する流れは以下の通りです。
- 受入企業は送出機関を通じて求人票の許可・承認を得る
- 受入企業は求人を出す
- 受入企業はミャンマー人と雇用契約を結ぶ
- 受入企業は在留資格認定証明書の交付申請を行う
- ミャンマー人本人が海外労働許可証(OWIC)の申請を行う
- ミャンマー人本人が査証発給申請を行う
- 入国
- 就労開始
(2) 日本にいるミャンマー人を雇用する流れ
日本にいるミャンマー人を特定技能で雇用する流れは以下の通りです。
- 受入企業は求人を出す
- 受入企業はミャンマー人と雇用契約を結ぶ
- ミャンマー人本人がパスポートの申請(更新)を行う
- 受入企業は在留資格変更許可申請を行う
- 就労開始