近年、外国人労働者の受け入れが注目されています。少子高齢化により日本国内の労働力不足が深刻化する中、多様な文化背景を持つ外国人の労働参加は、日本企業にとって魅力的な選択肢のひとつです。
しかし、文化や言語、風習に違いがある外国人労働者の受け入れは、メリットだけでなくデメリットも存在します。
成功させるためには、慎重な対応と環境整備が必要です。本記事では、外国人労働者を受け入れるメリットとデメリット・問題を解説し、成功させるためのポイントを紹介します。
外国人労働者受け入れのメリット
外国人労働者を受け入れる主なメリットは、次の5点です。
- 人手不足解消による生産性向上
- ダイバーシティの推進による組織力強化
- 新たな価値観によるイノベーション
- 海外進出の機会創出
- 助成金・補助金の活用による採用コスト削減
1.人手不足解消による生産性向上
日本の労働市場では少子高齢化に伴い、多くの業界で人手不足が深刻化しています。特に建設業、介護業界、サービス業では、人材確保が難しくなる傾向が続いている状況です。
外国人労働者の受け入れにより人手不足を解消できれば、労働生産性を高める効果が期待できます。
また、特定技能や専門的・技術的な分野の在留資格を持つ外国人なら、即戦力としての採用も可能です。労働市場の柔軟性を高める点でも、外国人材は重要な存在といえるでしょう。
2.ダイバーシティの推進による組織力強化
異なる文化的背景を持つ外国人が従業員として加わると、職場にダイバーシティ(多様性)が生まれます。
従業員同士の協力や学びが促進され、より柔軟で革新的な社風が生まれ組織力の強化にもつながるでしょう。
また、外国人労働者がもたらす異なる考えや文化は、新たな風となり社員のモチベーション向上にもつながり、企業の魅力を高める要素となり得ます。
結果的に離職率の低下や採用力の向上など、副次的な効果も期待できるでしょう。
3.新たな価値観によるイノベーション
外国人労働者が持つ多様な視点や経験は、思いつかなかったような新しいアイデアやイノベーションを生み出す原動力となります。
異なる文化的背景を活かした商品開発やサービス提供が可能になり、国内外での競争力を強化するきっかけにもなるでしょう。
特に企業が新規市場に進出する際には、多様な視点がプロジェクトの成功を左右する鍵となります。
多様な文化・思想などの新たな価値観により生まれたアイデアは、問題解決の糸口となり、場合によっては新商品の開発も促進されるでしょう。
4. 海外進出の機会創出
外国人労働者が持つネットワークを活用すれば、企業の海外展開がスムーズになる可能性があります。
現地の言語や文化に精通した外国人材を登用すれば、新規の国際市場へアプローチしやすくなり、海外向けの事業展開の加速も可能です。
外国人労働者を母国との取引役・橋渡し役にすれば、他国でもより強固なビジネス基盤を築けるでしょう。
5.助成金・補助金の活用による採用コスト削減
日本政府は外国人労働者の受け入れ促進のため、企業に対して次のような助成金や補助金を用意しています。
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
- 雇用調整助成金
- トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
- キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
- 国際化促進インターンシップ事業
外国人労働者を受け入れる際、苦情・相談体制や一時帰国のための休暇制度の整備、各種マニュアルの多言語化など、コストがかかります。
しかし、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)を活用すれば最大72万円の助成を受けられるので、コストを抑えた外国人採用が可能です。
また、経験の浅い外国人労働者を育成する場合、人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金などの活用もできます。
雇用にかかるコストを抑えながら、必要な人材を確保しやすいのも、外国人採用のメリットといえるでしょう。
外国人労働者受け入れのデメリット
メリットが多い外国人労働者の受け入れですが、デメリットもあります。
外国人の受け入れで失敗しないためにも、デメリットや注意点も把握した上で、受け入れ体制を整えてから外国人採用を決めましょう。
- 文化や言語の壁がある
- 教育やサポートにコストがかかる
- 在留資格によっては法律違反になるリスクがある
1.文化や言語の壁がある
文化・価値観の違いや言語の壁は、外国人労働者を受け入れる際の大きな課題です。
意思疎通の難しさや価値観の違いが、職場内でトラブルを生む可能性があります。
文化や言語の違いによるトラブルを克服するには、企業側がコミュニケーション方法を工夫することが必要です。
例えば、次のような工夫を取り入れてみてください。
- ストレートな表現で要点を伝えるよう書類・話し方を工夫する
- やさしい日本語でゆっくりと話す環境を作る
- 外国人の文化・背景を尊重するよう社内環境を徹底する
- 外国人労働者が日本語を学びやすい環境を整備する
- 翻訳や多言語対応ツールを導入する
2.教育やサポートにコストがかかる
外国人労働者をスムーズに受け入れるためには、研修や教育に力を入れる必要があり、制度を整えるにはコストがかかります。
日本での生活に馴染むための生活支援や、カウンセリングなどのサポートも必要です。
ただし、日本の業務慣習や法律を学び、技術的なスキルの習得や生活を支援するプログラムの整備は、長期的な視点で考えると有効な投資といえます。
最初に制度を整えてしまえば継続的に外国人の雇用がしやすくなり、将来にわたる安定した人材確保が実現可能です。
外国人労働者を受け入れるノウハウができれば、他社にない強みとして企業価値の向上効果も期待できるでしょう。
3.在留資格によっては法律違反になるリスクがある
外国人が持つ在留資格によっては、雇用できない職種があるので注意が必要です。就労できる在留資格がない外国人を雇用した場合、企業は法律違反に問われるリスクがあります。
また、外国人労働者自身が法制度を理解しておらず、トラブルに発展するリスクも否定できません。
必ず、外国人労働者を雇用する前に在留資格を確認し、弁護士や出入国在留管理庁などの専門窓口にも確認・相談をしましょう。
外国人受け入れを成功させるための3つのポイント
外国人労働者問題を避け、受け入れを成功させるためにも、次の3ポイントをおさえておきましょう。
- 適正な労働条件での受け入れ
- ダイバーシティとインクルージョンの浸透
- 差別・ハラスメントを認めない社内環境の整備
1. 適正な労働条件での受け入れ
外国人労働者を受け入れる際は、日本人労働者と同等の労働条件を整える必要があります。
日本人と同等の作業をしているのにもかかわらず、外国人労働者を安く働かせるのは違法です。教育を目的とした技能実習生でも、最低賃金以下での雇用はできません。
外国人労働者を受け入れる前に、賃金や福利厚生、労働時間など、公平性を保つよう適正な労働条件で雇用できるよう、就業規則を含めた整備が必要です。
法律に則った適正な労働条件での外国人雇用は、トラブルを未然に防げるだけでなく、企業の信頼性や社会的評価を高めることにもつながるでしょう。
2.ダイバーシティとインクルージョンの浸透
外国人労働者を受け入れるには、ダイバーシティ(多様性)の尊重だけでなく、インクルージョン(包摂)の実現も成功の鍵です。
優秀な外国人材を獲得するためにも、人種や文化、価値観などの多様性を認め合うだけでなく、組織の一員として尊重され、活躍できる職場環境である必要があります。
外国人労働者を含むすべての従業員が安心して意見を発信できる環境を作り、相互理解を深める取り組みを行う必要があるでしょう。
また、管理職を対象にしたダイバーシティ研修の導入や、定期的なフィードバックセッションも効果的です。
3.差別・ハラスメントを認めない社内環境の整備
外国人労働者が安心して働ける環境作りのために、差別やハラスメントを防ぐ取り組みは不可欠です。
社内規定の明文化や日本人従業員に向けた研修の実施により、すべての従業員にとって公平で安全な職場環境が作れるでしょう。
また、全従業員が利用できる相談窓口の設置や、匿名で意見を投稿できる仕組みの導入も効果的です。
差別やハラスメントを許さない企業の姿勢は、働きやすい環境作りにもつながります。外国人だけでなく日本人従業員の満足度も上がり、離職率の低下にも役立つでしょう。
まとめ
今回は、外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットと、問題を回避し外国人採用を成功に導くポイントを紹介しました。
外国人労働者の受け入れは適切な準備と運用次第で、企業にとって大きなメリットをもたらします。 外国人の雇用により多文化共生の職場環境が実現できれば、企業価値の向上や海外進出の足掛かりにもなるでしょう。