日本語能力試験(JLPT)とは?

外国人を採用する際、日本語力を客観的に把握したい」という場合に、多くの企業が指標としている「日本語能力試験(JLPT)」。

読解力・聴解力の判断に役立つ日本語能力試験(JLPT)ですが、会話力や実務能力の判断はできないので注意が必要です。

そこで今回は、日本語能力試験(JLPT)の概要やレベル、採用時に注意すべきポイントについて解説します。

1. 日本語能力試験(JLPT) とは?受験者数・合格率

日本語能力試験(JLPT)は、在留資格「特定技能1号」や新たに始まる「育成就労制度」にて、日本語力を評価する基準にも用いられています。

ここでは、日本語能力試験(JLPT) の概要と受験要件、レベル別の合格率を紹介します。

(1) 日本語能力試験(JLPT) の試験概要

日本語能力試験(JLPT)とは、日本語が母語でない人を対象とした日本語能力を測る試験です。

国際交流基金と日本国際教育支援協会が共同で開催しており、世界各国で受験できます。試験は7月と12月の年2回実施されますが、7月または12月のみ受験可能となる都市もあるので注意が必要です。

難易度はN1〜N5の5段階に分けられており、N1が最も難易度が高く、N5が最も易しいレベルの試験となります。

試験内容は、文字・語彙・文法の言語知識、読解、聴解の3つのセクションで構成されており、解答は選択肢によるマークシート方式です。

(2) 受験者数と合格率(認定率)の目安

日本語能力試験(JLPT)は、世界中で実施されている試験です。2024年7月(第1回)の受験者数は、国内外合計で68万人以上でした。

合格率(認定率)は、レベルによって下表のように異なります。

試験レベル国内受験海外受験国内外の合計
認定率
N131.5%34.4%33.3%
N233.5%41.6%38.3%
N338.5%42.4%40.5%
N444.1%38.8%40.9%
N561.8%49.1%50.0%

※2024年 第1回(7月)データ

難易度が高いN1・N2レベルの合格率は3割程度、最も易しいN5レベルでも5割程度の合格率です。

外国人にとって、N5レベルでも簡単に合格できるテストとはいえないでしょう。

2. 日本語能力試験(JLPT) N1〜N5の日本語レベル

日本語能力試験(JLPT)の各レベル認定者は、実際にどの程度の日本語能力があると判断できるのでしょうか。

ここではN1〜N5別の日本語レベルについて、認定基準を紹介します。

(1) N1の日本語レベル

日本語能力試験(JLPT)における「N1」は、最も高い難易度です。幅広い場面で日本語を理解し、使用できる能力が求められます。

読解・論理的な文章や抽象的な文章を正確に理解し、新聞記事や論文などを読解できる
・さまざまな話題の内容や深みのある小説やエッセイなどを読み、話の流れや表現の意図を理解できる
聴解・幅広い場面において、自然なペースの日常会話やテレビのニュースなどを聞き、論旨を把握できる

N1の合格者は、大学で専門的な分野を学んだり、ビジネスシーンで高度な日本語を使って業務をこなしたりできるレベルであると判断できるでしょう。

(2) N2の日本語レベル

日本語能力試験(JLPT)における「N2」は、2番目に高い難易度です。幅広い場面で日本語を理解し使用できる能力が求められます。

読解・幅広い話題の新聞や雑誌、平易な論文など、論旨がわかりやすい文章を読解できる
・一般的な話題に関する読み物を読み、話の流れや表現の意図が理解できる
聴解・日常的だけでなく幅広い場面で、自然に近いペースの日常会話やニュースなどを聞いて、話の流れや要点を把握できる

N2の合格者は、一般的な日常会話や基本的な仕事で使う日本語表現ができるレベルといえます。

N2以上は、ビジネスシーンでも敬語を使用した会話や文書作成も可能なレベルと判断してよいでしょう。

(3) N3の日本語レベル

日本語能力試験(JLPT)における「N3」は、日常的に使われる日本語を理解できるレベルです。

読解・日常的な話題について具体的に書かれた文章の内容を理解できる
・新聞の見出しから情報の概要を把握できる
・難易度がやや高い文章でも、言い換え表現があれば要点を理解できる
聴解・日常的な場面で、自然に近いペースの日常会話やニュースなどを聞いて、話の流れや概要を把握できる

N3の合格者は、丁寧語とカジュアルな言い回しの区別がつくレベルです。

日常生活レベルの日本語であれば、理解できると判断してよいでしょう。

(4) N4の日本語レベル

日本語能力試験(JLPT)における「N4」は、基本的な日本語を理解し、簡単なやり取りができるレベルです。在留資格「特定技能1号」を得るために必要なレベルでもあります。

読解・基本的な語彙や漢字が使われた身近な話題について、読解できる
聴解・日常的な場面で、ゆっくりめの会話であれば内容がほぼ理解できる

N4の合格者は、簡単な日本語を使ったコミュニケーションが可能な能力を有していると判断できます。

ただし、スムーズな会話はやや難しいため、一文一文を区切り、丁寧語でゆっくり話す必要があるでしょう。

(5) N5の日本語レベル

日本語能力試験(JLPT)における「N5」は、基本的な日本語である挨拶や簡単な定型文がわかる程度のレベルとなります。

読解・ひらがなやカタカナ、基本的な漢字で書かれた定型文が読解できる
聴解・日常生活の中でもより身近なシーンでゆっくりとしたペースの短い会話が聞き取れる

N5の合格者は、日本語学習の基礎を習得したレベルといえます。年齢や名前、仕事などを短い言葉で問われた場合に、受け答えが可能です。

まだ日本語の知識は十分とはいえないため、理解してもらうためには、2〜3語程度の短い文章ではっきりと話す必要があるでしょう。

3. 外国人採用における日本語レベルの判断ポイントと注意点

日本語能力試験(JLPT)は、外国人材の採用時に日本語レベルが把握しやすくなる指標です。

しかし、試験結果だけで採用を判断するのはおすすめできません。ここでは、採用時に注意すべきポイントを解説します。

(1) N1試験合格者でも会話力が低いケースがある

日本語能力試験(JLPT)は、言語知識・読解・聴解の日本語レベルを確認する試験です。「会話力」を判断するものではないため、N1に合格していても、実際に日本語を話す能力は低い場合があります。

逆に、N2レベルでもスムーズな会話が可能なケースも珍しくありません。

採用面接では、業務に関わる質問や日常的な会話を通して、実際に日本語でコミュニケーションを取り、会話力を判断しましょう。

(2) 日本語が苦手でも実務能力が高い場合は語学力にこだわらないほうがよい

日本企業で円滑に仕事をこなすためにはある程度の日本語力は必要ですが、最も重要な要素とはいえません。

特に専門的な知識やスキルを持つ外国人材の場合、日本語能力が多少低くても、高い実務能力を発揮できる可能性があります。

採用時に日本語力が低くても、採用後に業務や日常生活を通して学び、スムーズなコミュニケーションが取れるようになるケースも珍しくありません。

採用を判断する際には、日本語能力だけでなく、実務経験や専門スキル、ポテンシャルなども含めて総合的に判断しましょう。

(3) 実践的な日本語を習得できるようサポートする必要がある

外国人材を採用したら、より円滑なコミュニケーションができるよう、業務に必要な用語や言い回しを含む実践的な日本語を習得できるよう協力しましょう。

N2以上の日本語能力試験(JLPT)に合格していても、難しい漢字や専門用語、敬語表現に戸惑う外国人労働者も少なくありません。

外国人材のレベルに合わせた言葉を選ぶような社内研修や、外国人向けの日本語研修などを実施すると、日本人・外国人ともに働きやすい職場環境を実現できるでしょう。

4. まとめ

今回は、外国人材の日本語能力を判断する一つの指標である日本語能力試験(JLPT)について紹介しました。

日本語能力試験(JLPT)は5段階の難易度に分かれており、最高難易度のN1合格者は、複雑な日本語表現の読解・聴解が可能なレベルとなります。

しかし、会話力を判断するテストではないため、目安として捉えるべきでしょう。

採用の際は、日本語能力試験の結果だけでなく、面接での会話能力や実務経験、ポテンシャルなども考慮し、総合的に判断する必要があります。

日本人・外国人ともに働きやすい職場環境を目指すために、採用後には外国人材が実践的な日本語を習得できるようサポートしましょう。

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