外国人採用や外国人受入を考える上で欠かせない在留資格が「特定技能」と「技能実習」です。しかし、2つの在留資格の違いについて詳しくわからない方もいるのではないでしょうか。
本記事では特定技能と技能実習について、概要、違い、取得の流れなどを詳しく解説します。
1. 特定技能とは
特定技能とは、国内で人材確保が難しい状況にある職種において、一定の専門性や技術を持つ外国人を受け入れるための制度です。
特定技能の対象になるのは、以下の16職種です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造
- 建設(2号)
- 造船・舶用工業(2号)
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
特定技能には1号と2号があります。
特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務に従事する外国人のための在留資格です。特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人のための在留資格です。
それぞれ以下のような違いがあります。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 1年、6ヵ月、4ヵ月ごとの更新 | 3年、1年、6ヵ月ごとの更新 |
技能水準 | 試験等で確認 ※技能実習2号を修了した場合は免除 | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認 ※技能実習2号を修了した場合は免除 | 試験等での確認は不要 |
家族の帯同 | 基本的に不可 | 要件を満たせば可 ※配偶者、子 |
受入機関又は登録支援機関による支援 | 対象 | 対象外 |
2. 技能実習とは
技能実習とは、日本で培われた技術や知識を発展途上国などに移転することで、経済発展を担うための在留資格です。
技能実習の移行対象となる職種は、91職種167作業です。
詳しくはこちらをご参照ください。
厚生労働省「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」
技能実習には1号、2号、3号があります。
それぞれの違いは以下の通りです。
技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 | |
在留期間 | 1年以内 | 2年以内 | 2年以内 |
対象職種 | 制限無し | 対象職種のみ | 対象職種のみ |
3. 特定技能と技能実習の違い
混同されがちな特定技能と技能実習について、以下の観点から違いを解説します。
- 目的
- 作業内容
- 職種
- 在留期間
- 転職
- 受入
- 家族の帯同
① 目的
特定技能は人材確保、技能実習は国際貢献が目的です。
外国人を受け入れるという点では同じですが、目的が異なります。
② 作業内容
特定技能は人材確保が目的なので、単純労働が可能です。
しかし、技能実習は専門性の高い技術を学ぶことが目的なので、単純労働ができません。
③ 職種
特定技能は16職種、技能実習は91職種があります。
技能実習は特定技能に比べて幅広い職種に就業できるのが特徴です。
④ 在留期間
特定技能は1号が通算で5年、2号が制限無しです。
技能実習は1号が1年以内、2号と3号が2年以内です。
⑤ 転職
特定技能は就労資格であるため、同一職種であれば転職可能です。
しかし、技能実習は労働ではなく日本の技術を母国に持ち帰ることが目的であるため、転職は原則不可です。
⑥ 受入
特定技能は受入制限がありません。
企業が採用を行ったり、紹介会社を利用したりできます。
選択の幅が広いのが特徴です。また、受入人数に関しては介護・建設分野を除いて、制限がありません。
技能実習は海外の送り出し機関と連携した団体による紹介でしか受入できません。
また、受入人数に限りがあります。具体的には、常勤職員の総数が30人以下なら3人、優良企業であれば6人までなどの制限があります。
⑦ 家族の帯同
特定技能は1号が帯同不可、2号が配偶者や子であれば帯同可能です。
帰国を前提とする技能実習では、家族の帯同は不可です。
4. 特定技能を取得する流れ
特定技能を取得する流れを、外国から来日する外国人と既に日本にいる外国人に分けて解説します。
参考:外務省
① 外国から来日する外国人が特定技能を取得する流れ
技能実習2号を良好に修了した外国人や新規入国予定の外国人が特定技能を取得する流れは以下の通りです。
- 求人に応募する or 民間の職業紹介事業者による求職のあっせん
- 受入機関と雇用契約を結ぶ
- 在留資格認定証明書交付申請(受入機関による代理申請も可)
- 審査
- 在留資格認定証明書交付
- 受入機関に在留資格認定証明書を送付
- 査証申請
- 審査・査証発給
- 入国
- 就労開始
② 日本にいる外国人が特定技能を取得する流れ
技能実習2号を良好に修了した外国人や留学生が特定技能を取得する流れは以下の通りです。
- 求人に応募するorハローワーク・民間の職業紹介事業者による求職のあっせん
- 受入機関と雇用契約を結ぶ
- 在留資格変更許可申請(原則本人)
- 審査
- 在留資格変更許可
- 在留カードの交付
- 入国
- 就労開始
5. 技能実習を取得する流れ
技能実習を取得する流れは以下の通りです。
- 組合員企業から技能実習生の申し込みを行う
- 面接
- 外国人技能実習生機構へ「技能実習1号」計画認定を申請する
- 在留資格認定証明書交付申請を行う
- ビザ申請を行う
- 入国
- 約1ヵ月の講習を受ける
- 就労開始
6. 技能実習は特定技能への移行が可能
技能実習は特定技能への移行が可能です。
技能実習は技術を学び終えた外国人が母国に帰ってしまいます。
企業は外国人に今後も働いて欲しい、技能実習生はもっと日本で働きたいと考えるケースもあるでしょう。技能実習から特定技能へ移行すれば、そのような悩みを解決できます。
技能実習から特定技能へ移行するための要件は以下の通りです。
- 技能実習2号を良好に修了
- 技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性がある
本来であれば、特定技能を取得するためには「日本語能力試験」と業種ごとの「技能試験」に合格する必要があります。しかし、技能実習2号を良好に修了し、技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性があれば、試験が免除されます。
また、移行対象となるのは以下の14分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
7. 特定技能や技能実習の在留資格を持つ外国人を採用する際のポイント
特定技能や技能実習の在留資格を持つ外国人を採用する際は、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 必要な業務ができる外国人を受け入れる
- 日本人と同等かそれ以上の待遇にする
- 人権や文化を尊重する
① 必要な業務ができる外国人を受け入れる
特定技能や技能実習は、業務内容、職種、在留期間が決まっています。
また、在留資格で許可されていない業務を外国人にさせることは、違法になる場合があります。在留資格について再度確認し、必要な業務ができる外国人を受け入れましょう。
② 日本人と同等かそれ以上の待遇にする
最低賃金法は特定技能や技能実習で就労する外国人も対象です。
また、特定技能で就労する外国人は給与、労働時間、待遇などが日本人と同じ条件でなくてはいけません。最低賃金を下回っていたり、給与が日本人と比べて低かったりする場合、在留資格申請が許可されないケースもあるので注意しましょう。
③ 人権や文化を尊重する
外国人採用を行う場合、人権や文化を尊重しましょう。
外国人というだけで差別が起きたり、文化の違いで衝突が起きたり、外国人採用ならではの問題が考えられます。外国人採用を行う前に、企業全体で人権や文化を尊重する意識を持ち、受入体制を整えましょう。