インドネシア人採用の基礎知識

インドネシアは、世界第4位の人口を誇る東南アジアの島国です。日本語学習も盛んに行われており、今や日本にとってインドネシア人材は人手不足を補うための貴重な人材となっています。

しかし、インドネシアと日本では風土や習慣が異なるため、雇用時には注意が必要です。

今回は、インドネシア人を採用する基礎知識として、インドネシアの平均賃金や主要産業、雇用時の注意点を紹介します。

1. インドネシア主要産業と平均賃金

インドネシアは赤道付近にある東南アジアの島国です。人口は2.79億人を超えており、世界第4位の多さとなっています。

民族もおよそ1,300と多く、多様な文化や価値観を尊重する国民性が魅力です。

また、経済発展も著しく、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年・2021年を除くと、5%前後の高い成長率を維持しています。

ここでは、インドネシアの主要産業や平均賃金、日本で働くインドネシア人が持つ在留資格・就労ビザについて紹介します。

(1) インドネシアの主要産業

インドネシアの経済を支える主要産業は、以下の通りです。

  • 製造業:輸送機器(二輪車など)、飲食品など
  • 卸売・小売業
  • 農林水産業:パーム油、ゴム、米、ココア、キャッサバ、コーヒー豆など
  • 鉱業:LNG、石炭、錫、石油など
  • 建設業

国土交通省が公表している2021年に置ける名目GDP構成比を見ると、上記5種の産業が全体のおよそ65%を占めています。

製造業だけでなく鉱業も比較的盛んで、主要貿易品目として鉱物性燃料が動物・植物性油脂等とならんで最も多い比率です。

豊富な資源は、インドネシアを支える重要な産業のひとつといえるでしょう。

(2) インドネシアにおける平均賃金・月収

インドネシアの平均賃金は、地域や職種、経験、性別により大きく異なります。都市部と地方部では賃金格差があり、特に首都ジャカルタのような大都市では、平均賃金が高くなる傾向があります。

2024年8月のインドネシア政府のデータを見ると、インドネシアの平均賃金は3,267,618ルピア(約31,000円)です。

首都ジャカルタの平均賃金は5,806,940ルピア(約56,000円)と、平均よりも高い水準となっています。

そのうち管理職・経営陣は14,329,826ルピア(約138,000円)、技術・専門職は8,551,507ルピア (約82,000円)と特に高収入です。

一方で、スマトラ島北端に位置するアチェ地方では、管理職でも平均賃金が3,598,366ルピア(約35,000円)と低い水準となっています。

さらにサービス業や肉体労働者の平均月収は2,000,000ルピア(約19,000円)前後と、非常に低い水準です。

またインドネシアでは学歴によっても平均賃金に大きな開きがあり、教育による格差が著しい国といえるでしょう。

(3) 主な在留資格|介護人材・IT人材としても活躍

下表は、2024年6月の日本政府統計データによるインドネシア人が持つ在留資格・就労ビザと人数です。

在留資格人数
教授219
芸術8
宗教80
報道3
高度専門職合計216
経営・管理55
医療178
研究65
教育18
技術・人文知識・国際業務7,688
企業内転勤797
介護1,267
興行15
技能272
特定技能合計44,305
技能実習合計87,090
文化活動43
留学7,203
研修104
家族滞在5,400
特定活動5,182
永住者・定住者・配偶者等13,605
総数173,813

日本で働くインドネシア人のおよそ半数の在留資格が「技能実習」です。1号・2号・3号のすべてで、監理団体が技能実習生を受け入れる方式の就労ビザで働いています。

次に多いのは「特定技能」で、その9割以上が介護分野で働ける「特定技能1号」の在留資格です。インドネシアでは介護人材の育成に力を入れており、日本語能力が高い人が多いという特徴があります。

技能実習や特定技能を持つインドネシア人が目立ちますが、技術・人文知識・国際業務の就労ビザで働くインドネシア人も7,600人以上と多く存在します。

ITエンジニアや翻訳者など、専門的な知識やスキルを持つインドネシア人材も珍しくありません。特に若年層では優秀なIT人材が増えている傾向です。

インドネシアは異なる文化や思想を受け入れる寛容性と、日本語を習得した勤勉な性格を兼ね備えた人材が多く、コミュニケーション能力の高さも魅力のひとつ。

インドネシア人材は多くの分野で活躍できるでしょう。

2. インドネシア人材を雇用する際の注意点

インドネシア人材を雇用する際には次の4点に注意すると、トラブルを回避し、円滑な雇用関係を築けるでしょう。

  • 就労可能な在留資格を所有しているか確認する
  • 「IPKOL」「SISKOTKLN」へ登録しておく
  • 宗教的な慣習・風習に配慮する
  • 雇用契約書はインドネシア語でも作成する

(1) 就労可能な在留資格を所有しているか確認する

採用する前は、雇用を検討しているインドネシア人が、日本で就労可能な在留資格を所有しているか必ず確認しましょう。

就労可能な在留資格がない場合は「不法就労」となり、企業も罰せられる可能性があります。

在留資格の確認は、パスポートや在留カードでも行えますが、偽造されている可能性を考慮して出入国在留管理局へも問い合わせましょう。

(2)「IPKOL」「SISKOTKLN」へ登録しておく

インドネシア人を雇用するなら、トラブル回避のためにも「IPKOL(インドネシア人材登録システム)」と「SISKOTKLN(海外労働者情報システム)」へ登録しましょう。

IPKOLは、インドネシア政府が提供する労働市場情報システム。登録しておくと、インドネシア政府が把握しているインドネシア人の求職者情報から、希望にあった優秀な人材を紹介してくれます。

インドネシア語と日本語に対応できるスタッフによる仲介が可能な点が大きなメリットです。登録を強制されているものではありませんが、ミスマッチを防ぎやすくなるので、トラブル回避のためにも登録しておきましょう。

SISKOTKLNは、インドネシア政府が運営している海外労働者管理システムです。

インドネシア国外で働くインドネシア人材がトラブルに巻き込まれた際に円滑に保護できるよう、インドネシア政府が登録を求めています。

労働者と雇用主間でトラブルが発生した場合、解決するためにインドネシア政府が仲介に入ってくれる点も、大きなメリットです。

インドネシア政府と連携し円滑に雇用できるシステムなので、インドネシア人材の採用を検討しているなら登録をおすすめします。

(3) 宗教的な慣習・風習に配慮する

インドネシアはイスラム教徒が86%以上を占める国です。採用後のトラブルを防ぐためにも、次のような宗教的な慣習・風習に配慮する必要があります。

食事ハラール(イスラム教の戒律に沿った食事)に対応した食事を用意するか、従業員自身がハラール食品を持ち込めるように配慮が必要。豚肉・アルコールは口にしない。
礼拝1日に数回、礼拝の時間がある。礼拝ができるスペースの確保・休憩時間の配慮が必要
服装肌の露出を控えた服装が求められる場合がある
断食ラマダン(断食月)中は、日中の飲食ができない。
労働時間や休憩時間の調整が必要。
不快感を与える行動左手での物の受け渡し頭を撫でる足の裏が相手に見えるように足を組む人前で叱責する

日本では何気ない行動でも、インドネシア人にとっては軽蔑されたと感じ、深い恨みを買う可能性もあります。

誤解によるトラブルを避けるためにも、配慮は欠かさないように注意しましょう。

(4) 雇用契約書はインドネシア語でも作成する

雇用契約書は、日本語だけでなくインドネシア語でも作成しましょう。

日本語で書かれた雇用契約書は、インドネシア人にとっては理解が難しい可能性があります。

インドネシア人が契約内容を正確に理解できていない場合、雇用後にトラブルへ発展するリスクがあるので注意が必要です。

契約内容に誤解が生じないよう、書面だけでなく口頭でもやさしい日本語でわかりやすく説明する時間も設けましょう。

3. まとめ

本記事では、インドネシア人採用に関する基本情報や雇用時の注意点を解説しました。

インドネシアは多民族国家のため、異文化に対して寛容な人が多い傾向にあります。勤勉で日本語の習得にも積極的な人材が多いため、人手不足に悩む企業にとってインドネシア人採用は有力な選択肢となるでしょう。

ただし、雇用する際には在留資格の確認や宗教的な慣習への配慮などの注意点があります。トラブル回避のためにも、インドネシア政府が提供している「IPKOL」「SISKOTKLN」へ登録しておきましょう。

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