マレーシア人採用の基礎知識

2024年6月の日本政府の統計データを見ると、日本では即戦力として働くマレーシア人が多く存在していることがわかります。

マレーシアは多民族国家のため、異なる文化に対して寛容で、マレー語以外にも英語や中国語を話せる人も珍しくありません。

本記事では、マレーシア人の雇用について、マレーシアの平均賃金・主要産業、日本での在留資格などの基本情報や国民性、雇用時の注意点を解説します。

1. マレーシアの基本情報|平均賃金・主要産業・在留資格

マレーシアは、東南アジアに位置する多民族国家であり、多様な文化が共存する魅力的な国です。

ここではマレーシア人を採用する上での基本情報として、平均賃金や主要産業、マレーシア人が持つ在留資格を紹介します。

(1) マレーシアの平均賃金

マレーシアの平均賃金は、都市部と地方、職種や経験によって大きく異なります。

マレーシア統計局が公表している2024年6月の賃金データを見ると、マレーシア全国の平均月収は約2,745リンギット(約95,000円)です。

同時期のクアラルンプールでは約3,982リンギット(約138,000円)、クランタンでは約1,645リンギット(約57,000円)が平均月収となっており、都市部と地方で大きな開きがあります。

また、職種・業種によっても平均賃金は異なり、鉱業・採石業では約5,900リンギット(約205,000円)と高いものの、農業分野では約2,000リンギット(約69,000円)程度と低水準です。

民族によっても平均賃金の開きがあり、中国系正規雇用者の平均月収は約4,200リンギット(約146,000円)と特に高い水準となっています。

(2) マレーシアの主要産業

マレーシアの経済は、多様な産業によって支えられています。主な主要産業は、次の4種類です。

  • サービス業:卸売・小売業、情報通信事業、金融・保険業など
  • 製造業:電気・電子機器、自動車部品、ゴム製品など
  • 農林業天然ゴム・パーム油・木材・ココナッツなど
  • 鉱業:錫・原油・液化天然ガス(LNG)など

マレーシアはイスラム金融を牽引する主要国のため、金融・保険業をはじめとするサービス業が主要産業のひとつです。

また、電気・電子機器をはじめとする製造業や原油・LNGなど鉱業は輸出も盛んで、マレーシアの経済を支える重要な役割を担っています。

(3) マレーシア人が持つ主な在留資格・就労ビザ

下表は、2024年6月の日本政府統計データによるマレーシア人が持つ在留資格・就労ビザと人数です。

在留資格人数
教授106
芸術2
宗教24
報道0
高度専門職合計176
経営・管理88
法律・会計業務1
医療5
研究39
教育33
技術・人文知識・国際業務2,712
企業内転勤211
介護4
興行5
技能60
特定技能1号40
技能実習合計54
文化活動29
留学2,733
研修14
家族滞在1,042
特定活動94
永住者・定住者・配偶者等4,304
総数11,776

永住者や定住者、その配偶者などを除けば、日本に「留学」で滞在しているマレーシア人が、就労ビザでは「技術・人文知識・国際業務」が最も多いことがわかります。

マレーシアでは近年、IT産業が急速に発展しており、ITエンジニアの需要も高まっています。

高度専門職の就労ビザを持つ人も多い一方で、特定技能や技能実習の在留資格を持つマレーシア人は少ない傾向です。

日本で働くマレーシア人の多くは、即戦力として活躍しているといえるでしょう。

2. マレーシア人の特徴|国民性・価値観・性格

マレーシア人を雇用するなら、国民性や価値観、性格を理解する必要があります。

トラブルを回避するためにも、マレーシア人の特徴を把握しておきましょう。

(1) 多民族国家で異文化に寛容な国民性

マレーシアは、マレー系・中国系・インド系など、さまざまな民族が共存する多民族国家です。

異なる文化や宗教を持つ人々が共に生活しているため、他人の習慣や価値観を尊重する姿勢が自然に身についています。

マレーシア人が持つ寛容性は、多様なバックグラウンドを持つ人々が協力し合い、円滑にコミュニケーションをとるために役立つでしょう。

(2) 人懐っこいがシャイな一面も

マレーシア人は、一般的に人懐っこく、親切で友好的な性格の持ち主が多い傾向にあります。初対面の人に対しても笑顔で接することが多く、打ち解けやすいと感じる人も多いでしょう。

一方で、シャイな一面も持ち合わせており、初対面や目上の人の前では、少し遠慮がちな態度を見せる人もいます。

人前で意見を述べたり、自己主張したりすることを苦手とする人もいるため、積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていく必要があるでしょう。

(3) 階級意識が根強く残っている

マレーシア人は、経済格差やマレー系住民を優遇する「ブミプトラ政策」、イギリス植民地時代の官僚制度の影響の影響を受け、階級意識が強い一面もあります。

上下関係を重視する人も多いため、自分よりも役職が低い相手との交渉には向かない場合もあるでしょう。

一方で上司や先輩に対しては敬意を払い、指示に従順に従う傾向があります。

マレーシア人の階級意識を目の当たりにすると「プライドが高い」と感じがちです。

しかし、歴史的・文化的・経済的要因が複雑に絡み合った意識のため、採用時にはマレーシアならではの背景に配慮する必要があるでしょう。

(4) イスラム教徒が6割以上

マレーシアは、イスラム教が国教であり、国民の6割以上がイスラム教徒です。マレーシア人を雇用する場合には、イスラム教の習慣や文化を理解しておく必要があるでしょう。

イスラム教徒は、1日に数回のお祈り(サラート)を行い、ラマダン期間中は日の出から日没まで断食をします。

また、酒や豚は食さないため、食事をともにする際にはハラル(イスラム教で許されている)フード対応のレストランに行くか、自炊したものをふるまう必要があるでしょう。

マレーシア人を雇用する場合には、宗教的な習慣を尊重して職場環境を整えることも重要です。

3. マレーシア人を雇用する際の注意点

マレーシア人を雇用する際には、留意すべきポイントがあります。日本人にとっては何気ない行動でも、マレーシア人にとっては許容できない可能性があるので注意が必要です。

ここでは、マレーシア人を雇用する上で知っておくべき注意点を紹介します。

(1) 宗教上の習慣に対して配慮する

マレーシア人を雇用する上で最も重要なポイントは、宗教上の習慣への配慮です。

特にイスラム教徒の場合は、お祈り(サラート)を行える時間・場所の提供や、ラマダンに配慮した勤務時間や休憩時間の設定をしましょう。

また、社内での食事会や懇親会などは、ハラールフードの提供に対応しているレストランで行う必要があります。

マレーシア人従業員が安心して働ける環境をつくれば、外国人材の受け入れ体制が整っている企業として信頼感を高められるためにも効果的です。

社内のグローバル化を推進するなら、宗教的な配慮も丁寧に行いましょう。

(2) 時間感覚のズレを考慮する

時間を厳守する感覚がある日本人とは異なり、マレーシア人は時間にルーズな一面があります。

日本の列車やバスは予定時刻から大幅な遅れがなく到着しますが、マレーシアでは大幅に遅れることも珍しくありません。

時間にルーズな傾向があるお国柄のため、大事な会議がある場合には「時間厳守」であることを伝えた上でリマインドする必要があります。

日頃から、日本での仕事において時間を守る重要性についても説明しておきましょう。

(3) マレーシアで忌避される行動を理解する

マレーシアには、日本にはない忌避される行動が存在します。

  • 握手、物の受渡しに左手は使わない
  • 人差し指で指すことは、失礼にあたる
  • 頭は神聖な部分のため、子どもでも頭は撫でてはいけない
  • 女性に対しては、男性から握手を求めない
  • 両手に腰を当てない・足を組まない

左手で物を渡したり、人差し指で人を指したりすることは、失礼な行為とされています。人を指す場合は、親指を使いましょう。

頭は神聖な場所とされており、人の頭に触れないように注意する必要があります。

また、両手を腰に当てる・足を組むなどの仕草にも要注意です。両手を腰に当てる仕草は「怒っている」、足を組むと「敬意を払ってもらえていない」と勘違いされる可能性があります。

無意識のうちに行ってしまう可能性もあるため、誤解されないためにもタブーな行動・仕草も把握しておきましょう。

4. まとめ

本記事では、マレーシアの基本情報から、マレーシア人の特徴、雇用する際の注意点を解説しました。

マレーシア人は多民族国家であるお国柄のため、高い語学力や多様な文化への適応力を持つ優秀な人材が多い傾向にあります。

マレーシア人を雇用する際には、誤解からトラブルに発展しないよう、文化や価値観を尊重し、習慣や国民性を理解するように努めましょう。

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