日本の技術・技能を取得するために来日している技能実習生ですが、労働力の確保や海外進出のきっかけとして、直接雇用したいとお考えではありませんか?本記事では技能実習生について、直接雇用する方法、直接雇用する具体的な流れなどを解説します。
1. 技能実習生とは
技能実習とは発展途上国の外国人が日本で技術や知識を学び、それを母国に移転する制度です。技能実習で来日している外国人を技能実習生と呼びます。
技能実習で来日している在留者は令和5年6月末時点で358,159人です。
参考:法務省
2. 技能実習生は直接雇用できる?
結論、技能実習生を直接雇用することは可能です。
ただし、技能実習は日本の技術や知識を外国人が学び、母国に持ち帰ることで経済発展を目指す在留資格です。外国人が母国で安定した職に就くための在留資格なので、技能実習生をそのまま雇用するのは難易度が高いと言えるでしょう。
そこで技能実習生を直接雇用する方法を2つ紹介します。
① 在留資格を技能実習から特定技能に変更する
1つめは在留資格を技能実習から特定技能にする方法です。
特定技能とは、国内で人材確保が難しい分野において、一定の技術や知識を持つ外国人を受け入れることで、人材不足の解消を目指す在留資格です。特定技能は人材不足を補うための在留資格なので、国際貢献が目的の技能実習とは異なり、直接雇用ができます。さらに、在留資格を技能実習から特定技能に変更することで、以下のようなメリットがあります。
- 日本に慣れている
- 即戦力を確保できる
- 試験が免除される
在留資格を特定技能に変更した外国人は、既に技能実習生として日本での滞在・就労経験があります。日本語でのコミュニケーションが取りやすく、文化の違いなどによるトラブルも起きにくいでしょう。
また、技能実習生として技術を学んできているので、即戦力として活躍が期待できます。技能実習から特定技能に変更することで、単純労働なども可能になり、幅広い働き方も期待できます。
さらに、技能実習から特定技能に移行する際、技能実習2号を良好に修了し、技能実習と特定技能1号の業務に関連性があれば、技能試験と日本語試験が免除されます。
② 就労ビザを取得する
技能実習から特定技能への変更が難しい場合、就労ビザを取得する方法もあります。
就労ビザは外国人が日本で収入を得る活動をするために必要な在留資格です。技能実習生が就労ビザを取得する場合、一般的には関連性のある「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得します。技術・人文知識・国際業務ビザの取得要件は「一定の学歴要件、もしくは一定年数以上の実務経験を有していることによって、従事しようとする業務に必要な技術もしくは知識を修得していること」です。
業務に関係のある科目を専攻して大学などを卒業している必要がありますが、技能実習生で大卒者というケースは稀です。また、技術・人文知識の場合は10年以上、国際業務の場合は3年以上の実務経験が必要になるため、ハードルが高いという点に注意が必要です。
技能実習から就労ビザへの変更が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 契約機関等の事業内容が、監理団体や実習実施者などの技能実習生の受入れに関するものであること
- 技能実習時に修得した技能等について、本国からの技能実習生に対する指導等を行い、申請人が技能移転等、母国の経済発展の貢献に資す活動を行うものと認められること
- 申請人がN2相当以上の日本語能力を有すると認められること
- 就業場所における技能実習生の在籍数等からみて、十分な業務量が確保されていると認められ、技能実習生と同様の作業を行うものではないことが明らかであること
- 申請人が技能実習計画上の到達目標を達成していること
3. 技能実習生を直接雇用する具体的な流れ
技能実習生を直接雇用する具体的な流れは以下の通りです。
- 企業と外国人とで雇用契約を結ぶ
- 1号特定技能外国人支援計画を策定するor登録支援機関と委託契約を結ぶ
- 企業による事前ガイダンスや健康診断の実施
- 出入国在留管理庁に在留資格変更許可申請を提出する
- 就労開始
4. 技能実習生を特定技能に変更して雇用するメリット
技能実習生を特定技能に変更して雇用するメリットは以下の通りです。
- 労働力の確保に繋がる
- 即戦力となる外国人を採用できる
- フルタイムで雇用できる
- グローバル化に繋がる
- 5年以上の雇用もできる
① 労働力の確保に繋がる
特定技能は技能実習に比べて幅広い働き方ができるため、安定した労働力の確保に繋がります。また、特定技能外国人は20代が多いため、若手人材の確保もできます。さらに、労働力を確保することで、労働環境の改善にもつながり、人材の流出も防げるでしょう。
国内人材の確保に難航している企業は、外国人採用を検討してみるのもおすすめです。
② 即戦力となる外国人を採用できる
特定技能を持つ外国人は技能試験と日本語能力試験(N4)に合格しています。
日常的な文章やゆっくりとした会話を理解できる能力を持っているので、日本語を一から教育・指導する必要が無く、即戦力です。また、特定技能を持つ外国人は一定の知識や経験も持っています。
③ フルタイムで雇用できる
特定技能を持つ外国人はフルタイムで雇用できます。
特定技能以外の在留資格では勤務時間に制限があったり、アルバイトしかできなかったりします。しかし、特定技能を持つ外国人は、直接雇用かつフルタイム雇用が可能なため、日本人と同様の働きを期待できます。人材不足を補いながら生産性も高められることは大きなメリットと言えるでしょう。
④ グローバル化に繋がる
特定技能を持つ外国人を採用すれば、現場がグローバル化され、異なる言語や文化を学べます。また、日本語と母国語を理解できる外国人がいれば、海外進出の際にサポートしてくれたり、現地とのパイプになってくれたりもするでしょう。
さらに、特定技能を持つ外国人は勤勉で高い志を持つ人も多いため、採用することで、既存の社員によい刺激を与えられます。
⑤ 5年以上の雇用もできる
特定技能2号に移行すれば、就労期間に制限がなくなり、5年以上の雇用が可能になります。特定技能2号に該当する分野は以下の通りです。
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
参考:法務省
終身雇用ができる人材の確保は企業にとって大きなメリットです。
5. 技能実習生を特定技能に変更して雇用する際の注意点
技能実習生を特定技能に変更して雇用する際、以下のような注意点があります。
- 転職されてしまう可能性がある
- 制度が複雑
- 人材が集まりにくい
① 転職されてしまう可能性がある
特定技能は技能実習と異なり、条件をクリアすれば転職が可能です。
給与、福利厚生、労働環境などをしっかりと整備して、外国人が働きやすい労働環境を整えることで、転職されてしまうリスクを減らしましょう。
② 制度が複雑
特定技能を持つ外国人を受け入れる際は、在留資格に関する手続きや住居の確保などが必要なため、企業にとって大きな負担になる可能性があります。また、受入後も義務的支援や在留資格の更新など複雑な手続きが発生します。
不安な場合は登録支援機関と業務委託を結ぶのがよいでしょう。登録支援機関は支援計画書の作成をはじめとする業務を代行してくれるので、企業は本来の業務に集中できます。
③ 人材が集まりにくい
特定技能の取得には技能試験や日本語試験に合格している必要があるため、試験無しで雇用できる技能実習などと比べると、人材は集まりにくい傾向にあります。人材が集まりにくいため、各企業の競争も激しくなるでしょう。
外国人採用に特化した人材紹介会社を利用するなどして、優秀な外国人を採用するのがおすすめです。