日本の少子高齢化による「2030年問題」とは?人材不足の業界と人手不足の対策

日本では長年、少子高齢化が社会問題となっており、近い将来には深刻な人手不足が予測される「2030年問題」が控えています。

労働人口の減少は日本経済にも悪影響を及ぼしているため、労働人口を増やすための少子高齢化対策は重大な課題です。

本記事では、日本の少子高齢化が引き起こす2030年問題と背景について紹介し、人材不足への対策・解決策を紹介します。

日本の少子高齢化が引き起こす「2030年問題」とは?

日本では1970年代前半の「第二次ベビーブーム」以降、出生率が下がり続けています。歯止めがかからない少子高齢化は、長く続く日本経済の低迷にも影響を与える深刻な問題です。

ここでは、少子高齢化が進み続ける背景や人手不足が拡大するとされる「2030年問題」、人材が不足している業界について紹介します。

少子高齢化の背景

日本の少子高齢化は、出生率の低下と平均寿命の延びが同時進行したために深刻化しています。

厚生労働省によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は2023年に1.20となり、過去最低を記録しました。

出生率低下の主な原因として、結婚年齢の上昇や非婚化、経済的負担、育児支援体制の不足などが挙げられます。不況の長期化により、必要な資金を確保できずに結婚や出産をためらう人が増えたことが、少子化を加速させている要因といえるでしょう。

また、平均寿命が延びたのは、医療技術の進歩や、生活環境の改善が主な要因です。65歳以上の高齢者が増えた反面、15~64歳の労働人口が減少しているため「人手不足」問題が顕在化しています。

「少子高齢化」は、経済成長や社会保障の維持にとって重大な問題であるにもかかわらず、日本政府による効果的な対策はなされていません。

日本経済の成長率と2030年問題

内閣府のデータによると、2030年頃の実質GDP成長率は0.7%程度と、鈍化傾向ではあるもののマイナスにはならない予測です。少子高齢化による労働人口の減少度から見ると、成長率の鈍化は小幅といえます。

一方で、いわゆる「団塊世代ジュニア」が定年を迎える2030年頃には、労働力の需要が今より高まる予測です。

そのため、2030年頃には次のような問題が深刻化すると考えられています。

  • 労働力不足・労働需給ギャップの拡大
  • 現役世代の社会保障費の負担増加
  • 医療・介護・福祉業への依存の高まり
  • 国内の経済成長率・GDPの低迷
  • 人材獲得競争の激化

「働き手を募集しているのに、人材が集まらない」という労働需給ギャップは、労働力不足により、見込んでいた収益が得られなくなる状況を生み出します。

収益を上げるためには人手が必要となるため、人材の奪い合いが激化するでしょう。

また、高齢者増加による医療費・介護費の増加も少ない現役世代に「負担」としてのしかかるため、資金不足によって結婚や出産を控える人もますます増えると考えられます。

この「2030年問題」を解決するには、減少する労働力に対し、いかに生産力を向上させ、日本経済の成長率を回復させるかも重要なポイントとなるでしょう。

人手不足・人材不足が深刻な業界

少子高齢化や社会制度の影響により、現在の日本では特に次の業界で人手不足が深刻な状況になっています。

  • 介護・医療・福祉業界
  • 建設業界
  • 物流業界
  • IT・情報サービス業界

1940年代後半生まれの「団塊の世代」は、多くが75歳前後の年金受給者です。医療・介護・福祉サービスを受ける人も多く、医師・看護師・介護士の需要が急増しています。

一方で、看護師・介護士は、専門職でありながら低賃金で長時間労働を課せられているため、人材確保が困難な状況です。

また2024年4月には、それまで建設業界や物流業界では猶予されていた「時間外労働の上限規制」が適用開始となり、人手不足が叫ばれています。

IT・情報サービス業界では、急速に進化する技術に対応できる人材が不足。需要の拡大に追いつくよう、人材を育成していく必要があるでしょう。

人手不足・人材不足問題を解決へ導く対策

少子高齢化が進む日本において、人手不足・人材不足の問題解決は急務です。少ない労働力を確保し、生産力を上げるために、企業や経営者がとるべき対策として次の5つが挙げられます。

  1. より効果的な募集・採用手法の導入で人材確保
  2. 労働環境の改善で従業員の定着率アップ
  3. AIの活用・DXによる業務効率化で人手不足を緩和
  4. 外国人労働者の活用と支援体制の構築
  5. 多様な働き方・柔軟な雇用制度の導入

来る「2030年問題」に備えるためにも、ぜひ紹介する対策を検討してみてください。

1.より効果的な募集・採用手法の導入で人材確保

人材を確保するためには、まず「人材募集」をする必要があります。まず、どのような人材を求めているかターゲット層を絞りましょう。「ターゲット層を絞ると、人材が集まらないのでは?」と思われがちですが、採用後のミスマッチを防ぎやすくなり、時間やコスト削減の効果も期待できます。

自社の魅力を効果的にアピールするために「強み」、改善点を明確にするために「弱み」の棚卸しも必要です。優秀な人材を確保する戦略を立てやすくなります。

ターゲット層が就職・転職活動に使用しているチャンネルについても、リサーチが必要です。優秀な人材を逃さないためにも、求人広告や転職サービスでの採用にこだわらず、次のような手法もぜひ検討してみてください。

  • SNS・DMでの呼びかけ(ダイレクトリクルーティング)
  • 採用イベントへの参加
  • インターンシップや職場体験の導入
  • ヘッドハンティング
  • 信頼できる社員・知人の紹介(リファラル採用)
  • 退職者への声がけ(アルムナイ採用)

2.労働環境の改善で従業員の定着率アップ

従業員の定着率を向上させる「労働環境の改善」も、有効な人手不足対策です。働きやすい環境であれば、離職率を下げられるだけでなく、生産性の向上も期待できます。

従業員の定着率・生産性アップを目指すなら、次のような対策が有効です。

  • 労働時間・休日・給与など、労働条件の見直し
  • ハラスメントの防止
  • キャリアアップ支援
  • 福利厚生の充実

ライフワークバランスを重視する人が増えているため、残業や休日出勤が多い場合には労働環境の改善が必要です。

従業員が「やりがい」を感じられるよう、労働に見合った給与になっているかも見直しましょう。キャリアアップの支援制度を整えると、意欲的な従業員の成長をうながし、優秀な人材確保にもつながります。

離職率を下げるためにも、居心地のよい職場環境は必須です。ハラスメント防止のための窓口設置や福利厚生の拡充も検討しましょう。

3.AIの活用・DXによる業務効率化で人手不足を緩和

AIやデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入は、人手不足を解消する大きな鍵となります。

AIを活用して単純作業を自動化できれば、従業員がより付加価値の高い業務に専念できるでしょう。

また、クラウドサービスやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入すれば、リモートワーク環境の整備や業務の標準化が進みます。

AIの活用やDXの導入により人手不足を緩和できれば、少ない労働力でも生産性の維持や向上が可能です。競争力を高める手段としても、有効活用しましょう。

4.外国人労働者の活用と支援体制の構築

外国人労働者は、日本の人手不足を補える貴重な人材です。

特定技能や高度人材の受け入れを拡大するだけでなく、外国人労働者が働きやすい環境も同時に整えましょう。

言語や文化の壁を乗り越えるための研修プログラムや、相談窓口の設置が効果的です。ただし、準備なく外国人労働者を受け入れるのはおすすめできません。 外国人労働者が日本でも安心して生活できるよう、地域コミュニティと連携して住環境をはじめとする生活基盤を整備しておきましょう。

5.多様な働き方・柔軟な雇用制度の導入

人手不足・人材不足の解消には、多様な働き方や柔軟な雇用制度の導入も有効です。

業界や職種により有効な制度は異なりますが、例えば次のような働き方や雇用制度を導入している事例があります。

  • 短時間勤務・フレックスタイム
  • ジョブシェアリング
  • 副業の推奨
  • リモートワーク・在宅ワーク
  • 定年延長やシニア人材の活用
  • 非正規雇用者を正社員登用する制度

例えば、短時間勤務・フレックスタイムやジョブシェアリングを導入すると、育児中や介護中の人も仕事を続けやすくなります。副業を推奨すれば、従業員が外部から得たスキルやノウハウで、効果的なアイデアを提案してくれる可能性にも期待できるでしょう。

また、リモートワーク・在宅ワークを導入すれば、地理的な制約がなくなり、地方や海外からも人材を集められます。パートナーの転勤による退職も防ぎやすくなるので、定着率の向上にも効果的です。

多くの人が無理なく働けるよう、従来の働き方にこだわらない就業規則の改変も検討しましょう。

まとめ:少子高齢化による人手不足対策は今から始めるべき

今回は、日本の少子高齢化による人手不足について、2030年問題や人材不足が深刻な業界、企業や経営者が検討すべき対策を紹介しました。

2030年には日本の総人口の1/3が65歳以上の高齢者となり、日本全体で深刻な人手不足が問題となるとされています。 人材の獲得競争が激化すると予測されるため、安定した経営のためにも今から優秀な人材獲得に向けた対策を講じる必要があるでしょう。

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