外国人労働者を雇用するなら、給与を振り込む銀行口座開設の手続きもサポートしましょう。
外国人労働者は印鑑を持っていない・母国へ送金するなど、日本人とは異なる文化や事情があるため、銀行選びにも配慮が必要です。
本記事では、外国人労働者が日本で銀行口座を開設する手続きの流れや口座開設の条件、必要書類を紹介します。
1. 外国人労働者向けの銀行口座とは?選び方のポイント
これから外国人労働者向けに銀行を決めようと考えているなら、次の2点に着目すると利便性のよいサービスを選べるでしょう。
- 手数料の安さ
- 外国語サポートの充実度
①手数料が安い銀行を選ぶ
外国人労働者の場合、日本語がわからなくても利用しやすい「ATM」を利用し、母国へ送金する人が多い傾向にあります。
各種手数料について複数の銀行を比較し、外国人労働者にとって無駄な出費を抑えられる手数料の安い銀行を選びましょう。
- ATM利用手数料:時間帯や利用回数によってかかる手数料(110円〜220円程度)
- 振込手数料:他の銀行口座への振込時にかかる手数料(220円〜990円程度)
- 海外送金手数料:海外の銀行口座へ送金する際にかかる手数料(1,500円程度)
特に「ゆうちょ銀行」は、ゆうちょATMの利用手数料が無料で、口座維持手数料もかからないためおすすめです。
また、近年ではネット銀行を中心に手数料が安い銀行も増えているため、選択肢の一つとして検討してみましょう。
②外国語サポートが充実している銀行を選ぶ
日本語に不慣れな外国人労働者も安心して口座を開設できるよう、言語サポートが充実している銀行を選びましょう。
次のようなサポートが利用できる銀行がおすすめです。
- 多言語対応のコールセンター・オンラインチャット
- 多言語対応のATM
- 多言語対応のWebサイト・アプリ
例えば、次の銀行は多言語サービスにも対応しています。ぜひ利用を検討してみてください。
銀行 | 多言語・海外対応サービス(一例) |
ゆうちょ銀行 | ・多言語コールセンター ・多言語対応のアプリ |
三井住友銀行(SMBC) | ・多言語対応のアプリ ・多言語対応のチラシ ・多言語に対応したコミュニケーションボード ・SMBCダイレクト・グローバルサービス(インターネットバンキング)など |
ソニー銀行 | ・多言語対応の公式サイト ・English Online Bankingで英語での口座開設 ・チャットサービスが利用可能 |
新生銀行 | ・英語対応の公式サイト・口座開設 |
三菱UFJ銀行 | ・多言語対応の公式サイト ・WOVN.ioによる多言語サービスを提供 |
楽天銀行 | ・英語対応の公式サイトでの口座開設 ・英語対応アプリ ・海外送金手数料が低水準 |
迷ったら、利便性や手数料の安さ、手続きの簡単さなどを兼ね備えた「ゆうちょ銀行」がおすすめです。
コールセンターやアプリも多言語対応なので、外国人にとって一番簡単に口座開設ができる銀行といわれています。
2. 外国人の銀行口座開設に必要な書類と手続きの流れ
外国人に限らず、銀行口座を開設する際には事前の準備が必要です。
ここでは、外国人向けに口座開設時に必要な書類と手続きの流れを紹介します。
①必要書類を揃える
銀行口座開設に必要な書類は銀行によって異なりますが、一般的には以下のものが求められます。
- 在留カード/パスポート
- 印鑑
- 住民票
- 電話番号
- 社員証/学生証
身分証明書・本人確認書類としての「在留カード・パスポート」と、多くの銀行では「印鑑」も必要です。
ただし、印鑑が不要なネット銀行もあるため、印鑑の作成が難しい場合にはネット銀行の利用も検討しましょう。
住民票は住所を確認するために、電話番号はセキュリティ認証や契約確認などのために必要です。
電話番号は携帯電話の番号で問題ありませんので、通信会社と契約してから口座開設の手続きをしましょう。
②銀行窓口・オンラインで開設手続きをする
銀行口座の開設手続きは、銀行の窓口とオンラインで行えます。
ア.銀行窓口での手続き
銀行により詳細は異なりますが、多くの窓口では次の手順で手続きが可能です。
- 必要書類を銀行窓口に持参
- 担当者の指示に従い、暗証番号や個人情報の設定
できる限り、外国語対応の窓口で手続きをしましょう。担当者とコミュニケーションが取れない場合、口座開設を断られる可能性もあります。
もし外国語対応の窓口がない場合は、企業の担当者が同伴してサポートするとスムーズな手続きが可能です。
口座開設手続きにかかる時間は、混雑具合にもよりますが1時間程度かかるケースも珍しくありません。時間に余裕を持って、銀行窓口へ行きましょう。
イ.オンラインでの手続き
一部の銀行やネット銀行では、オンラインで口座開設手続きが可能です。
- スマートフォンやパソコンで銀行のホームページにアクセス
- 口座開設ページにて必要事項を入力
- 本人確認書類をアップロード
オンラインでの口座開設手続きは、待ち時間なく終えられる点がメリットです。
難しい操作はほぼありませんが、企業担当者のサポートがあると安心して手続きできるでしょう。
③キャッシュカード・通帳を受け取る
銀行口座の開設手続きが終わると、1〜2週間ほどでキャッシュカードが登録住所に届きます。
キャッシュカードの受け取り時に身分証明書の提示が必要な場合があるので、用意しておくように伝えておきましょう。
3. 外国人が銀行口座開設できる条件と注意点
外国人労働者が日本で銀行口座を開設するには、主に2つの条件があります。
①滞在期間が6か月に満たない場合は口座開設できない可能性が高い
外国へ送金可能な普通口座を利用したい場合、入国してから6か月間は口座開設ができないケースがほとんどです。
日本で普通口座を開設するには、外国為替及び外国貿易法の「居住者」に該当する必要があります。
外国人が「居住者」となる条件は、次のいずれかです。
- 日本国内にある事務所に勤務する者
- 日本に入国後6か月以上経過した者
そのため銀行によっては、社員証があれば入国から6か月経過していなくても口座開設が可能なケースがあります。
また、在留期間の残りが3か月に満たない場合も口座開設ができない可能性があるので、残りの在留期限にも注意が必要です。
銀行により対応・条件が異なるため、事前に確認しておきましょう。
②基本的に住民票がないと口座開設はできない
外国人が日本で銀行口座を開設する条件のひとつに「住民票が取得できること」が挙げられます。
住民票を提出できないと、他の書類が揃っていても口座開設を断られるケースも珍しくありません。
お住まいの地域・地方自治体の役所に、在留カードやパスポートなどの写真付き身分証明書を持っていけば、住民票の取得が可能です。
口座開設の手続き前に住民票を忘れずに取得しておきましょう。
③帰国前には解約する必要がある
外国人労働者が帰国する前に、必ず銀行口座の解約を促してください。
近年、犯罪の意識がないまま帰国前に銀行口座を売却する外国人労働者が増えています。
売却した振り込め詐欺のような犯罪行為に悪用されると、入国禁止や退去処分のような罰則が科せられるため、注意が必要です。
帰国前には口座を解約するように促し、必要であれば口座解約の手続き時には企業担当者が同席しましょう。
4. まとめ
今回は、外国人労働者の銀行口座開設方法について、銀行の選び方や必要書類、口座開設の条件を紹介しました。
外国人労働者にとって銀行口座は、給与の受け取りだけでなく、光熱費の支払いや母国への送金などにも必要なものです。
日本語や印鑑文化に不慣れな外国人労働者がスムーズに口座開設できるよう、外国人材を採用する際にはサポート体制も整えておきましょう。