外国人雇用手続きと受け入れ準備|確認事項と入社後に必要なサポートとは?

外国人採用

日本では、多様な人材を確保するために外国人労働者を雇用する企業が増えています。しかし、外国人の受け入れには、日本人雇用にはないサポートや受け入れ準備が必要です。

そこでこの記事では、外国人労働者の受け入れを検討している経営者や担当者に向け、受け入れ準備や雇用手続き時の確認事項、入社後に必要なサポート手続きを解説します。

外国人労働者を受け入れるために必要な3つの準備

外国人労働者を受け入れる前に、全ての従業員がスムーズに業務に従事できるよう、労働環境や支援体制を整える必要があります。

外国人労働者の受け入れ前に整えておきたい準備は、主に次の3種類です。

  • 社内ルール・就業規則を見直す
  • 外国人労働者向けの相談窓口を設置する
  • 文化・言語の違いに配慮した環境を作る

社内ルール・就業規則を見直す

外国人労働者がスムーズに業務を開始できるよう、就業規則や社内ルールを確認・見直しましょう。

外国人にとって負担になりがちな日本特有の勤務慣習がある場合には、配慮が必要です。

  • 業務時間や休暇制度の見直し
  • 宗教上の配慮、礼拝時間の確保
  • 公平性を保つための給与体系の見直し
  • 労働時間管理と健康管理のルール化
  • ハラスメント防止規定の強化

特に外国人労働者にとっての宗教は、重要なアイデンティティの一部である場合も少なくありません。

宗教や文化の違いによる差別やハラスメントが発生しないよう、就業規則には「文化的背景や宗教に基づく差別を禁止する」と明記するとよいでしょう。

また、礼拝や宗教行事のための休暇や時間調整のルールを明確化し、外国人労働者と日本人従業員の間でわだかまりが生まれないよう、就業規則の整備が必要です。

日本人と外国人で給与条件が異なる場合も、理由を明文化し説明責任を果たすルールを設けておくと、トラブルを防ぎやすくなります。

就業規則の改定をしたら、労働基準監督署への届け出も忘れないように気をつけましょう。

外国人労働者向けの相談窓口を設置する

外国人労働者が抱える課題や不安に対応するため、専用の相談窓口を設置しておくと、離職率を防ぎやすくなります。

外国人労働者が安心して働けるよう、次のような役割を持つ相談窓口を設置しましょう。

  • 生活面のサポート
  • 職場でのトラブル・差別・ハラスメント相談
  • ビザ・在留資格のトラブル
  • 雇用契約に関する不明点の質問
  • 労働条件に関する相談
  • 緊急時の手続き・対応相談

業務上の悩みやトラブル、待遇だけでなく、日常生活の不便やカルチャーショックなども相談できると、職場だけでなく日本という国で過ごしやすくなります。

日本に馴染みのない外国人労働者にとって、コミュニケーションがうまく取れない職場は、不安やストレスを感じやすい環境です。

少しでも早く職場に慣れるよう、利用しやすい多言語対応の相談窓口を設置すると、安心して働けるでしょう。

文化・言語の違いに配慮した環境を作る

外国人労働者を受け入れるには、多文化共生の職場を実現する必要があります。

文化や言語の違いに対する理解を深めるために、次のような職場環境を整えておくとよいでしょう。

  • 日本語サポートプログラムの提供
  • 異文化理解のための社内研修
  • 多言語・ジェスチャーや・視覚的資料の提供
  • 連絡手段の多様化

外国人労働者がスムーズに業務をこなせるよう、マニュアルや重要書類・資料を多言語化する必要があります。

コミュニケーションの難しさを補うために、翻訳ツールの導入も検討しましょう。外国人労働者自身の日本語力が上がるよう、日本語学習プログラムを受講できる仕組みの導入もおすすめです。

また、日本人従業員が外国人への理解を深められるよう、社内研修をしておくと外国人労働者への差別や偏見を減らしやすくなります。

宗教的な習慣や行事、食文化、服装など、多様な文化と背景について事前に研修をしておけば、異なる価値観を持つ外国人を受け入れやすくなるでしょう。

外国人雇用手続き時の確認事項と注意点

外国人労働者を雇用する際、法的な要件や労働条件を満たすためにも次の4点を忘れずに確認するよう注意しましょう。

  • 在留資格の種類と有効期限の確認は必須
  • スキルだけでなく語学力も把握する
  • 住居や通勤など必要なサポートがないかを確認する
  • 雇用契約書は外国人労働者が理解できる言語で作成する

1.在留資格の種類と有効期限の確認は必須

外国人は、職種・分野に合った在留資格を持っていないと日本で就労できません。

在留資格に適合しない業務を割り当てることは法律違反となるため、業務内容も慎重に確認しましょう。

  • 在留資格が就労可能な範囲か
  • 在留資格の有効期限を把握する

在留資格を確認できる「在留」カードは、偽造されている場合があるので注意が必要です。

必ず、出入国在留管理庁の「在留カード等執行情報照会」ページや「在留カード等読取アプリケーション」を利用し、在留資格を確認してください。

トラブルや失敗を避けるためにも、法の定めに従って外国人を雇用するよう、必ず就労ビザを確認しましょう。

2.スキルだけでなく語学力も把握する

外国人採用を成功させるためには、職務に必要なスキルに加えて、語学力の確認も重要です。

面接時に会話力や専門用語の理解力をテストし、業務をこなせる語学力の有無を把握しましょう。語学力に不足がある場合は、通訳や翻訳アプリを活用できる体制を整える必要があります。

英語や母国語が業務で役立つ場合には、日本語力だけでなく総合的な語学力で判断する必要があるでしょう。

3.住居や通勤など必要なサポートがないかを確認する

外国人労働者にとって、日本での生活は不慣れで不便なものです。外国人労働者によって日本語力は異なるので、次のようなサポートが必要かを確認しておきましょう。

  • 通勤経路の案内や交通手段の提案
  • ゴミの分別や買い物場所の情報提供
  • 医療機関の利用方法 など

日本で快適に生活ができれば、定着率の向上効果が期待できます。業務だけでなく、生活面で抱えている不安がないかも確認しておくとよいでしょう。

4.雇用契約書は外国人労働者が理解できる言語で作成する

雇用契約書は、外国人労働者が内容を間違いなく理解できるよう、日本語と労働者が理解できる言語の両方で作成する必要があります。

雇用契約書は次の点に着目して作成すると、雇用後のトラブルを防ぎやすくなるでしょう。

  • 労働条件(勤務時間、賃金、休暇、契約期間など)の明記
  • 法律や就業規則に基づいた内容で作成
  • 解雇に関する明記
  • 紛争解決に関する条項
  • 契約書の内容についての口頭説明

労働条件の詳細だけでなく、在留資格や解雇の規定、トラブルの解決手段なども契約書に明記しておくと、誤解を防げます。

母国語の契約書だけでなく、口頭で契約内容を説明する場を設けると、専門用語でわかりにくい部分がある場合も理解しやすくなるでしょう。

外国人労働者の入社後に必要な手続き

外国人労働者の入社後に必要な手続きは、主に次の3種類です。

  • 雇用保険・社会保険の加入手続き
  • 就労ビザの期限と更新スケジュールの管理
  • 生活基盤を整えるための各種手続き

雇用保険社会保険の加入手続き

外国人労働者も、入社後には日本人と同様の雇用保険・社会保険の加入手続きが必要です。

ただし、全ての労働者が対象となるわけではありません。短期雇用や給与、労働時間によっては加入手続きが不要なケースがあります。

下表に対象となる外国人労働者と提出期限、届出先をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

 雇用保険社会保険・厚生年金
対象となる外国人労働者①1週間の所定労働時間が20時間以上であること ②31日以上の雇用見込みがあること①1週間の所定労働時間が20時間以上 ②雇用期間が2か月以上見込まれる ③学生でない ④基本の給与が月額88,000円以上 ⑤雇用された企業の従業員が51人以上
必要書類の準備・雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク指定の様式) (在留カードを確認して記入する欄あり)・被保険者資格取得届(年金事務所の様式) ・個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号 ※短期在留の場合 ・旅券の身分事項のページの写し ・旅券の資格外活動許可証印のページ/資格外活動許可書/就労資格証明書のいずれか
期限雇入れ日の属する月の翌月10日まで事実発生から5日以内
提出先管轄のハローワーク管轄の日本年金機構または健康保険組合

就労ビザの期限と更新スケジュールの管理

雇用期間中、就労ビザの期限切れを防ぐためにも、更新スケジュールも管理するようにしましょう。

  • 更新手続きのスケジュールを事前に計画
  • 必要書類の準備をサポート

例えば技能実習1号の在留資格の場合、更新をしなければ1年しか日本に滞在できません。より長く働いてもらうためには、2号・3号への在留資格の移行手続きが必要です。

2号・3号への在留資格を移行するには、所定の試験に合格する必要があります。3号に移行できれば、技能実習生は最長5年の日本滞在が可能です。

ただし、技能実習3号の在留資格を受け入れるには企業側にも評価基準が定められています。

技能実習生の待遇や実績などの項目で高い水準を満たしていなければならないため、就労ビザの更新手続きには、雇用主の協力が不可欠といえるでしょう。

生活基盤を整えるための各種手続き

入社後、外国人労働者の生活基盤を整えるため、以下のような手続きもサポートしましょう。

  • 住民票の登録
  • 銀行口座の開設
  • 賃貸住宅・電気・ガス・水道の契約
  • スマートフォン・インターネットの契約 など

生活基盤を整えるサポートができれば、外国人労働者の生活が安定します。離職率も抑えられるので、外国人にとって難しい各種契約についてはサポートしてあげましょう。

まとめ

今回は、外国人労働者を雇用する際の手続きについて紹介しました。

外国人労働者を雇用するには、受け入れ準備や雇用手続き、入社後のサポートまで幅広い対応が必要です。 外国人労働者が快適に働ける環境を提供できれば、企業の発展にも繋がります。法令を遵守した社内体制を整え、外国人材の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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