外国人労働者の採用は、多様な人材確保の有力な手段として注目されています。
しかし、語学力のサポートや人材の教育、社内規則の整備などにかかる費用が課題となり、採用をためらっている経営者・担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、外国人雇用で申請できる助成金・補助金について一覧表でまとめ、各制度の概要や注意点についても紹介します。
助成金・補助金を活用すれば外国人雇用のコスト削減が可能
外国人労働者を雇用する際、助成金や補助金の活用で初期費用や運営コストを大幅に削減できます。
外国人雇用に関する法的手続きや就労環境整備に集中しやすくなるので、積極的に利用しましょう。
外国人雇用の支援・補助として受給できるものとして「助成金」と「補助金」がありますが、どちらも返済不要です。
しかし、助成金は基準を満たせば受給できる可能性が高いのに対し、補助金は定員や予算などに限りがあり、必ずしも受給できるとは限りません。
管轄についても、助成金は主に厚生労働省、補助金は主に経済産業省や地方自治体という違いがあります。
外国人労働者については複数の助成金がありますが、条件によっては50万円以上の補助金が出る地方自治体も珍しくありません。利用できる制度がないか、地方自治体にも確認してみましょう。
外国人雇用で利用できる主な助成金・補助金一覧と概要
外国人雇用で利用できる主な助成金・補助金、支援制度は、下表のとおりです。
助成金 | 支給額 |
トライアル雇用助成金 (一般トライアルコース) | 支給対象者1人につき 月額4万円×3か月=最大12万円 |
人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) | 上限額72万円 |
キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 1人あたり 最大80万×20人=最大1,600万円 |
人材開発支援助成金 | 助成率は45%〜最大100% |
業務改善助成金 | 最大600万円 |
雇用調整助成金 | 上限1人8,635円/日 |
補助金 | 支給額 |
国際化促進インターンシップ事業 | 1日・1人あたり 2,000円 |
地方自治体独自の補助金制度 | 自治体により異なる |
支援制度 | 支援内容 |
外国人雇用管理アドバイザー制度 | 外国人労働者の雇用管理の改善や職業生活上の問題などの 相談料が無料 |
製造業外国人従業員受入事業 | 海外事業所の従業員が在留資格「特定活動」を取得して 日本国内で最大1年間働ける支援制度 |
ここでは主に、上表の助成金と「国際化促進インターンシップ事業」について紹介します。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)とは、職業経験が浅い人を原則3か月の有期雇用する際に活用できる助成金です。
1人あたり月額4万円まで支給されるため、最大で12万円を受け取れます。
ただし、支給対象となるのはハローワークを通した採用で、一定の要件を満たす必要があるので注意が必要です。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者の就労環境を整備するための助成金です。
通訳費や翻訳機器導入費、弁護士・社会保険労務士への委託料、社内標識類の設置・改修費などの経費が対象で、要件を満たせば最大で72万円の助成を受けられます。
支給額(上限額) | |
賃金要件を満たしていない場合 | 支給対象経費の1/2(上限額57万円) |
賃金要件を満たす場合 | 支給対象経費の2/3(上限額72万円) |
外国人をこれから採用したい場合、社内の整備にかかるコストを大幅に削減できるので、積極的に活用しましょう。
主な受給要件は、次のとおりです。
- 外国人労働者を雇用している事業主であること
- 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
- 1.雇用労務責任者の選任
- 2.就業規則等の社内規程の多言語化
- 3.苦情・相談体制の整備
- 4.一時帰国のための休暇制度の整備
- 5.社内マニュアル・標識類等の多言語化
- 就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、正社員以外の従業員を正社員として雇用する際に支給される助成金です。
中小企業であれば、対象の従業員1人あたり最大80万円が支給され、1年間で最大20人まで対象とできるので、合計1,600万円の助成金を受け取れます。
ただし、本助成金は「有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する」目的のため、次の在留資格を持つ外国人労働者は対象外となる点に注意が必要です。
- 技能実習
- 特定技能第1号
- 留学生 など
なお、キャリアアップ助成金には正社員化コース以外にも次のようなコースがあります。場合によっては外国人雇用に活用できるので、確認してみましょう。
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金とは、従業員のスキルアップや教育をする際にかかる訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
外国人労働者への教育が必須条件ですが、中小企業なら経費助成率が45%〜最大100%と非常に高く、活用すれば大幅なコスト削減効果が見込めます。
人材開発支援助成金には6つのコースがありますが、全てのコースで外国人労働者でも利用可能です。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 人への投資促進コース(長期教育訓練休暇、教育訓練短時間勤務等制度関係)
- 事業展開等リスキリング支援コース
既存の訓練や新事業展開に利用できるので、汎用性の高い助成金といえるでしょう。
業務改善助成金
業務改善助成金とは、事業場内の最低賃金を30円以上アップさせ、生産率向上のための設備投資を行った際に活用できる助成金です。
PCやタブレットのような端末や周辺機器の新規導入も対象となり、最大600万円が支給されるため、活用すれば大きなコスト削減効果が見込めるでしょう。
ただし、地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げを完了する必要がある点に注意が必要です。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済上の理由から事業を縮小せざるを得なくなった事業者に対し、雇用維持のために休業・教育訓練・出向にかかった費用を助成する制度です。
1人1日あたり8,635円の支給上限がありますが、休業・教育訓練の場合、初日から1年間で最大100日分、3年間で最大150日分の助成を受けられます。
最近3か月間の売り上げ・生産量の平均値が前年同期より10%以上減少しているなどの条件がありますが、雇用の維持に悩む事業者にとって活用しやすい制度といえるでしょう。
国際化促進インターンシップ事業
国際化促進インターンシップ事業は、外国人学生をインターンとして受け入れることで、日本企業の海外ビジネスの拡大促進のために設けられた事業です。
助成制度のように、どの企業も要件を満たせば利用できるものではありません。期間内にエントリーし、マッチング結果によってインターン希望者の同意が得られた場合に利用できます。
人材育成支援費として1日1人あたり2,000円の支給を受けられるので、コストを抑えつつ外国人材を試しに受け入れてみたいという企業に向いているでしょう。
まとめ
今回は、外国人雇用で利用できる助成金や補助金について紹介しました。
助成金や補助金を活用すると、外国人労働者の雇用に伴うコストを大幅に軽減できるため、より充実した労働環境整備の整備や教育・研修が可能となります。
まずは、自社の状況に合った助成金・補助金を確認してみてください。
外国人雇用に関する不安や困りごとがあるなら、ハローワークが無料で提供している「外国人雇用管理アドバイザー制度」を利用してみてはいかがでしょうか。