海外移住や海外就業を考える上で大切なのが、労働契約事情や働き方の違いです。本記事では日本の働き方と世界の働き方について解説します。海外に行ってから迷わないためにも、ご一読ください。
1. 日本ならではの働き方・労働事情
日本ならではの働き方や労働事情を解説します。日本では当たり前と思っていることも、海外では異なります。
(1) 終身雇用
日本では終身雇用という考え方が一般的です。終身雇用とは企業が正社員を定年まで雇用し続けることです。
終身雇用の考え方は、高度経済成長期に普及しました。高度経済成長期では日本が急速に経済成長していたため、優秀な人材の確保が求められました。そこで大企業を中心に優秀な人材を囲い込むために終身雇用が広まりました。
終身雇用には、以下のようなメリットがあります。
- 社員は安定した収入と雇用を得られる
- 社員は企業に対する忠誠心が高まる
- 企業は安定した労働力を確保できる
- 企業は長期的な人材育成ができる
社員は長く勤務することで給与や役職が上がることを知っているため、長期勤務を前提に働きます。また、企業は安定した労働力を確保でき、時間をかけて人材育成をできます。
しかし、以下のようなデメリットもあります。
- 社員が安心感に甘えてしまう
- 社員の将来のキャリアが狭まる
- 企業は長く働く社員に高い給料を払う必要がある
- 企業にイノベーションが起きにくい
社員は終身雇用という考え方に甘え、努力を怠ったりチャレンジをしなくなったりする可能性があります。そうするとマンネリ化が起こり、成長が止まってしまうでしょう。
このようなデメリットから、現在は考え方が見直されていますが、日本ではまだ終身雇用という考え方が根付いています。
(2) 長時間労働
「日本人は働きすぎ」という意見を耳にしたことはありませんか?しかし、2021年度に行われた調査によると日本の労働時間は世界28位と、そこまで高い順位ではありません。
では、なぜ日本人が働きすぎと言われるのかというと、残業が多いためです。日本では少しでも長く働くことが美徳とされ、定時が終わっても働く風潮があります。また、職種によってはサービス残業が発生しているケースもあります。
過度な残業やサービス残業はうつ病や過労死の原因になりうるため、最近では多くの企業で対策を取っています。
(3) 年功序列
日本では年功序列という考え方があります。年功序列とは社員の年齢や勤続年数に応じて給料が上がる仕組みです。年功序列には以下のようなメリットがあります。
- 社員は帰属意識が高まる
- 社員は安心して長期的に働ける
- 企業は人事評価をしやすい
- 企業は人材育成をしやすい
しかし、以下のようなデメリットもあります。
- 社員はモチベーションを維持しにくい
- 若手社員が成果を上げても評価されにくい
- 企業は成長しにくい
現在は年齢に関係なく、能力を元に評価する企業も増えていますが、年功序列の考え方が残っているのも事実です。
(4) 新卒一括採用
新卒一括採用は世界でも珍しい日本独自の採用方法です。新卒一括採用とは、毎年同じ時期に在学中の学生を一括で採用し、卒業と同時に入社させる方法です。
新卒一括採用には以下のようなメリットがあります。
- 企業は優秀な人材を確保しやすい
- 企業は採用コストを削減できる
- 企業は複数人を同時に育成できる
- 学生は経験や高いスキルを求められない
しかし、以下のようなデメリットもあります。
- 企業は新卒一括採用時に負担が集中する
- 企業と学生のミスマッチが起きやすい
- 学生は就職活動を強制される
企業と学生の両方にデメリットがあるため、新卒一括採用を見直すべきという声も上がっています。
2. 世界の働き方
世界の働き方を紹介します。海外移住や海外就業を考える上での参考にしてください。
(1) アメリカ
アメリカの特徴は以下の通りです。
- 実力主義
- 定時退社
- フレキシブルワーク
アメリカでは実力主義の考え方が一般的で、能力や成果に応じて給料や役職が上がります。転職なども当たり前で、流動性が高いのが特徴です。
また、定時退社が当たり前です。基本的に残業などは行わず、家族や恋人などプライベートな時間を最優先します。完全成果主義なこともあり、働く場所や雇用体系も様々です。
(2) フィリピン
フィリピンの特徴は以下の通りです。
- 家族が最優先
- 残業や契約内容以外の仕事は行わない
- 転職に明るい
フィリピン人は家族を最優先にします。
家族の問題が理由で遅刻したり休暇を取ったりしても、文句を言う人はいません。また、契約内容に書かれていない内容や残業は行いません。さらに、フィリピンは家族を最優先に考えるため、家族のために転職をすることが普通です。会社への忠誠心がそこまで高くなく、良い条件の求人があれば、すぐに転職します。
(3) イギリス
イギリスの特徴は以下の通りです。
- 圧縮労働時間制
- ジョブシェアリング
- 様々な雇用形態
イギリスには圧縮労働時間制という働き方があります。フルタイムですが、勤務日数が少ないのが特徴です。例えば、1日8時間を5日間行う代わりに1日10時間を4日間行うような働き方で、週休3日が可能になります。
イギリスにはジョブシェアリングという考え方もあります。ジョブシェアリングとは、2人のパートタイム労働者が1人のフルタイム労働者の業務を分担することです。賃金だけでなく、有給休暇や福利厚生も共有できるのが魅力です。
また、イギリスでは契約社員のスキルや給料が高い傾向にあるのが日本との違いです。転職してキャリアアップしたり、起業したりする人も多くいます。
(4) オーストラリア
オーストラリアの特徴は以下の通りです。
- 成果重視
- 交通費の支給が無い
- 健康保険が自己負担
オーストラリアでは仕事ができる人が評価されます。定時出勤・定時退社が当たり前なので、限られた時間の中でどれだけ大きな成果を出すかが重要です。
また、オーストラリアでは交通費の支給がありません。日本と大きく異なる点です。
さらに、オーストラリアでは健康保険が自己負担です。オーストラリア国民は「メディケア」と呼ばれる国民健康保険に加入するのが一般的です。メディケアでカバーされない部分を補填するためにプライベート保険に加入する人もいます。
(5) シンガポール
シンガポールの特徴は以下の通りです。
- 女性の社会進出が活発
- 服装がカジュアル
- 最低賃金が無い
シンガポールでは女性の社会進出が活発です。女性の管理職の割合はアジアトップクラスで、育休制度も整っている企業が多いのが特徴です。また、メイドを雇うという文化もあり、女性が働きやすい環境が整っています。
デスクワーカーでもカジュアルな服装が多い点も日本との違いです。
さらに、シンガポールには最低賃金がありません。賃金は市場の需要と供給に基いて決定されます。
(6) UAE
UAE(アラブ首長国連邦)の特徴は以下の通りです。
- 所得税・住民税が無い
- 残業が少ない
- 健康保険が無い
UAEには所得税・住民税がありません。日本と比べて自由に使えるお金が多くなります。
また、ドバイでは時間外労働が1日2時間と決められているため、残業がほとんどありません。
さらに、UAEには健康保険がありません。UAEで働く場合は民間の保険に加入する必要があります。自己負担は20%と日本よりも少ないのが特徴です。