外国人労働者の実態解説

日本では、外国人労働者が年々増え続けています。少子高齢化による人手不足が深刻化する日本において、外国人労働者は重要な存在です。

一方で、低賃金・長時間労働を強いている企業が社会問題になっており、十分な能力があるにもかかわらず不当な扱いを受けている外国人労働者も少なくありません。

今回は、外国人労働者を採用している企業や業界の特徴と、実際のスキル・日本語レベルについて紹介します。

外国人労働者の採用企業・業界の特徴と移民政策

日本で働く外国人は、実際にどのような分野で活躍しているのでしょうか。

ここでは外国人労働者を積極的に採用している企業や業界の特徴と、日本政府が取り組む移民政策について解説します。

外国人労働者の採用状況と企業・業界の特徴

厚生労働省の統計によれば、2023年10月末時点で日本国内の外国人労働者数は200万人を超え、過去最高を記録しました。

増加率は前年比で12.4%となっており、特に技能実習生や特定技能ビザを含む専門的・技術的分野の在留資格を有する労働者の増加が顕著です。

外国人労働者を採用する企業は、大手だけでなく中小企業でも広がりをみせています。

外国人を雇用する事業所数を事業所の規模別に見ると、全体の6割以上を占めるのは30人未満の中小企業です。

また、産業別に見ると最も多いのは全体の27%を占める「製造業」で、在留資格は約36%が「技能実習」となっています。

順位産業別外国人労働者数全体に 対する割合
1製造業27%
2サービス業(他に分類されないもの)15.7%
3卸売業・小売業12.9%
4宿泊業・飲食サービス業11.4%
5建設業7.1%
6医療・福祉4.4%

一方で、外国人を雇用する事業所数は「卸売業・小売業」が最も多い割合です。

順位産業別外国人労働者を雇用する事業所の割合
1卸売業・小売業18.7%
2製造業17.2%
3宿泊業・飲食サービス業14.3%
4建設業12.4%
5サービス業(他に分類されないもの)7.9%
6医療・福祉6.4%

製造業や卸売業・小売業で、多くの外国人労働者の受け入れをしている状況です。

ただし、人手不足が深刻な建設業や医療・福祉業界では、外国人雇用事業所数の対前年増加率が10%以上となっており、今後も増えていくと考えられます。

外国人労働者の需要が多くの業界で高まりをみせる一方で、労働環境や待遇が十分でないケースも多く、短期間で離職する例も少なくありません。

政府の移民政策と外国人労働者受け入れ状況

日本の移民政策としては、2019年4月に施行された「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が挙げられます。

本法律により、人材不足が顕著な分野に対しスキルがある外国人材向けの在留資格「特定技能」が設けられました。

しかし、特定技能1号の場合は5年の在留期限があり、永住を促すものではありません。

また、家族の帯同はより熟練したスキルが求められる「特定技能2号」の在留資格にしか与えられず、外国人労働者にとって厳しい条件といえるでしょう。

実際に働く外国人労働者のスキルと日本語力

外国人の採用を検討している企業・経営者が気になるのは、実際に働く外国人労働者のスキルや日本語力ではないでしょうか。

ここでは、外国人労働者が持つスキルや日本語力と、企業が求めるレベルとのギャップについて紹介します。

外国人労働者の一般的なスキルレベル

母国で培った職務経験や専門教育により、高度なスキルを有する外国人労働者も珍しくありません。

特に特定技能や高度専門職のような専門的・技術的分野の在留資格がある外国人労働者は、日本の企業に不足しているスキルを補う貴重な存在となっています。

一方で、教育目的で受け入れている技能実習生の場合、未経験の分野に初めて挑むケースも多く、日本語力の低さもあり指導に時間を要することがあります。

日本の企業で求められる日本語力・スキルとのギャップ

多くの日本企業は、技術的なスキルだけでなく、細やかなコミュニケーション能力や報連相(報告・連絡・相談)を重視しています。

株式会社日本総合研究所が公表している「人手不足と外国人採用に関するアンケート調査」結果によると、日本語力の高さを重視して外国人を採用する企業が多い傾向です。

日常会話レベルでは仕事が進まず、ビジネスレベルの日本語力を求める企業も珍しくありません。

しかし、外国人にとって日本語は複雑な構成のため難しく、ビジネスレベルの会話が可能な人でも、ゆっくりと話さないと伝わらない場合があります。

一方で、翻訳機能の進化により、コミュニケーションの壁が低くなったと感じている企業もあり、語学力のギャップは今後少なくなっていくでしょう。

また、能力・スキルについては、外国人労働者の活躍を「期待以上」「ほぼ期待通り」と評価する企業は77%を超えており、満足している企業が多い結果です。

十分な活躍が期待できる外国人労働者を、日本語力が低いからと採用を見送るのは「もったいない」といえます。

外国人労働者を雇用する際には、日本語教育やコミュニケーション方法を工夫する必要があるでしょう。

外国人労働者をめぐる人権問題

日本では日本国憲法第14条にて、すべての国民は法の下に平等であると明記されています。

また、日本が批准・加入している「世界人権宣言 自由権規約」「人種差別撤廃条約」でも、肌の色や人種などによる差別は認められていません。

しかし実際には、在日外国人のうち3割が差別を受けた経験があると回答しています。ここでは、外国人労働者が受けている人権問題について紹介します。

違法で過酷な労働環境

技能実習制度を悪用し、外国人を不当な待遇で働かせる違法労働が社会問題となっています。

2016年の国の調査では、外国人技能実習先のおよそ7割で外国人の違法労働が発覚。「外国人労働者は安く雇える」と勘違いしている企業・経営者も、少なくありません。

しかし、日本の最低賃金は外国人労働者にも適用され、日本人と同等の作業をしていれば同等の賃金を支払う必要があります。

外国人労働者だからといって劣悪な環境・条件で労働を強いるのは、重大な人権問題です。

外国人労働者に対する以下のような労働環境や条件は法律で禁止されており、注意する必要があります。

  • 長時間労働
  • 賃金・残業代の未払い
  • 長時間労働
  • 講ずべき安全措置をとっていない
  • パスポートや預金通帳の取り上げ など

外国人労働者への人権侵害は、受け入れ企業だけでなく、日本全体のイメージに悪影響を与えるため、社会全体での早急な意識改革・改善が必要です。

差別・偏見・ハラスメント問題

外国人労働者に対する差別や偏見、職場でのハラスメントも課題のひとつです。

差別や偏見が生まれる原因として、文化的な誤解やコミュニケーション不足が挙げられます。

外国人労働者の採用を成功させるためには、多様性を認め、組織の一員として受け入れる姿勢が必要です。

管理職を含めた全従業員の意識改革と研修を実施する他、次のような制度を設けるとよいでしょう。

  • 外国人労働者向けの相談窓口
  • 外国人労働者のサポート担当者
  • 日本語学習のサポート制度
  • 外国人へのわかりやすい伝え方の周知・マニュアルの整備

地域・コミュニティ全体の理解不足

地域住民や自治体の理解不足も、外国人労働者が孤立する原因のひとつです。

外国人労働者が地域で受け入れられていないと感じていると、離職する可能性も高まります。

社内だけでなく、地域・コミュニティに外国人が馴染めるよう、次のような取り組みを検討してみてください。

  • 地域イベントへの参加
  • ボランティア活動への参加
  • 外国人労働者を含め、企業による地域との交流

外国人に対して恐怖を抱く「ゼノフォビア」の性質を持つ人も珍しくありません。地域住民に差別している意識はなくても、外国人にとっては差別言動をされたと感じる可能性があります。

意図せぬ差別で外国人労働者や地域住民が悩まぬよう、交流を持つ機会提供も検討しましょう。

まとめ

今回は、外国人労働者の実態として採用状況やスキル・日本語レベル、人権問題について紹介しました。

外国人労働者は、主に人手不足が深刻な分野で年々増加しています。

コミュニケーションが難しい反面、外国人を採用した7割以上の企業で外国人の活躍について「期待以上」「期待通り」と評価しているデータもあります。

外国人労働者を採用する際には、関連する法律や制度を十分に理解した上で、適切なサポート体制を整えることが不可欠です。

社内だけでなく地域・コミュニティ全体で多様な文化を尊重できるよう、意識を高める機会を提供すると、外国人労働者も活躍しやすくなります。

自社の未来を切り拓くためにも、人権問題に配慮した外国人労働者の受け入れ準備を始めましょう。

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