日本の外国人就労制度を徹底解説!

-受け入れ職種と採用メリットとは?

人手不足が深刻化し続ける昨今、日本で働く外国人が増え続けています。外国人労働者の受け入れを検討している企業・経営者も、多いのではないでしょうか。

日本で外国人が働くには、活動内容に応じた在留資格が必要です。主な資格には「技術・人文知識・国際業務」(ITエンジニアなど)や「特定技能・技能実習」(介護、外食など)、高度な専門性を持つ「高度専門職」などがあります。企業は雇用前に在留資格を確認し、ハローワークへの届け出を行う義務があります。また、特定技能制度では人手不足分野で即戦力となる外国人を受け入れ、家族帯同が可能な資格もあります。制度は随時改正されるため、最新情報を確認することが重要です。

今回は、在留資格の違いと受け入れ可能な職種、外国人材を採用するメリットについて紹介します。

日本における外国人就労制度|就労ビザと技能実習制度・特定技能制度の違い

日本には29種類の在留資格がありますが、就労が認められる在留資格は高度専門職ビザとあわせて17種類で、一般的に「就労ビザ」と呼ばれるものです。

ここでは、就労ビザを「専門的・技術的な分野の在留資格」「技能実習」「特定技能」に分類し、制度の概要を紹介します。

就労ビザ(専門的・技術的な分野の在留資格)

就労ビザのうち「専門的・技術的な分野の在留資格」が得られるのは、日本企業が求める専門スキルや知識を持つ外国人です。

技術・人文知識・国際業務の在留資格と、高度専門職のビザを所有する人が多い傾向にあります。

厚生労働省によると、2023年10月末時点で約59.6万人の外国人が専門的・技術的な分野の在留資格を得て就労しているとされています。

多くの場合で一定の学歴や職務経験が求められており、特定技能制度による在留資格を含め、即戦力としての活躍を期待されている在留資格です。

技能実習制度と特定技能制度

日本の外国人就労制度である「技能実習制度」と「特定技能制度」には、下表のような違いがあります。

 技能実習制度特定技能制度
目的技術や知識を学び、母国で活用することを支援する教育的な制度日本国内の人手不足解消を目的とした即戦力となる労働力の確保
対象分野農業・建設・食品製造業・介護など90職種以上特定技能1号:16分野 特定技能2号:11分野
必要なスキル実習前に特定のスキルは不要(介護職は日本語能力試験のN4・N3合格者か同等以上の日本語力が必要)特定技能1号:技能試験・日本語試験に合格(技能実習2号修了者は試験等免除) 特定技能2号:高度な専門技能が必要
在留期間最長5年特定技能1号:最長5年 特定技能2号:更新の上限なし
家族の帯同認められない特定技能1号:認められない 特定技能2号:要件を満たせば可能(配偶者、子)
給与水準日本人と同等以上の待遇が求められる ※非正規雇用者の中の有期雇用労働者に該当同じような職務を行う日本人従業員と「同等またはそれ以上」

技能実習制度(2030年頃に「育成就労制度」へ移管)

技能実習制度は、主に開発途上国の人々が日本で実務を通じて技術や知識を獲得し、帰国後に母国で活かすことを目的とした制度です。

農業・漁業・建設業・食品製造業・介護など約90の分野が対象で、実習期間は最長で5年の限りがあります。

技能実習制度は実習生の教育や技術の獲得が目的であるため、単なる労働力として業務をさせることはできません。

また受け入れ企業には、労働時間や給与、生活面でのサポートなどを含めた適切な環境を整え、技能実習生の権利を守る責任もあります。

なお、2024年6月に技能実習に関する法改正が可決され、早ければ2027年には「育成就労制度」が施行され、2030年には制度の移行が完了する予定です。

育成就労制度では目的が「人材育成」から「人材の確保」に変わり、特定技能への移行を前提とした在留資格となります。

受け入れ可能な職種が特定技能のうち、国内での育成になじまない分野は対象外となり、技能実習より限定的です。 しかし育成した外国人材を長期的に確保できるのは、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。

特定技能制度

特定技能制度は、深刻な人手不足が続く日本の産業を支えるために、2019年から開始された制度です。この制度は、即戦力となるスキルを持った外国人労働者を受け入れ、人手不足を解消する目的で導入されました。

特定技能制度は技能実習制度とは異なり、労働力の確保を主な目的としている点が特徴です。

そのため、技能実習制度よりも、高い水準の技術力が求められる在留資格となっています。

特定技能2号であれば在留期限の更新に上限はなく、配偶者や子どもであれば家族の帯同が可能なため、安定して人材を確保できるでしょう。

【制度別】外国人労働者の受け入れが可能な主な職種

就労が認められる在留資格によって、受け入れ可能な職種は異なります。就労可能なビザを持っていても、職種によっては受け入れできない場合があるので注意が必要です。

ここでは、20240年12月現在、就労ビザ・外国人就労制度別に外国人の受け入れが可能な職種について紹介します。

就労ビザ(専門的・技術的分野の在留資格)で受け入れ可能な職種

専門的・技術的分野の在留資格と受け入れ可能な職種は、主に下表のものとなります。

在留資格具体的な職種例
教授大学教授、助教授、助手など
芸術作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など
宗教僧侶、司教、宣教師など
報道新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど
技術・人文知識・国際業務機械工学等の技術者、ITエンジニア・企画、営業、経理などの事務職・英会話学校などの語学教師、通訳・翻訳、デザイナー、私企業の語学教師
企業内転勤外国の事業所からの転勤者
技能外国料理人、外国建築家、貴金属等加工職人、パイロット、スポーツ指導者
介護介護福祉士の資格を有する介護士など
経営・管理外資系企業の経営者・管理者
法律・会計業務弁護士、公認会計士、司法書士、税理士など
医療医師、歯科医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師など
研究政府関係機関、企業等の研究者、調査員など
教育高等学校、中学校等の語学教師
興行演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど
高度専門職就労資格の決定の対象となる範囲の外国人で、学歴・職歴・年収等の項目ごとにポイントを付け、合計70点以上に達した者

上記の在留資格は、各在留資格で認められた範囲内でのみ活動が可能です。範囲外の活動をする場合には「資格外活動許可(個別許可)」を取得する必要があります。

ただし、職種や勤務先、活動内容について個別に審査され、活動範囲は限定的となるため、在留資格の範囲外の職種での受け入れは、現実的に難しいといえるでしょう。

技能実習制度で受け入れ可能な職種

技能実習の在留資格は技能実習制度を利用する外国人が認められるもので、90以上の職種で受け入れが可能です。

  • 農業
  • 漁業
  • 建設
  • 食品製造
  • 繊維・衣服
  • 機械・金属
  • 印刷・製本
  • プラスチック成形・強化プラスチック成形
  • 溶接・塗装
  • 自動車整備
  • 介護
  • 宿泊 など

厚生労働省によると、2023年10月末時点で約41.3万人の外国人が技能実習生として就労しています。

技能実習は専門的・技術的な分野の在留資格よりも受け入れ可能な職種が幅広いものの、労働力のみを目的とした受け入れはできません。

あくまでも「教育目的」での受け入れである点に注意しましょう。

特定技能制度で受け入れ可能な職種

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、受け入れ分野や技能水準など、下表のような違いがあります。

 特定技能1号特定技能2号
分野<16分野> 介護 ビルクリーニング 工業製品製造業 建設 造船・舶用工業 自動車整備 航空 宿泊 自動車運送業 鉄道 農業 漁業 飲食料品製造業 外食業 林業 木材産業<11分野> ビルクリーニング 工業製品製造業 建設 造船・舶用工業 自動車整備 航空 宿泊 農業 漁業 飲食料品製造業 外食業
在留資格特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務に従事する外国人向け定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け
日本語水準生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認試験等での確認は不要

特定技能1号よりも2号のほうが、より高度な技能が求められます。また、2号であれば更新による在留期間の上限がなく、配偶者や子供であれば帯同も可能です。

なお、1号では日本語のスキルが求められるのに対し、2号では日本語能力試験はありません。 2号は高度な技能や経験があれば、日本語能力は問われずに在留資格を得られる点が特徴といえるでしょう。

外国人労働者を受け入れるメリット

外国人労働者を受け入れるメリットは、主に次の3つです。

  • 人手不足の解消と労働力の確保ができる
  • 助成金を使える
  • 社内のグローバル化や海外進出の機会を創出ができる

人手不足の解消と労働力の確保ができる

日本では少子高齢化の影響により、多くの業界で人手不足が問題となっています。

特に「医療・福祉」「建設業」「運輸業・郵便業」では、人材が深刻な状況です。

人材不足で悩んでいるなら、技能実習制度や特定技能制度の活用を検討しましょう。

技能実習制度であれば、外国人を育成する社会貢献をしつつ、労働力不足の緩和が可能です。また、特定技能制度を利用してすでにスキルを持った外国人を採用できれば、長期的に現場で活躍してもらえます。

結果として、生産性の向上や事業の安定化にもつながるでしょう。

助成金を使える

外国人労働者の雇用により、次のような助成金を活用できます。

人材確保等支援助成金の場合、外国人労働者の雇用で発生した対象の経費について、要件を満たせば最大で72万円の助成金を受け取れます。

また地方自治体によっては、地域の産業活性化を目的にした独自の助成金が用意されている場合もあります。

助成金を活用すれば、外国人労働者の採用にかかる企業の負担軽減が可能です。

受け入れを検討している場合は、利用できる助成金がないか、確認しましょう。

社内のグローバル化や海外進出の機会を創出ができる

外国人労働者を受け入れる大きなメリットとして、社内のグローバル化を促進できる点が挙げられます。

多様な文化や視点が加われば、チームのコミュニケーションが活性化し、新しいアイデアが生まれ、イノベーションが発生しやすくなります。

また、外国人労働者が母国の市場に関する知識やネットワークを持っている場合、海外展開を計画している企業にとって大きなアドバンテージにもなるでしょう。

現地の市場調査やビジネスの橋渡し役としての活躍も期待できます。 外国人労働者の雇用は人手不足・人材不足を補うだけでなく、企業の成長戦略にも貢献する大きな可能性を秘めているといえるでしょう。

まとめ

今回は、日本における外国人の就労制度や、在留資格別に受け入れ可能な職種を紹介しました。

外国人労働者の受け入れは、多くの企業が抱える人手不足問題を解決に導く有効な手段となります。

外国人の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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