現在、介護業界では人材不足が深刻化しています。
そんな中で解決策として注目されているのが介護職での外国人受入です。
本記事では介護職での外国人受入について、現状、必要な在留資格、在留資格「介護」の取得する流れなどを解説します。
1. 介護職における外国人受入の現状
介護職における外国人受入実績は以下の通りです。
- 在留資格「介護」:5,339人(※2023年1月1日時点)
- EPA介護福祉士:3,257人(※2022年6月末時点)
- 技能実習:15,011人(※2022年6月末時点)
- 特定技能:17,066人(※2023年1月末時点)
また、介護職における特定技能外国人在留者は2020年より増加し続けており、今後も増加すると予想されます。
2. 介護職で外国人を受け入れる際に必要な在留資格4つ
介護職で外国人を受け入れる際に必要な在留資格4つは以下の通りです。
- 介護
- EPA介護福祉士
- 技能実習
- 特定技能
それぞれ詳しく解説します。
① 介護
在留資格「介護」は介護福祉士を持つ外国人が介護や介護指導を行う業務に従事するためのものです。在留期間は5年、3年、1年、3ヵ月で、具体的には介護福祉士などが該当します。
一般的には、日本の介護の専門学校を卒業して、介護福祉士の取得を目指します。
4つの資格のなかで、唯一介護福祉士の資格を持ち、訪問介護や夜勤などもできる在留資格です。専門学校入学時やビザ取得時に日本語能力N2程度の日本語力が求められます。N2は、新聞や雑誌を読んで理解したり、会話やニュースを聞いて理解したりできるレベルです。ある程度の日本語力が担保されているので、即戦力になるでしょう。
また、在留期間の更新に制限が無いので、長期的な雇用が見込めます。
さらに、配偶者や子の帯同が可能なので、外国人は安心して日本で働けるでしょう。
介護の在留資格で5年以上働き、かつ10年日本に在留することで、永住権の取得も可能です。永住権を取得できれば、在留期間や在留活動の制限がなくなり、社会的信用も向上します。
② EPA介護福祉士
EPAによる雇用は在留資格「特定活動」にあたります。
EPA介護福祉士とは、日本の介護施設で就労と研修を行いながら、介護福祉士の取得を目指す外国人です。EPAとは特定の二ヵ国間で経済連携を図るための条約で、介護領域では、インドネシア、フィリピン、ベトナムと締結しています。
在留期間は原則4年ですが、介護福祉士の資格に合格すれば、制限無しで更新可能です。
EPA介護福祉士になるには、介護系・看護系の専門学校を卒業するか、母国での介護士資格を持っている必要があります。日本語レベルに関しては、インドネシアとフィリピンがN5、ベトナムがN3の日本語能力が求められます。N5は日常的に使われる漢字、ひらがな、カタカナを理解したり、短くてゆっくりした会話を理解したりできるレベルです。N3は日常的な話題を呼んで理解したり、自然に近いスピードで会話できたりできるレベルです。在留資格「介護」と比べると、日本語レベルは下がります。
一定の介護知識と日本語能力を持った外国人が就労してくれるため、即戦力となる人材の確保が期待できます。ただし、入国後4年目に介護福祉士の国家試験を受験するため、受入機関はサポートが必要です。
③ 技能実習
技能実習とは外国人に日本の技術を伝え、母国に持ち帰ってもらう国際貢献を目的とした在留資格です。技能実習では入浴や食事などの身体介護やそれに関連する業務を行います。ただし訪問系サービスは不可です。
在留期間は1号が最長1年、2号と3号が最長2年、合計で最長5年です。
家族の帯同や転職は原則不可です。日本語レベルは入国から1年後でN3が求められますN3は日常的な話題を呼んで理解したり、自然に近いスピードで会話できたりできるレベルです。
その他の要件は以下の通りです。
- 外国での介護経験
- 看護課程を修了又は看護師資格を有する
- 外国政府による介護士認定を受けている
技能実習を良好に修了すれば在留資格を特定技能に変更したり、介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格を介護に変更したりできます。
④ 特定技能
特定技能とは、国内の人手不足を解決するために外国人を受け入れる在留資格です。
在留期間は最長5年です。
例えば、入浴や食事などの身体介護、レクリエーション、機能訓練の補助などを行います。ただし、訪問系サービスは不可です。
しかし、2025年春を目安に訪問介護サービスへの従事も認められる予定です。
参考:厚生労働省「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会中間まとめ(案)」
家族の帯同は不可ですが、夜勤や転職は可能です。
特定技能「介護」で働くためには以下の3つの試験に合格する必要があります。
- 介護技能評価試験
- 日本語能力N4以上(国際交流基金日本語基礎テスト)
- 介護日本語評価試験
技能的な立ち位置は技能実習よりも上です。
特定技能や技能実習についてはこちらもご参照ください。
⑤ 介護職で外国人を受け入れるメリットと注意点
介護職で外国人を受け入れるメリットと注意点を紹介します。
介護職で外国人採用を考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
⑥ メリット
介護職で外国人を受け入れるメリットは以下の通りです。
- 人手不足を解消できる
- 長期間の雇用も可能
- 国際貢献ができる
外国人受入は人材不足の解消につながります。
ただ人材不足を解消できるだけでなく、若くて意欲のある人材を確保したり、応募が集まりにくい地方でも人材が確保できたり、沢山のメリットがあります。
また、在留資格によっては長期的な雇用も可能です。
在留資格「介護」を所持する外国人や介護福祉士に合格した外国人は永続的に就労できるので、安定した人材の確保に繋がります。
さらに、介護職で外国人を受け入れれば、国際貢献にも繋がります。
日本で学んだ介護の技術を母国に持ち帰ることで、母国の介護水準が上がるなども考えれるでしょう。
⑦ 注意点
介護職の外国人を受け入れる際の注意点は以下の通りです。
- 支援が必要
- コミュニケーションや壁
- 教育に時間がかかる
3. 在留資格「介護」を取得する流れ
在留資格「介護」を取得する流れは、主に以下の3パターンです。
- 養成施設に通うパターン
- 実務経験を経るパターン
- EPAを経由するパターン
それぞれ解説します。
① 養成施設に通うパターン
養成施設に通って在留資格「介護」を取得する流れは以下の通りです。
- 留学生として入国
- 介護福祉士養成施設に2年以上通う
- 介護福祉士の国家資格を取得
- 留学から介護へ在留資格を変更
- 就労開始
② 実務経験を経るパターン
実務経験を経て在留資格「介護」を取得する流れは以下の通りです。
- 技能実習や特定技能で入国する
- 介護施設等で3年以上就労する
- 介護福祉士の国家資格を取得
- 雇用契約を結ぶ
- 在留資格を介護に変更する
- 就労開始
③ EPAを経由するパターン
EPAを経由して在留資格「介護」を取得する流れは以下の通りです。
- 介護福祉士候補者として入国する
- 介護福祉施設養生施設で2年以上就学or介護施設等で3年以上就労・研修
- 介護福祉士の国家資格を取得
- 在留資格を介護に変更する
- 就労開始